画面のレイアウトが乱れる方へ

           

 数年前あたりから何度か,トマムの柔軟性、あるいは画一的ではないサービスに対して,掲示板でも意見がかわされたことがありました。是か否か..となれば、結論の一致は期待できないテーマですが、JUNのコメントは是とする立場からの見解と提案であり、異論、反論をお持ちのゲストの説得を試みるものではありません。
 ただ、「どうして...?」という程度の(程度が肝心。とんでもない!と怒れるゲストは対象外です。)疑問の解消の手助けになり、「なるほど..」と思えたゲストの,トマム利用していくうえでの参考になればいいと考えます。ちなみにここで言う、マニュアルの無いホスピタリティは、柔軟性,対応力、オールドファン用語のトマムスピリッツと同意語としてお考えください。
                                       
08/01/18 

 

テーマはしなやかな応用力

 ガレリアスイートホテル開業時にトマムがコンセプトを綴ったパンフレットの1ページに、印象深いメッセージがあります。
 スイートのサービスに、マニュアルはいらない。


 原文の一部を引用、紹介しましょう。
 お客様ひとりひとり、あるいは滞在の1日1日によってそれぞれに異なってくるご都合やご要望。それにどれだけしなやかに完全にお応えできるかが,スイートの価値であると、わたしたちは考えます。

 ゲストにとってはまさに理想....それ以上に、こうした理念を掲げて従事できることは、スタッフにとっても理想 の形であったにちがいありません。環境が整えばというただし書きが必要かもしれませんけどね。
 残念ながらバブル経済の終焉は、環境を整える間も与えてはくれませんでしたが....その結果影響を受けたのは完全に達する体制(例えば、急ぎのプレスや突発的なルームメイドなど、自社内で部門を持っていなければ応じられない要望です。)であって、スタッフのしなやかさは既存のものだったと、わたしは考えています。
 そもそもは、ホテルサービスのノウハウをオークラに倣ったというトマムは、広大な敷地や、高層タワーを有する施設などとともに、質の高いサービスもまた、開業当初から注目されたのです。
 オークラの 特色を分析する能力をわたしは持ち合わせていませんが、初トマム以来、トマムと他のスキーリゾートとを区別することになる実体験はしっかりと覚えています。
 公称のチェックイン時間にこだわらず、客室の準備が整い次第ゲストを案内するという姿勢、食券は金券扱いで、必要に応じて差額対応。ゲストはすべてのメニューから好きなものを選ぶことができるという自由度の高さ、次回の予定が決まっていれば、再訪まで長期間荷物を預かってくれるありがたいシステムなど、現在まで続いているもの、いないものも含めて、パック旅行のゲストを相手に、まあ,なんと言う柔軟な...と感心させられたものです。
 でも、その柔軟性は、まだマニュアルの内。
 いわば, トマムらしさとして語られるスタンダードなのですね。オプションはそこから生まれます。


きっかけはゆとりに根ざしたホスピタリティ
 
 いくつか、具体例を紹介しましょう。

 初めて桃里を利用した時、単品メニューに北京ダックを見つけたわたしたちは,夕食券のコースに追加すべきか悩みました。北京ダック半羽(8枚)がコースよりも高いというのはともかく、一人4枚は追加で食すには少なくない枚数です。あらかじめ北京ダックが組み込まれているコースはと言えば、品数も金額も夕食券対応コースに単品追加を上回るという状況でした。ま、北京ダック4枚くらい食べて食べられない枚数じゃないし..と決意を固めたわたしたちに、オーダー担当のスタッフから、二人で半羽の追加は量が多いと思うので、半羽の半羽(4分の1羽とは言わなかった)を用意しようかとの提案がありました。お願いしますという前に、「え?いいんですか?」と聞き返しましたね〜。

 

 ルミエールでは、3度目か4度目の利用の時でした。
 混雑時のヘルプだと言う予約担当のスタッフから料理の感想を聞かれたので、とてもおいしかったけど、温前菜は前回のフォアグラのソテの方がよかったと答えたわたしは(その頃、某クイーンアリスのフォアグラの大根添えにはまっていたのですが、ルミエールのフォアグラがはまった穴から引っぱり上げてくれそうで...焼き方も風味も異なっていたので、新鮮だったんですね。ご存知のように、この後、アリスの穴から這い出てルミエールの穴に...。)初対面のスタッフに、期待に添えなかったことを謝られて一瞬焦りました。が、その後の展開は予想外でした。次はフォアグラを準備しますからと言うではありませんか。リップサービスではなく、次回のリクエストの窓口として、直通番号記載の名刺をいただきました。

 フロントスタッフの気配りに驚かされたこともあります。
 道内在住時代のグリーンシーズン、2、3度続けてレイトチェックアウトを利用した後、何も言わずに訪れた時、部屋は17時までキープしているので、(チェックアウトは)都合のいい時間にどうぞと案内されたことがありました。団体さんが入っていて、いわゆるチェックアウトの時間が混み合いそうなので、混雑時間を避けてごゆっくりと..という配慮でした。

 遅く到着した時にロッカーまでスキーの板を運んでくれたり、予約を受け付けない店(フォレスタモール内の直営店)に混雑状況を問い合わせたところ、席を確保してくれたりといった気遣いを見せてくれたのも、初対面か、初対面と大差のないスタッフでした。
 その時、お馴染みだからという条件付けはありません。むしろ、言葉をかわし、見知ることになる関係への扉は、たいてい『頼むより前に察する』スタッフのホスピタリティによって開かれたのでした。
  そうそう...とオールドファンなら同様の体験に思い当たることでしょう。ガレリアも西エリアの施設も無かった時代から、訪れるたびに深まり、広がるスタッフとのリレーションシップが、希有な景観や極上の雪にも勝るトマムの引力だった気がします。
 ただ、この種の引力が今も日常的に働いているかと言えば、簡単には肯定しにくい状況かもしれません。
 運営会社も 代わり、スタッフも少なからず入れ替わりました。トマムに滞在することが“目的”ではなく“手段”となっているゲストの比率も増える過程で、トマムも合理化がすすみました。削除された無駄の中には、“ゆとり”という言葉に置き換えることこそふさわしいものもあったと、わたしは思っています。しなやかさが育つ時の糧とも言える“ゆとり”ですね。
 開業時までさかのぼるまでもなく、例えば一昔前と比較しても、スタッフからの積極的は一言は、今は少なくなっている可能性が大きいと考えます。代わりに、というわけではありませんが、この数年は別の引力が強まりました。上級スキーヤー対応や、ゲレンデ以外のアクティビティーの充実、小さな子供連れに配慮した環境も整ってきましたね。何に引かれるかは、人さまざま。肝心なのは、楽しく滞在できたかどうかということです。

快適さの土台はリレーションシップ

 我が家の再訪の決めてはトマムの居心地がよかったからですが、その快適さはまた、慣れることで安定感がますものです。寒くて遅いリフトも、当時はトマムスキー場の最大のウィークポイントのごとく指摘されていた緩斜面の多さも、トマム駅からインフォメーションセンターまでの急な階段を含むアプローチも、承知の上で行くのですから(もちろん,そうじゃない方がいいのですけど...。)それらは、リピーターには批判の対象ではなくなります。カイロを持参して、かくなるうえはスケーティングのスキルアップを怠らず、荷物は発送して軽装移動をこころがけるという自衛策が生まれるわけです ね。
 この自衛策は、初めて訪れるゲストにも有効なものです。
  知らなければ戸惑うばかりのマイナスポイントも、そうと解って(覚悟を決めてとも言う)行けば気持ちに余裕も生まれます。備えあれば、憂いなし。備えきれない部分は寛容さでカバーすれば、50点だったかもしれない滞在が70点に変わります。ゲストにもトマムにも悪くない話ですね。そして、気に入りの場所の不当な批判を目にするたびにカチンときていたわたしのストレスの軽減にもつながります。それゆえに展開しているのが、当サイトのトマム情報です。

  念のために...掲示板にトマムの批判を投稿するなと言っているわけではありませんよ。8年前に比べれば、わたしも少しは丸くなりましたから(批判意見に対して)「行くのやめれば?」などとは申しません。100%の満足など無いのは自分の経験で解っていますし、誰であっても指摘したいマイナスポイントを持っているのは、当たり前だと考えています。(パーセントの問題ですね。)

 ただ、現状を把握することで、 利用の際の満足度は上がると考えて始めたトマム情報ですが、比較する記憶を持たないゲストにとって(最近の数年間にトマムを利用し始めたゲスト)は、逆に戸惑いの原因となってしまう場合あるようです。

 その最たるものが、スタッフの柔軟性、マニュアルの無いホスピタリティーとの関わり方といえそうです。

 具体例でお話したように、かつてはいたって積極的に表されていた、プラスアルファのオプションホスピタリティ.....リピーターが、不変であれと願うトマムスピリッツの基盤は、今でも必要に応じて、健在振りを見せてはくれます。幾度もの変化に嘆くリピーターの心を最後に繋ぎ止めたのは、その時まで培って来た“関係”だったとわたしは感じています。
 リピーターがトマムのサービスを評価するのは、取りも直さずその恩恵を受けた実体験があるからですが、それは、でも、個々のニーズとその時々の状況で異なりを見せる流動性を持っています。駅の階段は疲れますよというのとは、性質が違う情報ですね。



ポイントはしなやかな対応力

 支障のないところで、古い話を...。
(注:右は参考イメージ。以前は各テーブルに用意されていた夕食のコースメニュー。見開いた2枚にだけ,フォアグラの温前菜が組み込まれています。)
 例えば、朝食はどこがいいかという話題で、リピーターの評価が高かったのはルミエールです。わたしもページを割いて紹介しましたし、滞在中に稼働していれば、宿泊施設に関係なく利用しました。ところが、ルミエールの朝食利用はガレリアの宿泊ゲストに限定されていた時期がありました。
  そんなこととはつゆ知らず、コート着用で出向いたわたしたちを 迎えてくれたのは、顔見知りのスタッフだったとしましょう。(そうでない場合もあった気がしますが...。)“ガレリア宿泊者限定”に気がついてから後、いつからそんなことに..と確認をしましたが、スタッフの答えは「気にせずにどうぞ」でした。
 宿泊者限定のルールができるより以前から自由に利用していたゲストへの配慮ですね。
 その頃に幾度か、ルミエールの入り口で、持参のクーポンが使えるかどうかを尋ねているゲストを見かけました。ルミエールが印字されていない、スタンダードの朝食券です。スタッフの対応はスムーズで、差額の必要を説明してからテーブルに案内していたように思います。ゲストは、ダメもとで来てみてよかったと、感じ入ったことでしょう。
  でもチェックイン時に渡されるレストラン案内を素直に見れば、ルミエールでの朝食は選択外の話です。念のためにとフロントのスタッフに問い合わせても、「ご遠慮いただいています。」との応えられたはず。ところが、念には念をを入れて...あるいはたまたま、ルミエールに直接、利用したい希望を伝えれば、満席で待機中のガレリア宿泊ゲストがいるという状況でもない限り、「お待ちしています。」という快い返事をもらえたかもしれません。

 さて、正しく対応できたのは誰でしょう?...って、クイズではありません。
  マニュアルに縛られないというのは、こういうことです。ケースバイケースで、経緯も結果もいろいろです。理想を言えば、上記のケースでは、フロントのスタッフがルミエールのスタッフとコンタクトをとって、ガレリア外宿泊者が利用を希望していることを伝え、現場の判断を得るべきだったと思いますが、そのひと手間も、オプションの内。
  結果として、ルミエールの利用を最初から考えなかったゲスト、利用したかったけれど諦めたゲスト、出たとこ勝負で利用できたゲスト、利用できると知って利用したゲストがいたことになります。
 問題は、利用したかったのに諦めたゲストの感情です。
 利用できる場合もありそうだという情報を得て、わざわざ確認したらダメと言われたから諦めたのに、実際には利用できたゲストがいたとなれば、愉快ではありませんね。下手な情報など無い方がマシだったと......解ります。

 同じようなことが何度か掲示板で取りざたされました。
 朝食券の昼食への振り替え利用の可否、 メニューに無い料理のリクエストに対する諾否など、できる様子だから期待したのに、(スタッフは)ちゃんと対応してくれなかった ...という話を聞くにつけ、わたしは、そしてメール等でお話しする機会のあるリピーターさんたちは、少々複雑な想いにとらわれることがありました。
 「※※してもらいました。」「※※をお願いしました。」というリピーター情報が多くなるにつれ、それがまるでトマムのサービスのスタンダードのような印象を(これからトマムを利用しようというゲストに)与えてしまったとしたら、残念なことです。
 なぜなら、それは、やはり オプションに属するサービスだからです。
 オプションがあるということが(トマムスピリッツが機能しているときの)トマムのスタンダードなのであって、オプションがスタンダードなのではありません。

 10年、20年を経て、いつものようにという感覚で受けているサービスが、そもそもは「え? かまわないの?」といううれしいサプライズから始まっていたということを、もっと早くに、わたしは紹介するべきだったのかもしれません。慣れが、オプションへのハードルを下げていたとも言えそうです。
 もちろん、オプションはリピータの特権ではありませんし、利用の頻度が諾否を左右するものでもありません。おいしいと評判の一品をリクエストするのに条件は無いと、わたしは思っています。
  でも、もしも、希望にそう対応が得られなかった時に、相手への不快感を残すなら、最初からオプションは試さない方がいいとも思います。その一件が無ければ、快適に過ごすことができたかもしれないトマムとの関係を、マイナスから始めるのはもったいないではありませんか。
 
 リクエストは、ゲストに与えられた権利ではなく、相手に、時間と労力の提供をお願いする作業です。
 ケースバイケースの結果に対する
しなやかな対応力は、お願いする側にも不可欠な要素だと、わたしは考えます。
 テーマはしなやかさ。 
 双方向に働いてこそ生まれるリレーションシップが、お互いのあり方の理解を深めるはずです。トマムを利用するゲストには、そのステップを大切にして欲しいと思います。

                                   
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