いにしえを継なぐ 箱根・翠松園



ときめきロマン、ときどき不自由
 いにしえを継なぐ箱根・翠松園

 2023年4月中旬、箱根・翠松園に宿泊してきました。

 大正時代に三井財閥の別荘として造られた【三井翠松園】を料亭にしているという、敷地3000坪の庭園を有する、ふふ箱根の姉妹館です。
 昨年1月に開業したらしいふふ箱根に行ってみようか...と、公式予約サイトを見ていて、翠松園とのトラベルリレー企画に誘導され、ふふ箱根2連泊の予定を、翠松園とふふ箱根一泊づつに切り替えました。宿替えは面倒だし、時間も無駄だし、そもそも大正時代の【登録有形文化財】って、観るのはともかく利用したいかといえば、どうだろう?という本音もありました。ただ客室は現代に適して造られたとあるので、察するに築十数年、紹介画像をみるかぎりは室内に経年の劣化らしきものもなさそうだったので、リレー企画に乗りました。
 箱根は近くではないので、1回の旅で二箇所、 ついでに1日あたり5千円のクレジット、悪くはない話じゃありませんか。 初日に翠松園、日本料理(大正ロマン漂う料亭で、鉄板焼きよりは日本料理でしょう)で予約を入れました。

 翠松園の公式サイトでは、客室はカテゴリー別にとどまらず、部屋ごとの特色が画像と共に紹介されています。残念ながら、予約はカテゴリー別どまりですが..トラベルリレーは電話予約なので、和室、掘り炬燵は不要との希望は伝えました。

 
  客室は『藤』でした。( 上イメージ )

 リビングルームとベッドルームの間に扉があるセパレート仕様で、リビングには壁の入り口よ寄りにカウンター(荷物置きにちょうどいい高さ)とその下に引き出し収納、窓寄りに冷蔵庫、グラスやカップ等お茶アイテム、ネスプレッソ、反対側の壁に大型液晶テレビ、ベッドルームに引き戸のクローゼットと割と大きめのデスク、 リビングより小さいサイズのテレビが設置されている、全体にゆとりのある室内でした。


 
  洗面室とトイレ、お風呂はベッドルーム側、出入り口を含めてガラス張り仕様で、左側がトイレ、右側にバイブラバス仕様のバスタブ、奥に洗い場、洗い場のガラス戸を開ければ、ウッドデッキ手前にヒノキの浴槽、というレイアウトです。リビングルームからも出入りできるウッドデッキにはアイアンチェアとハンモック。
 室内は開業まもない..と言われても納得できそうなほど、綺麗でした。何度はか改装はなされている様子なので、2007年当時とは違っているのでしょう。 ただ、外回りの、経年自然劣化はやむをえないかなあ〜という感じです。外気と温泉成分に晒されながら、木製品は“時の流れ”が表面化してはいます。


 で、客室の位置は、公式では1Fとありますが、エントランスから客室までは左イメージと同様の階段ルートでした。

 イメージ左側は『藤』の客室を出て料亭方向を撮影したもので、右は階段を降り切って客室方向を撮ったものです。料亭(レストラン)は階段を降りて少し先、左側イメージの壁の黒い部分は隣の客室の入り口があるアルコーブです
 客室の入り口は 、外階段の通路に面してはいなくて、アルコーブの奥にあります。
 敷地を贅沢に、かつ傾斜を有効に使った低層の集合住宅のような造です。実は駅まで迎えにきてくれたスタッフから、敷地内階段が多いので、エントランスではなく客室近くに車を付けようかとの提案がありました。それで、エントランスどこ?ということになっても笑えないので、階段は大丈夫だからと正面エントランスにつけてもらいましたが...館内ではなく敷地内の階段、想像よりは多かったです。
 人工物なので、足元が不安定な階段ではありませんし、踊り場から庭にぬけると、車が通れる幅の道もあるので、“近くに車をつけて”のフラットアクセスも可能な客室ではあったんですね。

 ちなみにレストラン...夕食時には庭に出てから坂道を下ってみましたが、急坂で、歩くなら階段の方が楽なのがわかりました。
 問題は、玄関に【登録有形文化財】のプレートがある料亭...。 外を歩くので(階段も坂もある)靴を履いて出向いたところ玄関でスリッパに履き替えるシステムの料亭でした。時代を思えばあり得ることでしたが...思えなかった...。しかも沓脱石がよっこらしょの高さで、平に加工されてもいないので、脱ぐのはともかく、帰りが...わたしはバックベルトのサンダルだったので、しゃがまないことにはとど〜しようもないと思ってたら、帰路、サンダルを出してくれたスタッフが 足入れからベルト止めまでサポートしてくれました。
 大丈夫ですからと辞退できない状況、ありがとうございますの後に、思わず、助かりました...の一言でした。  (翌朝はもう、素直に備品の足袋ソックスに草履で出かけました。)
 

 料亭(紅葉)の館内は、薄暗かったです。開放感は...ないですよね。私たちは入って割とすぐの部屋に案内されましたが、衝立で目隠しが施されたこたつテーブルが配置されている空間でした。こたつ布団がズシリと重いけれど、確かに足先の暖かさは快適ではありました。ただ、他のゲストが、レトロなガラスの格子窓の横を奥へと案内されるので、なんとなく気になって目で追っていたら、ガラス越に他の部屋でテーブルに手をついて座る様子が見えました。座卓ではなく、どうやら掘り炬燵仕様だったようです
 掘り炬燵のない客室をリクエストした我が家はこたつテーブル席になったんだろうと察しました。夕食時は、我が家の隣に別の国内客ひと組、通路を挟んだテーブルこたつ席は全て外国人ゲストで占められていました。かつてはホールだったのかもしれないね、の一部屋。我が家はココだけで完了したので、【登録有形文化財】に関しては、ちょっと、ときめき不足と言いましょうか。

 でも、何かと不便なことで..といいつつ、サンダルを履くのを手伝ってくれたスタッフやや、 足元の温度を気にかけてくれたスタッフの配慮に接しながら、気分良く過ごせた宿でした。

 
 上イメージは夕食の一品と右側2枚が朝食。茶碗蒸し仕立てのお豆腐とサラダの後、お膳セットでの提供でした。サラダが温野菜、卵焼きが関西のだし巻きと違って甘味の強い表面パリッなのが、興味深かったです。このタイプの卵焼きも美味しい!

 前後しますが、チェックインの手続きは、客室で行われました。 到着時、ロビーは外国人客の手続きでこみあってましたから、臨時の対応だったのか、客室チェックインが標準なのかはわかりませんが、良いシステムだと感じました。
 スタッフ次第というリスクも無視はできませんけど、ロビーでの手続きでは控えるであろう“雑談”が、初対面のスタッフとの距離感を縮めます。客室までの道中は、駅の混雑具合や、天気の話、そして、リビングではソファに座るより前に「奈良より明るいと思います!」だったので、大きく同意。チェックイン手続き前に他の宿の話をしたり、最近の箱根の観光客の傾向を聞かされたり、急がない手続きは、なかなか好感度アップに繋がります。ふふにはないネスプレッソに主人が反応すると、最新タイプとのことで、うちでは最も古いタイプをまだ使ってると、それこそど〜でもいいことも“お伝え”しちゃったり...。「ご存知のユーテリティボックスはここにもあります。」「京都、奈良とはちがって、掛け流しです!」等、こちらの利用履歴をチェックしたうえでの、話術にたけた案内は、魅力的でした。

 ただ、掛け流しのデメリットを、言ってくれなかったね〜というのが唯一の残念ポイント。
  言われなくても常識なのかもしれませんが、その常識がなかったために翌朝、主人は冷め切ったお湯(水ではなかったらしい)と格闘です。

 わたしはまだベッドの中だった時刻に、早朝の温泉浴とばかりに手桶で掛け湯をしたら、お湯が冷たかったそうで...冷たいとわかった時には、身体はぬれているし、お湯を継ぎ足すには湯船の中に入らなければ手が届かないし(右イメージ、お湯の出口の上の方、黒いタイルの中に白っぽく見えるのが給湯のダイヤル) ということで、震えながら冷たい(と感じる)お湯の中を渡り、熱いお湯をだし、浴槽内でバシャバシャ暴れて攪拌しながら適温になるまでの長い時間耐えたそうです。浴槽手前には熱すぎた時に温度を下げるための水の蛇口はあるんですけど、冷めた時には冷めた湯の中に入らなければ熱いお湯は得られない落とし穴!
  夜通しずっと、お湯を出しっぱなしにしておくべきだったのでしょうか。(浴槽からズ〜とお湯が溢れ続けるということよね。)寝る前にお湯をぬいて、朝給湯...でも、
ダイヤルひねって50度(だったかな)のお湯は、逃げ場がないと、怖いです。
 奈良も京都も循環式で、湯温は一定に保たれていたので、盲点でした。

 お湯は時間と共に冷めますの一言、欲しかったです。次の機会があれば、主人の悲劇の教訓をいかして、正しい取扱を聞くことにしましょう。


                          23/04/22 

リストに戻る