画面のレイアウトが乱れる方へ

 2002年12月27日から10日間、シーズンデコレーションも華やかなブリュッセルとパリで、非日常の時間を過ごして来ました。

 準備万端、憂いなしのはずが、多すぎた備えが憂いを呼び込むという大反省のおまけ付きの旅になりました。
 感動が大前提の毎日では、反省も刺激的というわけで、困惑、驚き、思案や悩みにポイントを置いたエピソードを御覧ください。旅の予定がある方にも、ない方にも、等しく楽しんでいただけるように、“観たことよりも体験したこと”を優先してピックアップすることを心掛けました。

 なお、内容的に「イタリア3都市エピソード」と重複する部分(特に“準備編”)はここでは省略しています。            
               03/01/17 
     ※ イメージは、ブリュッセルから送り返さざるおえなかった多すぎた備え、憂いの原因。

 パリの2日目 オルセー美術館。イヤホンガイド借用の人質は...パスポートかクレジットカード

 1月2日、あいにくの曇り空....散策するには空気の冷たさが堪えそうな天気でしたが、わたしたちがほぼ1日を過ごしたオルセー美術館の館内は、汗ばむほどでした。

 前回はルーブル美術館に1日を費やして、近づく時間もなかったオルセー美術館は、今回私たちがパリに立ち寄った,最大の目的でした。
 ウフィッツイ美術館のように事前の予約で優先入場というような情報が、オルセーにはありませんでしたから、並ぶことも覚悟していましたけど、ホテルでもらったミュージーアムパス(下イメージ.パスの説明と利用できる施設一覧、パス本体はカードタイプで、裏面に日付と名前の記入欄があります。)の利用説明を聞いて、私たちはかなり楽観的になっていました。
自分が記入した日に限って、その日1日は主な美術館、博物館への出入りが自由、つまりチケットを買う手間と時間が不要になるというものです。英語表記部分(日本語表記はありませんでした。)にはno waiting in linesと書かれています。複数の美術館に入館しなければ、パスはチケットよりも割高ですから、我が家の場合は購入予定はなかったので、もらえたことはラッキーでした。

 開館前のオルセー美術館は、長い建物の端からもはみだす程のなが〜い人の列ができていました。そう言えば、前はルーブルでもエッフェル塔でも並んだよね〜と思い起こしながらも、わたしたちに焦りはありませんでした。
 (問い合わせしようにも)列の後方部付近にはスッタフの姿はなかったので、並ぶ必要がないパスを持参したわたしたちは、とにかく(列の横を)先に進んだわけですが、同じパスを手にしたお仲間はエントランスの前にわずかに4人...。。

 列の先頭とエントランスを隔てるロープをはずして一定人数を招き入れたら、ロープを閉じてストップをかけるというスタッフの支持に従っている列から横にはみだして、別のスタッフとなにやらお話中のパス仲間は、体格のいいふた組のご夫婦で、わたしたちもパスを出して、4人の後ろにくっついたのですけれど、ただ....どうもお話の様子がクレームめいているんですね。お話というより、(ご夫婦の)おばちゃん二人が主張し続けることにスタッフは言葉少なに「ノー」の意思表示。ロープをはずして中に入れてくれようとしないのです。
 おじさん2人を間にはさんで、背中越しに聞くおばちゃんの声は興奮状態で、わたしには理解不能。 ただ、何かの事情で並ぶ必要のないパスを持っているにもかかわらず、ストップがかけられていることは確かでした。

  推測できる事情はふたつ、素通りできるのはチケット売り場であって、館内への優先入場まではパスの特典外だったか、パス持参者は優先入場させてもらえるけど、館内が混雑したのでたまたまおばちゃんのところで一旦留められたか....。 後者だったなら、それで怒るおばちゃんは、ちょっとわがままだよね、ということになりますが、ただ、「パスを持っている人はこちらへ」というような案内版は一切見当たらない状況で、後者というのも考えにくいですね。いづれにしても、おばちゃんがスタッフに食らい付いていてくれたからこそ、わたしたちは居場所を見つけたのでした。
  それは、他のゲストも同様とみえて、10分程の間に、ひとり、またひとりとパスを手にした人がわたしたちの後ろに並びだしたんですね。お互い手にしたパスを認めあって、「ここでいいんですよね?」という感じです。総勢15、6名...。そのくらいの人数になると、まるで、そこが(パスを持っているゲストの)正しい待機場所のように思えてくるものですね。(でも、先頭では、スタッフともめているんです!)

 やがて「ああ、もう!」と声にこそ出さないものの、呆れ顔に、根負けした疲労を滲ませて、スタッフがおばちゃんの前のロープをはずしたので、がんばったおばちゃんを先頭にして、10数名はゾロゾロゾロと一挙に中に入りました。
 どこの国でもおばちゃんは偉大だ!と、主人は感心するばかりでしたが...やはり、わたしたちはおばちゃんのお陰で強引に優先入場したことになるのでしょうか?

 入ってすぐのチケット売り場の複数窓口にチケットを求める人の列ができているのを見ると、並ばなくていいのはココだけだったのかなあと感じないでもありませんでした。

 かつては駅舎だったというオルセー美術館の館内は、いわゆる大きな長方形の空間を仕切ったレイアウトです。見学するには効率のいい造りで、館内ガイドを見ていても迷うという他の美術館とは雰囲気が違っていますね。外観のわりには中はスッキリしている....というより駅舎の外観が豪奢なのですね。

 ところで、今回、わたしたちは(初めて)オーディオガイドを借りたのですけれど、使用料金とは別に、パスポートかクレジットカードの提示ならぬ、一時預け入れが(ガイド利用の)条件だったので、驚きました。
  機器の破損や持ち帰りに対しての保険みたいなものなのでしょうけど、これって、わたしはあなたを信用するわけにはいかないので、あなたはわたしを信用して大事なものを預けてくださいという...結構一方的なルールですよね?しかも、パスポートかクレジットカードですよ。普通他人に預けるようなものではないでしょう?「人質」なら、例えば現金100ユーロとかいう選択肢があってもよさそうなものなのに、あくまでもパスポートかクレジットカード、なんですね。
 オルセーのスタッフを信じる信じない以前に、 万が一のトラブルのリスクを考えれば、パスポートを何時間も手許から話すなんてあり得ない選択です。わたしたちは、紛失、偽造、窃盗等に短期間で対処可能なクレジットカードを人質に差し出して、イヤホンガイドを借りました。(ガイドはひとりで複数借りられるので、人質はわたしのカード1枚)
  その機器とわたしのカードが等価だとは、とてもとても納得できないものでしたけど...結果として、ガイドのお陰でオルセー美術館での1日は充実したものになりました。

 夕方、機器と交換にカードは無事にもどってきましたけど、その時に、オーディオガイド貸し出しのカウンターの前には、返納されるガイドを待っているゲストでごった返していました。需要が供給を遥かに上回っているんですね...。
  カウンターの内側には各種のクレジットカードが蓋もないケースにびっしりと並べられているのがわたしからも見えてしまいました。預ける側の葛藤に反して、預かる側の扱いは名刺なみですね。

 わたしたちが返納したガイドは、日本語ガイドを待っていたおばちゃんたちにすぐに借りて行かれたのですけど、おばちゃん達が人質に差し出したのはパスポートでした。提示するだけと思われたようで、そのままカウンターの中に取り込まれた瞬間に、え?パスポートを出すの?と吃驚したわたしと、あら?パスポート返してくれないんだけど...?と言いたげなおばちゃんの目が合ってしまったので、人質なのだと説明して差し上げました。後で返してもらえると分かると、おばちゃんの不安は解消したようでしたが...クレジットカーに混ざって、むき出しで置かれている(自分の)パスポートに気付いていたでしょうか....?

 上のイメージは、美術館帰りに回り道をして立ち寄ったクレープ店。4年前も何度も通った店です 。
 移動式のワゴンではなく、建物の横に寄り添うように造られた小屋(?)で、主人の記憶していた場所に、以前と同じ看板、同じメニュー番を掲げてありました。おじさんが同一人物かどうかは確信が持てませんが、パリの数カ所で食べたクレープの中で飛び抜けておいしかったというの味は記憶にたがうことなく、今回は、店の前で1枚を平らげた後、即座に追加注文するという、クレープの短期ドカ食いをやってしまいました。以前と違って、パリ滞在期間が短いので、明日も明後日も買いに来ようという余裕がなかったんですね。追い詰められると、量を食べられるものだなあと自分で感心しました。

                                          04/03/30 

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補足 
 通貨が フラン時代の古いガイド本に“オルセー美術館の入り口はいつも入場客の行列なので、もしカルト・ミュゼ(ミュージアムパス)を持っていたなら、ブックショップの入り口から入ろう”というアドヴァイスがありました。
 わたしたちが訪れた時は一部工事中で、入り口の場所が変わっていた可能性もありますが、ブックショップは確かにありました。ショップには道に面した入り口から入場券不要で出入りが可能、ショップと美術館を繋ぐ入り口では、スタッフがチケットをチェックしていました。入館後、ガイド本を買う為に館内からショップに、ショップ館内に行き来したわたしたちは、何度かスタッフにパスを提示したのを覚えています。
 結局、スタッフの案内による、パス持参者の優先入場というのはないんですね....。

                                          04/03/30 





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