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 ローマ、フィレンツェ、ヴェニスを12日間の急ぎ足で見て参りました。
観光名所やお勧めスポットなどは、美しい写真と共に多くのガイドブックで詳しい紹介を見ることができますから、ココで観光ガイド的な旅行記を展開することには、あまり意味を見出せません。
 たとえば、コロッセオの迫力を説明して、それを見たわたしの感想を伝えることよりも、駅前で剣士の衣装を付けたおじさんと一緒に写真を撮ってから、請求された金額が果たして妥当なものだったのかどうか、いつまでも悩んだというようなエピソードを中心に進めていくつもりです。         
                           01/01/16  




   

マルペンサ空港 ドタバタ劇

 ヴェニスからミラノへ国内線で移動した後、関空行きに乗り継ぐというのが、わたしたちのフライトスケジュールでしたが、ミラノ・マルペンサ空港での乗り継ぎ時間は1時間10分でした。
 出国して、VAT返金の手続きを済ませ、職場や近所用のお土産を買うには、十分とは言えませんけど....選択できるほど便数はないので、やむをえません。

 おそらくは30キロを超えていたであろうトランクとは、到着地の関空までは別行動です。ただ、往路に比べて、機内持ち込みの荷物は増えていました。チョコレートやパスタなどの一部を除いて、ローマフィレンツェヴェニスで購入したもののほとんどは、VAT返金の手続きの際に品物を見せる必要がありますから(ロンドンでは、見せようとカバンを開けるわたしよりも、証明印を押す係官の動きの方が素早くて...何一つ見てもらわないまま、手続きが終わってしまいましたが...見せて、と言われれば、提示しなくてはなりません。)預けてしまうことができないんですね。
 アシスタントのいない個人旅行でしたから、場所をとるものや重量のあるものは避ける努力はしましたけど、9日間分の買い物はバカにならない量と重さになっていました。(だから、義理のお土産は出国後にするしか仕方がなかったんです。)場合によっては、わたしがVAT返金の手続きにならんでいる間に、主人がサッサッサッと買い物を済ませる...ということまで念頭にいれて、短い時間を有効に使うつもりでした。ところが、このマルペンサで思いもよらない事態に遭遇してしまいました。空港の地上スタッフの遅延ストライキです

 実はストライキ中だったと知ったのは、遅れに遅れた飛行機の座席についてからの機内アナウンスでのことで、空港内で走り回っている時は、とにかくスタッフの動きの遅さに閉口させられました。
 なにしろ、出国審査からして、パスポーをパ〜ラパ〜ラ、ハンコをペッタ〜ン〜というテンポなのです。通常なら3人は処理できるだろうと思える時間で1人しか動かないのですから、とんでもない話ですよね。「サヨナ〜ラ」と係官に笑顔で(愛想は良かった!)見送られて出国した時には、出発時刻まで40分あるかないかの状態でした。
 知らない空港で、国際線を利用しようという時に、持ち時間40分は焦ります。場合によっての別行動なんて....恐ろしくてできやしません。わたしたちは、“場合によっては別行動”を“場合によっては義理土産はあとで考える”(お土産宅配便に頼るとか...。)ことに切り替えて、VAT返金の手続きに集中しました。
 グルリと見渡すと、自分が持っている手続き書類と同じマークのあるカウンターに数人の旅行者が並んでいたので、小走りして、列の後ろにつきましたが、順番がきて書類を出すと、「証明印を先に貰ってきて。」というアドヴァイスが...。
 そこは、手続きを終えた後に返金を受ける場所だったのです。「ハンコはどこで?」と焦るわたしに、スタッフが指差した方向には、それらしきものは見えません。今までの、数少ない経験からすると、探すまでもない場所にカウンターがあって、手続き中の人がいたものでしたが......マルペンサでは、その“風景”が目につかなかったのです。そもそも、頭にいれていた空港の見取り図の上では、この辺りと思う場所がただの通路なのですから....。ただ、スタッフが示した方向、本来わたしたちが見当を付けていたあたりに通路に面した部屋があるのを主人が見つけました。
 ここかも、と覗き込むと、乱雑に配置されたテーブルの奥にスタッフらしきおじさんがひとり座っているだけで、返金手続き中のゲストも、手続きをおえたらしい様子の人もいませんでした。ですが、ここが違えば、わたしたちにとっては、もう時間切れ!という切羽詰まった事態でしたから、とにかく証明印をもらうべく、部屋に飛び込みました。
 旅行者が、それとわかる書類を手にしてやってきたら、正しい場所なら反応してくれそうなものですが、「なんだい?」というおじさんの様子は、「ココじゃないよ。」と言われている気分になりました。でも、こちらも必死でしたから、おじさんの様子にひるんでもいられません。

 「ハンコ! いただきたいんですけど!」
 「......?」
 「ハンコ、ハンコ! VATのハンコ! ココじゃないの? ココじゃないならどこなのか言って! どこに行けばいいの!」
 一応、英語を話したつもりですが、日本語に訳すと、たぶんこういう感じです。パニック寸前でした。
 おじさんは、わたしが差し出した返金手続きの書類を見て、「証明印が必要だ...。」みたいなことを呑気にいうので、「だから、ハンコを頂戴!」の押しの一手でした。

 実はわたしたちは、ローマフィレンツェで買ったものの大半のVAT返金をヴェニスで受け取っていたので、どうしても手続きだけはしなくてはならない事情を抱えていました。
 返金手続きを受け負う会社はふたつあるようで、その内の1社はサン・マルコ広場のすぐ近くで、事前の返金ができるという説明があったのです。その場で現金による返金が受けられて、しかも、税関の手続きも無用! ラクラク帰国という説明でした。それなら、出国時に時間の節約にもなるし、第一、買った物をトランクに入れてしまうこともできるからとオフィスを訪ねたのですけど、手続き無用なのはそこから発送する場合の話で、実際には「今返金してあげるから、空港では必ず証明印をもらって、忘れずにポストにいれてね。」と話でした。もう返金してもらったからと手続きを怠れば、返金額が請求されると驚かされていたので、大変でした。
 ヴェニスのオフィスではその時、5万円強の返金を受けていましたから、それを返せと言われない為には、必死にもなるというわけです。

 結局、そのおじさんとわたしたちしかいない部屋で、10枚近い用紙に印をもらった後は、走って搭乗口に向かう途中で書類をポストに投げ込み、もう1社の、専用ポストが見当たらない3通は、(返金の為に並ぶ時間も ポストを探す間もなかったので)返金カウンターのスタッフに預けたのでした。
 今、思えば、それが間違いだったのかもしれません。1年が経過しようかという今日でも、返金はされないままです。
 勢いで押してもらった証明印は、一応は正しかったようで、事前に返金を受けたところからの問い合わせ(請求)もありませんし(もっとも、「なんだか変な印を押したのが届いたけど...ま、いっか。」で終わりそうな...。)専用ポストに投函したところからは、数カ月の間にカードに返金されました。ただ、ちゃんと返金されたとろこよりも返金されなかったとろこの方がはるかに金額が大きかったので、いまだに「あの時、もっと時間があったら...。」と悔やまれます。
 文字通り汗をかきながら証明印をもらった、貴重な3通のVAT返金用紙は....わたしの手から離れた後、どんな運命をたどったのでしょう?そのまま、ゴミに紛れ込んだかもしれませんね。

 息を切らして搭乗口に辿り着いたわたしたちを待っていたのは飛行機の出発時間の大幅な遅れ...。お陰でトイレにも行けたし、一度は諦めたお土産を買いに戻る事もできましたが(レジがまた...見事に遅かった!)、ものすごく疲れました。
 思えば、印を押してくれたおじさんも、ストライキ中だったのでしょうね。

                                         01/12/30 

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