画面のレイアウトが乱れる方へ

 

 ローマ、フィレンツェ、ヴェニスを12日間の急ぎ足で見て参りました。
観光名所やお勧めスポットなどは、美しい写真と共に多くのガイドブックで詳しい紹介を見ることができますから、ココで観光ガイド的な旅行記を展開することには、あまり意味を見出せません。
 たとえば、コロッセオの迫力を説明して、それを見たわたしの感想を伝えることよりも、駅前で剣士の衣装を付けたおじさんと一緒に写真を撮ってから、請求された金額が果たして妥当なものだったのかどうか、いつまでも悩んだというようなエピソードを中心に進めていくつもりです。         
                           01/01/16 
 




   

フィレンツェの3日目

 1月3日、フィレンツェで過ごす最後の1日も、晴天の幕開けでした。
 思えば、ローマでもおおむね天気には恵まれていて、雨に降られたのも数時間だけでしたが、空の青さに気が付いたのは、この街、フィレンツェでのことでした。(あらためてイメージを見直しても、ローマの空はやはり大都市の空、のようですね。)
 赤い屋根と、光を放つような白い大理石とを、クリアに浮かび上がらせるかのような空の色。人の手によって造られた都は、この自然のキャンバスの上で花となるのかもしれませんね。
 ...と、花の都の美しさに溜め息を付いている余裕もないのがわたしたちの実態で、この日はさすがにお土産もなんとかしなくてはと考えながらの観光でした。
 アカデミア美術館でダヴィデの本物(それまでに、さんざんレプリカを目にしていた為か、初対面の気がしませんでした。)を見た後は、メディチ家礼拝堂サン・ロレンツォ教会などを急ぎ足で回って、上のイメージのサンタ・マリア・ノヴェッラ教会を目指して、駅前に向かいました。ところが、教会はすぐに見つかったものの(当たり前)もうひとつの目的であるサンタ・マリア・ノヴェッラ薬局が、あるべき場所に見当たらない....。

 1200年代にドミニコ会の修道僧によって創られたという世界最古の薬舗の一つだそうで、テレビでも取り上げられて、ショップガイドの本によっては大きく紹介もされていた店です。薬舗といっても、薬草や花を調合した軟膏や香油、入浴剤等が揃うという、映像や写真で見る限り、日本の薬局ともアメリカ式のドラッグストアとも全く異なる様子の店でしたかから、これはもう、なんとしてでも何か買ってこなくては....と気合いが入っていたのですが、後で思えば、紹介された内部のイメージが迷うもとになりました。
 通りから見える外部と入り口付近の様子からは内部のイメージは想像もつかないので、内部のイメージをもとに探していたわたしたちは、住所はこの辺、地図の印もこの辺、という場所を行ったり来たりしながら、ついに閉店したのかも...いやいや、地図がいい加減なのだわ、と探索範囲をひろげては(実は店から遠ざかっていた...。)また、この辺りという位置に舞い戻り....尋ねようにも人は通らないし...と誰かこの中にいないかな〜と中を覗いた建物の、そのまた奥の方、扉のガラスの向こうに見覚えのあるイメージを見つけたのでした。
 もっとも、そこは情報から想像していた雰囲気とは別世界で、直に見る世界最古の薬舗の一つの店内は広く、厳かで、コツコツという靴音が響き渡る静寂の中にありました。見覚えのあるイメージはその空間のごく一部だったのですね。
 ガイドのイメージにとらわれ過ぎたり、ガイドの情報を軽んじ過ぎたりしてはいけないという教訓になりました。
 シャネルの5番よりも喜んでもらえるかどうかはこの際は考えず、贈る方の自己満足で純エキスを数本購入しました。
(とにかく、なるべく場所を取らないものという条件が付きまとう、買い物状況だったのです。)

 薬局探しに予定外の時間を費やした後は、ダヴィデのレプリカが立つシニョーリア広場近くで、お昼ごはん。イタリア7日目にして、ようやくピッツェリアらしき店(もしかしたらトラットリアだったかもしれません。)で、ピッツァを味わいました。
 わたしたちにとっては、メインになるパスタも、イタリアでは前菜につづく第1の皿にすぎないとか...。パスタの後に本来のメイン、第2の皿が控えるとなれば、お昼を抜いてでも夜に備えなくては、と意識したわけではありませんけど、ローマでの日中はほとんどカフェの利用ですませていたものでしたが、フィレンツェではお昼にも時間を取りました。
 観光名所を見て回ること以上に、街の雰囲気を楽しみたくなるフィレンツェでは、時間だけではなく気持ちの面でも余裕がでてきたような気がします。
 観光客か、地元の人かの区別はハッキリしませんが、自分達以外の、とても多くの人たちがお昼を軽くすませて席を立って行くのを見て、ガイドブックのアドヴァイスと違う...と思いつつ(お昼に関しては)量に対する恐怖心も薄れました。

 この後、アルノ川左岸は諦めて、買い物に時間を費やしました。
 “タフ”で刺繍が綺麗なティッシュボックスカバー、“イルパピオ”でマーブル模様の文房具をあれこれ、“ジノリ”で変わり皿を数枚....。
 帰国したあとも日常的に目に付くとろに置けて、なおかつ畳みや襖のある我が家でも違和感がなく、それでいてフィレンツェの香りを放つような小物を、悩み楽しんで選びました。  
 お馴染みのブランドショップは、時間がもったいないからと素通りできても、お菓子が並ぶショーケースのは、思わず張り付きたくなる美しさで.....今になると、やっぱり 何か買うか、食べるかしてくてばよかったと悔やまれます。
 見るだけで、おなかがいっぱいになりそうな食事と違って、お菓子はどれもキュートで、おいしそうですね。

 フィレンツェで最後に立ち寄った店は、前日に訪れてバッグの注文をすませた“ビアンキ・エ・ナルディ”でした。
 オーストリッチレザーのカードケースやキーホルダー、ベルトなどのお土産にする小物を買って、ホテルに戻る途中で自分のベルトも欲しくなって三たび戻りました。
 わたしのサイズに合わせて、スタッフがベルトの長さを調節しれたのですけど、チョッキン、と切り落とされた余った部分ももらって帰りたくなったのを思い出します。(キーホルダーぐらいはできたかも...。)

                                          02/01/18 

 戻る