ホテルの感想 ホテル・ル・ブリストル【HOTEL LE.BRISTOL】(パリ) リストに戻る
1月3日、ブリストルに到着したのは、午前11時過ぎでした。パリ市内での移動なのでどうしても早くなりますが、タクシーを降りた後は、当然のようにレセプションデスクに案内されました。
わたしたちの名前を確認したスタッフから最初に尋ねられたことは、利用経歴でした。初めてかと聞かれたので、前に一度..と答えると、なんと、スタッフは手許に用意していた記録をこちらに向けて、再び尋ねるのです。
「住所が変わりましたか?」と。
彼が持っていた記録は、4年前の12月31日に素泊まりした、我が家の記録でした。名前は同じながら、住所が違っているので、同一人物かどうか確証がもてなかったようです。
4年前でも、リピーターはリピーター......。初めてのゲストとリピーターでは“会話”が違ってくるのですね。
例えば、部屋への案内の途中に、自慢のリフト(下イメージ)の前で、「ほら、これはまだ健在ですよ。」というように話しかけてくるわけです。美しい曲線を描く階段の間を行き来するクラシックなリフトは、かつて主人とわたしが思わず顔を見合わせた代物です。その時はまたまたリフトが上に上がっていて、華やかな冊の向こうは空洞だったんです。
階段を上がることもなく、(自分たちは)なぜこんなところで止まらされるのかといぶかしむ間におりて来たのが、装飾豊かな木の箱でした。
4年が経過しても、リフトは磨きあげられて、見事の一言でした。
ただ、時にフロアとフロアの途中で止まったりして、年代ものの気ままさを感じさせられました。
右イメージが、門を開いたところです。リフトそのもののドアは自動スライド式で、正しく定位置に止まると開きます。(2度、閉じ込められました。)
客室は、今回は表通りには面していなくて、窓は...カーテンを閉じていた方が良い位置でした。眺めの悪さは、わたしたちが(翌日の帰国便が夜遅かった為に)17時頃までの部屋の使用を希望したからだと解釈しています。
実はチェックインの際にレイトチェックアウトの要望を伝えると、スタッフは部屋を変えるといって宿泊カードを書き直したのでした。翌日、使用予定のない部屋に振り替えたのだと思います。
案内されたのは突き当たりの角部屋でした。ベッドルームとバスルームが、入り口を挟んで左右に分かれているレイアウトで、使い勝手の良さはともかく十分すぎる広さは嬉しかったです。
右のイメージの奥がベッドルーム、手前がバスルームになります。
その下はベッドルームからバスルームを見たところ。廊下の長さが伝わるでしょうか。鏡張りの扉は我が家のタンスよりも収納力がありそうなクローゼットでした。棚や引き出し、ロングドレスもかけられるロッカーなど、中は変化にとんでいました。わずか1泊の滞在で、このクローゼットの大部分が不要だったのは、残念です。
といっても、この1泊は11時過ぎから翌日の17時まで(実際には悪天候故に早めに空港に向かうことにまったので、チェックアウトは15時半頃でした。)の長い1泊で、一切の追加料金もありませんでしたから、お得度は高かったです。
急な変更のせいで、客室のテレビには「ようこそ、お客さま」という一般的な歓迎文字が写し出されていました。(本来わたしたちが使う予定だった部屋には固有名詞が写し出されていたのでしょうけどね。)
到着予定時刻だけでなく出発予定時刻も、事前に知られるべきだったのかもしれません。
ちなみに、ここブリストルでも、チェックイン、チェックアウトの時間の案内はありませんでした。(ゲストが到着した時がチェックインタイムと言うのは..本当なんでしょうか?)
変型の客室は出入り口寄りにベッド、奥の窓際にリビングスペースが設けられていました。
配置は、逆の方が落ち着くような気がしないでもありませんが....(ルームサービスを頼んだ時に、大きなテーブルワゴンがベッドを越えて奥に進むことができず、ベッドの足下で食事をすることになりました。)カーテンは中芯入りのドシリとしたもので、保温効果も期待できそうでしたが、眠るには、窓際はもしかしたら寒いのかもしれませんね。
寝具は2ベッド、ダウンコンフォーターをリクエストしていましたが、右下のイメージのようなものでした。部屋を変更したということもありますが......ベッドはふたつでもくっつけて置くスタイル(ハリウッドスタイルというのでしたっけ?)はブリストルのスタンダードのようです。
4年前に何よりも感激したバスルームは、レイアウトこそ違いますが、使い勝手の良さは(我が家が利用経験のある国内外のホテルの中で)相変わらずナンバーワンでした。
バスタブ横には一切の仕切りはありませんが、独立したシャワールームは広く、ハンドフリーのシャワーヘッドは広範囲での高さの調節ができました。壁面、床も大理石仕様で、床に膝を付くことへの抵抗がなく、ゆったりとした“洗い場”としての使うことが可能でした。
かなり大胆なお湯の使い方をしても、シャワールームの外へは水滴がもれない作りも嬉しかったです。
中で、数歩歩かなくてはならないトイレはシャワールームに並んでありました。下のイメージでは、右端の(バスルームへの)入り口のドアが邪魔になって見えない部分に半透明のガラス戸がふたつ並んでいるのでした。
タオル掛け(バスタブ右上)はヒーターになっていて、 バスタオルは常に温かい状態で使えます。
バスタブ回り、洗面台横、シャワールーム内に置かれているアメニティーはエルメスのものです。
わたしはエルメスに特別な感情はもっていないつもりですが(縁がないもので)“Le Bristol
Paris”の名前が入れられた特別仕様の石鹸ケースは、やはり欲しくなって今回も持ち帰りました。(バスフォームやシャンプーのミニボトルは持ち帰っても使いようがないことがわかったので、石鹸ケースだけ)コットンパフは円形に整形されていました。
ご覧のようにバスマットは2枚、別にシャワールーム用に一枚用意されていました。TURN DOWN のサービスまでに使ったものは、当然のように新しいものに取り替えられます。
地球環境への心配りよりも、ゲストの満足感を最優先にするサービス精神は徹底しています。
ルームメイドのサービスは、前回同様ふたりひと組でしたが、TURN DOWN、ルームサービスではスタッフはひとりでやってきました。どのスタッフも’“引き際”が鮮やかで、チップを渡す為に(コインを握っていてさえも)呼び止めなくてはいけない時がありました。まるでチップは不要だよといわんばかりの様子なのですが、不要なはずもないわけで.素早く動かれると、タイミングを掴み損ねるわたしたちは、経験が足りないのでした。
チップといえば、ガイド本のどれかに「高級ホテルではドアマンにドアを開けてもらった(回してもらった)場合にもチップが必要」というアドヴァイスを読んだ記憶があるわたしは、『ほんまかいな?』と思いつつ、常にコートのポケットにコインを忍ばせて出入りするように(今回は)心がけましたが.......ブリストルでは外に待機しているスタッフとは別に内側にもスタッフが立ってるのです。
押したり引いたりのドアはありますが、基本的にはスタッフは回転ドアを回してゲストを導いてくれるのですが....回転ドアって“どうぞ”というタイミングで入らなくちゃぶつかるんですね。しかも、内側に控えるスタッフは、惰性で回ろうとするドアを手で止めて、ゲストが回転から(安全に)抜け出すサポートをするわけで...ものの数歩歩く間にふたりのスタッフに相対する状況で、スマートにチップを渡せる人がいたらお目にかかりたい、と言うのが正直なところでした。目撃した限りでは、他のゲストもチップを渡している様子はありませんでしたけど、高級ホテルの常識は庶民には計り知れない部分がありますし、ブリストルのパブリックスペースでは、常にほどほどの緊張を感じました。
でも実は、このほどほどの緊張感(あくまでも、ほどほど)は、我が家がヨーロッパのホテルに求める魅力のひとつなのです。
十分にくつろげる空間やサービスと共に、ゲストに自らの品性を意識させるような雰囲気が、パーフェクトなバランスで同居している....ブリストルはそういうホテルです。
少しばかりの背伸びには憧れるけど、気後れするほど不相応な場所は望まない我が家にとって、旅の最終日を過ごすのに、ここ以上に安心できるホテルはないようにも思います。
もっとも、連泊するにはお値段の折り合いが付かないということは、不相応なホテル選びをしているとも言えそうですけどね。それでも、自己満足度は非常に高いホテルでした。
03/02/19 
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