2週間の予定が、ホテルに一泊で切り上げとなったスペイン観光旅行...仕切り直しで来年のお楽しみになるはずが、再燃を繰り返すコロナ騒動を横において、海外旅行の計画を立てられるほどには楽観者でもない我が家。
とりあえずは、この際GoToしとく?という話になったのが2020年10月、スペインまでの道のりはまだしばらくは見えないことへの悟りとともに浮上した近場の温泉旅館への興味。
遅ればせながらのGoToトラベルキャンペーン参加計画だったので、
狭き門をこじ開けるようにして、いくつか予約っを完了しました。テーマは『身近のくつろぎ・日常への刺激』。宿泊が目的ですから、快適に過ごすために占有露天風呂付きベッド仕様の寝室に居室スペース有りの客室を条件に、選択しました。
グランディア芳泉 別邸 個止吹気亭 (あわら温泉 2022年5月中旬)
とりあえず、あるいは乗り遅れまいGoToで久しく遠ざかっていた温泉宿の検索に勤しんでいた2020年晩秋に、グランディア芳泉は目に止まり、幾度か予約も試みましたが、条件のある客室に空きが無く利用が叶わずにすぎた宿の一つです。
地域割でさえまとまりがないのに、Go Toキャンペーンの全国版再開なんてあてにできないわとなれば、芳泉にも空室は ありました。部屋食、全室露天風呂付きの小規模エリア、別邸 個止吹気亭のコンフォートスイートを予約しました。コンフォートスイートが2階、1階にガーデンスイートとロイヤルスイートのより広い客室が配置された全16室の、パブリックエリアの廊下も畳敷きの“別邸”です。
離れゆとろぎ亭も全14室露天風呂付きの様子でしたが、 個止吹気亭は専用のページも独立して展開されていましたし、別邸があるなら(離れより)別邸だよね、のノリでした。ただ、別邸はそれ自体の新築、増築ではなく、リニューアルが繰り返されて現存していることを知ったのは帰宅後。個止吹気亭のオープンは1985年、“別邸”の名称がついて露天風呂付き客室6室がオープンしたのが2003年、翌2004年にリニューアルで4室追加、2008年に2階のリニューアルが行われて、一旦落ち着いた様子です。
別邸の入り口は芳泉ロビーフロアの中にありました。入って右手に 個止吹気亭の入り口、先へ進んでラウンジの奥に離れに通じる廊下が、と言うレイアウトです。
ロビーフロア、フロント周りはさほど広くはありません。古くからあるホテルのような旅館という...どっちつかずの空間。ショップが左手奥にあり、自動販売機が左手手間ににならんで...目を引くものはなく、言い方は難しいいいのですけど、その先への期待感を高めるめるような演出が不足している印象でしょうか。

でもスタッフが、よかったです。
ベテラン揃いというのでもなく、若いスタッフの中には、まだ不慣れ?と言う所作も見受けられましたが、声かけから始まる積極的なアプローチが、どのスタッフにも共通していて、時間の経過とともにだんだんと居心地がよくなるような環境が、スタッフ力で仕上げられている感じです。
コロナ感染対策で非接触型のサービスが標準化していくような時代に、ひさびさに“人”の存在を感じました。
距離を保ちつつのところでも、それぞれに間接的なサービスを凝らし、努めているのはわかりますし、場合によってはこちらも気楽で...と言うこともあります。ただ、接客スキルは客を観て関わる時間と比例するわけで(個人の見解)芳泉のスタッフは、その意味で、今日よりも明日、なお好感度が上がる人材が揃っている気がしました。
わかりやすい具体例があります。
予約時に(主人が)膝が悪いので食事は座卓ではなくテーブル対応を希望する旨伝えました。
ところが、よりによって利用予定の5日前に旅行してられる状況ではない事情になり、何度目かのキャンセルの必要に迫られました。...キャンセル料が発生するし、で、電話で連絡をして、空室があれば明日ならいけるんですけど、と日程の変更をお願いしました。
変更は可能で、その際に、テーブル希望のリクエストの確認があり、階段は大丈夫なのかと問われました。日常生活に支障があるほどのものではなく、正座やあぐらで膝の痛みが出やすいと言う話なので、階段は大丈夫だと伝えましたが、到着すると、調整ができたので一回の部屋を用意したとの案内を受けました。
実際に利用させてもらった客室が上下(中イメージの右は本館のラウンジ)のイメージ。荷解きしている途中で、
コンフォートタイプとは価格が違うガーデンスイートだと気がつきました。加えて、ガーデンスイートを選択しなかったのは、3室の全部に座卓が置かれていた(公式サイト客室詳細画像 コンフォートタイプの幾室かはテーブル仕様)からなのに、案内された部屋の和室には大きなテーブルが置かれているとなると、空いていたから...と言う単純な好意に止まらず、こちらのリクエストに応じて部屋を整えた“手間”が推されました。
コンフォートスイートのテーブルのある部屋に案内すれば、こちらのリクエストは満たされるのに、馴染みのない、正座ができない客への配慮には、ありがたいの一言です。
そして、右肩上がりの好感度が、急カーブで上昇したのが、帰り際。
実はこの時期、わたしは右股関節の可動域がわるくなってまして中腰状態で右側の靴紐を解いたり結んだりの動作が...どんくさいい状況でした。(できないわけではない)で、畳廊下仕様の個止吹気亭では館内エントランスで靴を脱ぎます。上がり框に腰をおろして紐をほどき、靴から足を抜いたはいいものの、框がひくすぎて、脚力だけでシュタッと立ち上がれない(股関節に負荷がかかりすぎ)という失態を晒しての個止吹気亭入りだったのですが、結果、帰るときには正座はができないふれこみの主人の靴は三和土に、わたしの靴は框との段差なく、手すりを儲けてある箇所に置かれていました。その後、時間が来て、駅までの送迎車に乗ろうとちかずくと、(すかさず)踏み台が置かれたのでした。
情報が共有されているのか、こちらの様子を観たスタッフそれぞれの対応なのかわかりませんが、
駅に迎えに来た車に乗り込むときには踏み台は出てこなかったんです。ステップが高いので、確かに『よっこらしょ』の動作でしたけど..それで、要踏み台と観られたかな?
初対面の客の情報はないに等しいレベルです。直接的な関わりの中で、惜しみなく発揮される気配りは、やっぱり心に響きました。
部屋はトイレが窮屈だったり、内風呂が暗く、浴槽が深すぎたり、“時代”
を感じさせられる部分が、意外に目立っていたのが残念ポイントでしょうか。いわゆる『室内』はリニューアルが(2003年とすれば)20年近く前とは思えないほど、いいコンデションが保たれているのに、トイレの引き戸の劣化は...いつから?と...。鍵も後付けなので、そのまま置かれたのか、それとも特に傷みやすいのか ...。洗面シンクとカウンター が妙に新しくて、しっかりと手が入れられている様子なだけに、惜しい感じです。
また、
露天風呂横のシャワーコーナーも、あったほうがいい...けど、でも、この木戸(劣化あります)の内側、なんだか腰かけたとたんにな切さに襲われそうな雰囲気で、間違えて残っちゃったスポットみたいですもんね。
トイレの引き戸がいつか取り替えられても、狭さはそのままでしょうから、残念ポイントの全面解消は難題だと思います。 でも、それ、ただのポイントですから。
先に記したスタッフ力や、食事の美味しさで、室内のマイナスポイントは簡単に帳消し、プラスアルファ!
最初、油断してトイレの壁に頭をぶつけた主人の満足度も、高値安定でした。
夕食時間前に(夕食の)準備があるというので、(部屋食なので)鍋用コンロでも出てくるんだろうか?と思ってたら、テーブルクロスのセッテングでした。地模様のある白いクロスで大きなテーブルがすっぽりと覆われ、塗りの折敷が登場です。これで一人鍋は(クロスを汚しそうで)やだなと思ってしまう“美しい準備”でしたが、鍋もの類は幸いありませんでした。旅館の部屋食で、鍋物(固形燃料使用の一人鍋の類)がないのは、珍しいといっていいでしょうね。手抜きとは言いませんが、基本的には楽しめない一品なので、(暖かい料理の提供と言う意味で多用されるのもやむなしとは理解してます。)鍋物の無い品書きに、ときめきました。
しかも、部屋食ではお目にかかる機会が少ない揚げ物が、ラインナップ入りで、なかなかにインパクトのある内容でした。右イメージが、『名物』 越前とろろそばのあとに提供された、『揚げたて』、白海老真丈湯葉包み こしあぶら 穴子おかき。燻製塩とレモンでいただく、本気の揚げたてでした。緑鮮やかな葉っぱがこしあぶらだそうです。
柔らかな穴子の変わり衣のザクザクした食感が絶妙でした。
下イメージは『地の名産』。
若狭牛アスパラ巻付焼と福井鮭醤油麹焼と薬味いろいろと、朝食に提供された若狭牛と野菜の蒸し焼き(右側)。固形燃料が使われた唯一の 料理で、スタッフが二重の器の間に水を注いでふたをしてから数分で出来上がった蒸し物です。
2食つき宿泊のプラン名は『A5ランク若狭牛付き極上懐石〜』なので、肉料理は何かある、とはいえアスパラを巻いちゃうの?と、正直思いました。“A5ランク”アピールの肉がアスパラ巻きにされちゃうと、副素材みたいで、肉の立場は...と、でもこの肉がおいしかった!
品書きには特製タレで炭火焼きにしているとのコメントがありましたが、甘味が乗って、香ばしく、柔らかいけどサクッとしたかかみごたえとともに、うまみが広がる感じで、肉の主張がすごかったです。(立場、懸念する必要なかったね。)
献立表には、食材紹介動画にアクセスできるQRコードが添付されていました。
献立表自体にも素材の産地や調理法など、説明が併記されていたので、
(食事中の動画は落ち着かず)動画は後で拝見しました。
食材紹介にくわえ、下ごしらえや調理工程、料理人の紹介など、3分超の内容のある動画でした。料理をいただいた後(あるいはいただきながらかな)見ると、調理スタッフの“誇り”が振りかけられて美味しい料理がもう一段階パワーアップしそうですし、先に動画を見れば、どんな料理に出会えるんだろうと、誘惑にもかられそうだし、しかも調理スタッフ揃い踏みで“またのお越しをお待ちしております”のエンデングで...すごい吸引力!
芳泉の公式サイトにリンクは貼られてないのかしらと、帰宅後に公式サイトを改めて見直して、動画は見つけきれませんでしたが、総料理長のご挨拶や、経歴、こだわり、各料理長の紹介はしっかりとスペースを割いてありました。大女将や女将のコメントも、実際に利用後に拝見して、なんとなく感動できちゃうというのが...すごいことだと思います。
じわり、じわりと、後からある種の感動が積み増しされていく感覚に、実は、ちょっと驚いています。
少しおいて、冷静になると、やっぱり**だったら(もっと)よかったのに...と、欲が出てくると言いましょうか、最初の感激から2割くらいトーンダウンすることも珍しくないわけで、窮屈なトイレや暗くて、深いバスタブも使いにくい浴室など、改善が期待できないこともあるのに、トーンダウンじゃなく、(感動の)積み増しです。
直接、関接に行き届いているスタッフ力の`“成果”かもしれませんね。
ロビーフロアにある、場所も出入り口の仕様も変更は叶わないのであろう、あまりに普通のトイレにも、手洗いカウンターの隅には可憐な生花が飾られていました。
惹きつけられる宿です。
22/05/26 
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