画面のレイアウトが乱れる方へ

 

 ローマ、フィレンツェ、ヴェニスを12日間の急ぎ足で見て参りました。
観光名所やお勧めスポットなどは、美しい写真と共に多くのガイドブックで詳しい紹介を見ることができますから、ココで観光ガイド的な旅行記を展開することには、あまり意味を見出せません。
 たとえば、コロッセオの迫力を説明して、それを見たわたしの感想を伝えることよりも、駅前で剣士の衣装を付けたおじさんと一緒に写真を撮ってから、請求された金額が果たして妥当なものだったのかどうか、いつまでも悩んだというようなエピソードを中心に進めていくつもりです。         
                           01/01/16  




   

自宅に帰還

 2001年1月8日、8時台の飛行機で関空を飛び立ったわたしたちが、千歳に向かう空の上でイメージしていたのは、雪に埋もれた我が家の車でした。

 建物と駐車スペースの間の道路は、契約の業者がブルドーザーで除雪してくれますが、除雪車が通った両脇には雪の固まりが残るのですね。両脇の片面は車の前、ということで、この“居残り雪”をマメに撤去しなくては車は出られなくなるんです。もちろん、車の両側にも、上にも雪は降るし積もります。両側は、両隣りの持ち主との共用スペースで、除雪されている確率は高いものの(“ちっとも除雪に出てこないわ”と思われない為に、『お出かけは一声かけて』の世界です。冬期の長期不在はそれなりに気を使うものなのですよ。)他人の車の上までは...面倒は見てくれないのが普通です。 不親切なのではなくて、下手に雪卸しをして、車体に傷をつけたりすると“コト”だからというわけで、まあ、傷を気にしていたら雪国での屋外駐車場には止めていられないのですけど「そんな心配いらないのに...。」と言えないのが御近所付き合い。言い方によっては、“作業”を期待する雰囲気になってしまいますものね。

 前後泊を含めると、今回は2週間弱の不在です。
 しかも、出発の日は空港が何時間にもわたって閉鎖になるような大雪だったのですから... 1日目で車はおおむね埋まったはずでした。翌日からマトモに生活するには、とにかくもスーパーに行かなくてはならないわたしたちは、千歳空港からタクシーで自宅に向かいました。時間と体力の節約の為です。

 でも、覚悟して戻った自宅周りに、雪はほとんど積もっていませんでした。除雪契約業者は、年末年始も休まずに良い仕事をしてくれたようでした。おまけに、驚いたことには我が家の車も綺麗サッパリ! 除雪業者が立ち入ることができない車の周りはもちろん、車体の上にも雪はありませんでした。ありがたきは御近所さんというわけですね。
 ただ、マイカー発掘の苦役からは解放されたことが分かった瞬間に、わたしたちは別の問題を意識することになりました。....帰って来たのは、自分たちだけという状況です。

 一声かけて出かけたのですから、戻った時にも声をかけるのが筋というもので、そう言う時の為に世間で言われる“義理土産”が欠かせないわけですけど....なにぶん除雪が必要な時期の長期不在です。いないこと自体が迷惑な話だし、もしかしたら本当に“お世話”をかけるかもしれません。それで、わたしたちは幾分はお土産にも気を使いました。カラフルなパスタを“階段の人たち”に配る(配るという感じですね。ただし、直接には旅行の事は話していないし、話していても声をかけて出かけてはいないので、帰宅当日に配らなくては...という危機感はありません。))“義理土産”としたら、お向かいや階下、駐車場のお隣さんにはプラスアルファの何か別のものを...ということで、トランクにはチョコレートやウフィッツィ美術館のキーホルダーやマジックカード、マーブル紙使いの小物など、値は張らないけど珍らしく、かつ使い易いものを詰め込んでいました。
 それなのに....そのトランクはミラノで残留。1日経って、日本に向かう飛行機に乗せてもらったか、まだマルペンサの敷地内....微妙なところです。
 友達なら「ったくぅ〜。トランク積み残されっちゃってね〜。お土産、まだイタリアなのよ。」と話もできますが、他人の旅行のお土産話”を聞くほどには親しくないのが御近所さん、なんですね。だけど、スーパーに向かう前、つまり雪おろしの必要のない我が家の車に乗り込む前に、お礼は言わなくてはなりません。
 手ぶらでは行きにくい...。説明するのもややこしい....。
 それで、やむなく、自分用のお菓子の提供を決断することになりました。

 スト決行中のマルペンサ空港で、主人が職場へのお土産を物色している間に、わたしは、パッケージも中味の見本も美しくて、おいしそうで、お値段もそこそこに高いけれど、日本では手に入らなさそうなお菓子をいくつか見つけました。
 自宅用にとひとつづつを数種類買って来た、その貴重なお菓子類が.....味も分からないまま他所の物になりました。今思い出しても、残念です。せめてパッケージのひとつでも残すか、記録するかしておけば、再会のチャンスを作ることができたかもしれませんが、その時はもう、勢いで手放したという感じです。

 トランクさえちゃんと積まれていれば、起こらなかった悲劇でした。

                                       02/12/25 

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