パリの3日目 リフトだと信じて上に上るチケットを買った凱旋門は...螺旋階段
左は凱旋門屋上の展望台から見たシャンゼリゼ大通りです。
かつてはエトワール広場と呼ばれていたという、凱旋門が立つシャルル・ド・ゴール広場から放射線状に伸びる道路は、見事なまでにまっすぐで、パリは確かに計画されて生まれた近代都市なのだと感じさせられます。
今回はベルギーからの帰り道で、“古都”の空気に酔った後だけに、なおさら、パリの古き良き部分よりも新しい街の整頓された美しさが印象的でした。もっとも、新しいとは言っても,パリが大変貌をとげて今に近い景観になったのは1800年代半ば....ヒストリカルシティーとしての魅力は十分すぎるほど、ですね。通りを歩けば,整然と並んだ石造りの建物の、あれもこれもがこの街の歴史の証人のように感じられて、非日常の旅の醍醐味に事欠くことはありません。けれど、例えば、ブルージュやフレンツェは言うまでもなく、ロンドンなどの都市にもあった、時間的な違和感のようなものが、パリにはあまりないんですね。景観は非日常なのに、空気は日常...とでもいうのでしょうか。そして、凱旋門からの視点を変えた眺めは、ため息を誘う美しさというよりも、感嘆の声を上げたくなる華やかさに満ちていました。....展望台には上ってみるものですね。

でも,この日、凱旋門は予定外のコースでした。
計画段階ではオランジェリー美術館観光でしたが、こちらが修復のために閉館中....。ホテルの移動や帰り支度もしなくてはならない旅の最終日(翌日の飛行機が夜の便なので、おまけの1日はありましたけど...)に、遠出はできかねますし...ということで、市内散策の後、午後はホテル(ブリストル)のラウンジでゆっくり過ごすつもりでした。散策の目的は、ピエールエルメ。イクスピアリ店(TDR)のアイテムは本国レシピにのっとった日本製ということでしたけど、全く同じ味だとは思えませんものね。本場のクッキーくらいは持ち帰って、食べ比べてみなくては...。
ところが、ピエールエルメの所在地を書き込んだ地図を手にホテルを出た後、分かれ道でわたしは悩んでしまったのです。右に行けば、ピエールエルメ、左に進めばマリアージュのエトワール店...。マレの本店で,茶葉はたっぷり買っていましたけど、せっかくだから、ちょっと支店も見ておこうかと、最初に(引き返すつもりでした。)左に向かった結果、ピエールエルメからはどんどん遠のき、凱旋門に近づいて行ったのでした。
マリアージュの支店が本店よりも落ち着いた環境だったので、サロンで早めの(予定外の)休憩を取ってから、これまた、せっかくだからのノリで
、わたしたちは凱旋門に向かいました。見るだけのつもりだったのですが...門が視界に入ったところで、展望台に上るかどうかの選択を、主人がわたしに託しました。この時、上ることのリスクに関して、夫婦間で少々ズレがありまして....主人は、階段、坂道、上り方向に対しては“あかんたれ”のわたし自身を問題にしていたらしいのですが、わたしは時間的なものを考えていました。つまり、ピエールエルメとパリの展望、どちらを優先するかですね。
実は、数年前に訪れた時には、凱旋門はスタッフのストライキ中で、展望台への扉が閉ざされていたのです。その時は連休中のビックサンダー・マウンティン(TDLです。)も真っ青というくらいに並んで、エッフェル塔の展望台に上ったものですが、「どうしよう...」と迷いつつ地下道を進むと、やっぱり...でも、思いがけなく短めに、人の列ができていました。チケット購入までのロスタイムは、かつてエッフェル塔で待った時間の10分の1以下と判断したわたしは、この機会を逃すのは適切ではないと考え、上を目指すことにしました。ホテルのラウンジとピエールエルメのどちらかは、翌日に回すことも可能でしたしね。
実際 待ち時間はそこそこのものでした。
いかにも観光客らしき人たちが、
並ぶことなく横を通り過ぎて行くのを見ると、対して時間をとるわけじゃないのに、もったいないわね...と思ったものです。
エッフェル塔は,ものすごく待ったよね、などと、懐かしい話をするうちに、主人は、わたしがリフトに乗ると信じていることを察したようでした。階段の可能性も多いにあり得ることを聞かされたうえで、再び上るかやめるかの選択を、わたしがせまられたのが、まもなく自分たちの(チケット購入の)番になるというタイミングでした。
階段だと思う根拠を、主人は持ってはいませんでした。そう思っていた方が無難、という考え方だったんですね。
わたしたちは、目的地(ピエールエルメです。)を記した地図を持っていただけで、予定になかった凱旋門に関する情報は、記憶の中だけと言う有様でした。で、展望台への上り方となれば、これはもう記憶したことがないんですから、解答が出てくるはずもありません。階段を上ることに抵抗があるわたしとしては、無難な覚悟よりは気楽な希望にすがりたい...。エッフェル塔はもとより、古くはウィーンのシュテファン寺院まで記憶からたぐり寄せて(階段は無料、リフトは有料でした。)凱旋門にリフトの存在することの当たり前さを、主人に解きつつ(積極的な賛同は得られませんでした。)先に進みました。
長くはない時間とはいえ、上るつもりで列に並んで待ったのですから、離脱したくはありませんしね。
チケット売り場は地下道から地上に出る中間階に窓口があって、列を成したゲストはその列をほとんど乱すことなく、順次チケットを購入しては、地上、つまり凱旋門の真下に出るのですけど、下から門を仰ぎ見るのは後回し。チケット持参者の列はそのまま左手にあるドアの中にと行進です。前回ははストライキ中のお知らせが貼られていたドアの内側では、スタッフがチケットの回収をしてました。中の通路は,ドア1枚分強...。

あら、狭いわ。ま〜、暗いわ。
リストが似合いそうもない空間に...控えていたのは,右イメージの螺旋階段でした。
まさか! 本当にリストはないの? 戸惑ってキョロキョロしてたのは、わたしだけのようで、1列になった観光客は、躊躇もなく階段を上り始めました。後ろにいる主人に、リフトが見当たらないことの衝撃を伝えようにも(今更,伝えても仕方がないんですけどね...。)まず歩かなくては...あれこれとグチいう間もありません。何が大変といって、この螺旋階段、下りてくる人とすれ違う時にも体を斜めにして,どちらかが立ち止まらなくちゃというくらいに狭いんですね。ですから、後ろの人に、どうぞ、お先に、と...言えない。前の人との間が空いてしまうと、自分のペースに後ろのすべての人を巻き込んでいるようで、プレッシャーを感じるし、もう、進むしかないという過酷な状況でした。
途中にはいくつか、休憩スペースとおぼしきくぼみがあるんですが、どこにも先客がいて、くぼみで一息つけたのは、後少しだから休むよりも上ってしまおうというくらいに、上まで来てからのことでした。
ようやくたどり着いた先には、展示スペース(左イメージ)が広がっていて、展望台はその上、もう1階分頑張りましょうということになるのですが、最後まで頑張った結果が、近代都市、パリの景観でした。
最初から、螺旋階段の苦行を知っていたら、パスしていましたから、情報不足も、悪くない場合もありますね。
でも...この展示スペースでちょこっとうろついていたら、リフトらしきものを発見してしまいました。
ストライキ中か、故障中か、あるいは一般開放されていないのか...稼働している雰囲気は露ほどもなくて、地上のどの部分につながっているのか、分からないままだったのが、残念です。
ちなみに、あとでチェックしたガイド本(
個人旅行 パリ 昭文社 2002年版)によると、展望台に出るには272段の階段かエレベーターを使うと書かれていました。 もっとも、実体験としては選択の余地もありませんでしたけどね。
チケット売り場は、地下道にある1カ所のみ。正しい場所に並んで、素直に誘導されて行ったら、272段に迎えられたわけで.....いつかまた、同じ場面に遭遇する機会があったら、「リフトはどこ?」と、遠慮せずに騒ごうと思います。
04/06/29 
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