サプライズがいっぱい
 五感で楽しむATAMI せかいえ

 2024年4月下旬、ATAMI せかいえに宿泊してきました。

  開業は2015年4月1日。このところ利用頻度が増してきたふふブランドのグループ施設(運営会社 が同じ)ということで、気になっていた施設です。

 オーシャンビューと源泉掛け流しの露天風呂設置が客室のアピールポイントのようで、悪くはないけど...客室のイメージを見る限りは少し広めのホテル仕様のような感じで、特別になにかひかれる要素は見当たらないようにも感じてましたが、2017年に『月の道棟』と名付けられた新館も開業したとのことで、ふふ河口湖の利用に合わせて、ついで利用の感覚で予約を済ませました。
 ふふと同様にプレミアムプランの設定があり、対象の客室は『せかいえ棟』のオーシャンビュースーペリアと『月の道棟』のオーシャンビュープレミアムのふたつのカテゴリー。各棟の、いわゆるスタンダードクラスの客室で、これより上位カテゴリーは、3~4名利用も可能なスイート、ペントハウスですから、我が家の選択肢としてはプラン対象のふたつの客室でした。
 48uに対して58u、2階、3階に位置してるか3階から5階に位置してるかでいえば、少し広くて、より上階にある方がいいかも..と、しかも、2年程度とはいえ新しいしという話で、価格差も妥当と判断して、『月の道棟』の客室を予約しました。
 レストランはふたつの棟に別れてあって、『せかいえ棟』は日本料理、『月の道棟』は肉料理と紹介されています。宿泊する棟のレストラン利用がプランでは紐付けになっているため、初利用のせかいえでの我が家の夕食は肉料理となりました。
 鉄板焼きではなくて、肉料理というのが気になはりましたが、公式サイトには鉄板で肉が焼かれている画像もあるので、一応鉄板 カウンターを前にして座って、肉素材が多めのコースをいただくと理解しました。

 今回利用の客室はが上イメージ。
 縦に長いワンルームタイプで、壁側に二人用のライティングデスク、ベッド、窓側にソファとテーブルという配置です。部屋の手前からでも、眺めは上イメージの通り。高台からのオーシャンビューは、窓枠の他は視界を遮るものもなく、開放的でした。
  特筆すべきは、バルコニーの手すり(厳密には手すりとは言いにくい)の低さでしょうか。手すりはバルコニーに設置されているのではなく、バルコニーの先にある窪地の先に取り付けられているんですね。窪地に立てば(立つ場所ではないと考えます。ただ、バルコニー先端ギリギリに座布団が置かれていたりもしたので、先端に座って足をブラブラなどは想定内でしょうか。バルコニーから落ちても堀の中..仕様です。)手すりは十分な高さがありそうですけど(立って試してはいません。)室内、バルコニーの床面からだと、手すりは目線の下になるんですね。
  落ちても窪地...とはいっても、落ちたくはないわけで、あまりバルコニーの縁には近づかずにおわりましたけど、いわゆる柵が触れることができない先にある仕様では、開放感はもちろん、奇妙な浮遊感も備わって、楽しめました。

 源泉掛け流しを謳う露天風呂は、バルコニーに“むき出し”設置。 浴槽エリアとデイベッドエリアを仕切るものはなく、床面に段差もありません。大胆に見晴らし優先の仕様でしたが、浴槽の正面に枠があって、簾が設置されていました。海に面したバルコニーで、人目が気になることはないと思いますし、庇もあるので、天気の影響もさほどは..と考えますが、時と場合によっては、この簾、海からの風避けに効果大かもしれませんね。 
 洗面所、シャワールームを挟んでバルコニーの露天風呂へという動線ですが、シャワールームが、洗面所側もバルコニー側も引き戸仕様で、とても使いやすかったです。
 掛け流しと聞いて、思い起こされたのが昨年10月、箱根翠松園での 『冷たい湯船事件』ですが、せかいえでは露天風呂の給湯は文字通りの掛け流しで、自分達で操作できるのは熱すぎた場合の水の継ぎ足しだけ、お湯はおまかせ状態でした。
 バルコニーに“むき出し”のお風呂のお湯は、翌朝もちょっと熱めのまま、手前の蛇口をひねって水を継ぎ足して適温調整しながら、掛け流しはかけ流してれば湯温は変わらないならないことを確認できました。

 左イメージが、『月の道棟』のレストラン、『肉料理ひとしお』。
 朝食時に人が画面に入らない角度で撮影した一部分ですが、一見席数の多い鉄板焼きコーナーと思いきや、鉄板の内側(イメージ右側、)は、フルオープンの厨房という、ユニーク作りでした。
 カウンターの隣席との間にしきりがあるのは、昨今珍しくはなくなりましたが、各席の後ろも通路とはドア付きパーティション仕切られている“個室”仕様。ゲストの目の前に広がるのは、窓越しの相模湾...よりも目に付く“ご飯支度”!

 鉄板を前にしたカウンター は、両腕を横に真っ直ぐに広げて手首を内側に寄せたようなラインで、左のイメージを撮った朝は、わたしたちの席はちょうど手首あたりでした。少し乗り出して見て、ラインの反対側の先までの長さに驚いたものですが、夕食時は、手首あたりから腕側へ寄った真っ直ぐのライン上でした。
 中央の大きな調理台、窓側にカウンターが配置された厨房の“広さ”を感じつつも、視界は正面が中心になります。 
 スライサーで生ハムがう薄切りにされている様子や、揚げられた器に和牛の炙りが盛り付けられたり、過程を目で追うことができる料理もあれば、新玉葱の摺流し(椀物 下イメージ右端)は完成された状態で、厨房の中を運ばれてきました。“あっちの方”での調理台でも何か作られているけど、見えないという...厨房は広くて、驚きました。

 中にいるスタッフは、料理人と、鉄板焼き方さんと、(配膳等の)サービススタッフで、焼き方とサービススタッフは一人が3組のゲストに対応していたように見えます。他の料理人はゲストと接点を持つことはなく、鉄板カウンター越しにゲストと向き合うのは、担当の焼き方スタッフとサービススタッフの二人ですが、複数組担当ですから、料理に関わること以外で会話が進むような空気感は乏しかったように思います。
 忙しそうとか、慌ただしいとかの雰囲気ではなく、ただ真摯に“お仕事中”といいましょうか、 厨房にはいい意味での、あからさまではないけど、静かに漂う緊張感に包まれていた気がします。

 特に、配膳担当のサービススタッフは、料理を運んでから器を下げるまでの間、何度か手のあく時がありますが、厨房内、調理台の向こう側、窓を背に待機する位置が決まっているようで、担当ゲストに向かい会う(距離はあります)形で、並んで立ってるんですが、背筋がピッと伸びながらも硬さを感じさせない佇まいがとても美しかったです。
 
 実は、鉄板料理の一つ目、ホワイトアスパラガスとフォアグラ、モリーユ茸、豆類の“旬菜”は、料理の提供までを鉄板焼き調理スタッフによって行われましたが、もっとソースをからめたいな〜と、豆をくるくるしてたところ、調理台の向こうで待機中だったスタッフが、「よろしければ、お使いください。」とスプーンを持ってきてくれました。立ち振る舞いの美しさに加えての、観察レベルの高さとと気配り、サービスは完成されてました。
 感心させられた一方、こっちも見られていることを実感して、軽い緊張を思えましたっけ。

 また、このスペースの厨房でスタッフ間のやりとり(例えばこっち運んで〜とか、次、できたよとかの)が、わたしたちに聞こえる状態では行われず、オープンキッチンの営みは整然としていました。あうんの呼吸もあるのでしょうけど、インカムが導入されているのかもしれませんね。
 ご馳走様で立ち上がって、後ろの扉を開けたら、そのばにいた別のスタッフがエレベーター前までエスコートしてくれましたが、こちらの行動の気配を察するというより、スタッフ間で情報のやりとりがなされて、こちらの動きがわかっているかのようなタイミングでの対応には、翌朝、チェックアウト時にも驚かされました。
 
 公式サイトの館内図では、『せかいえ棟』のロビー階(ロビー階の下が3階)と『月の道棟』の3階で行き来ができる図になってますが、館内渡り廊下ではなく、外の回廊で繋がっている状況で、屋根付きで足元も整備された外回廊ですが、館内図から想像するよりも、少々距離があり、緩やかな曲線をを描いてるので、『せかいえ棟』のエントランスから『月の道棟』の出入り口は見えない位置関係です。
  ところが、わたしたちが『月の道棟』を出て、外回廊を半分も進まないあたりで、『せかいえ棟』側からスタッフが駆け寄ってくるじゃありませんか。キャリーカートを引き受けて、ロビのソファに誘導してくれたスタッフは、こちらのチェックアウトの予定時間を知ったうえでの対応と言えなくもありませんが(グループ施設のふふ同様、朝食の終盤に予定を確認されます。バリアフリーなので、手荷物は自分達で運ぶに大した負担もないので、ピックアップは不要と伝えてました)ただ、駆け寄ってくる様子が、そろそろかなと待っていたというより、部屋を出たところでたまたまあって、あいさつをかわしたスタッフが、連絡したかも?と思わせられる様子で... 実際のところはわかりませんが、つねに、良き位置で待機して、エストコーしてくれるスタッフの存在感は、印象に残りました。

 話が前後しますが、左イメージが、朝食のワンシーン。
 朝も鉄板料理が組み込まれたラインナップでした。
 スタートはベビーリーフとマッシュルームのサラダ、ご飯と豚汁 小鉢と一緒に焼き物が出てくる前に、山盛りレタスが鉄板で焼かれ始め、しらす投入でまぜあわせ、にんじんソースが敷かれた器の上に...レタスの多さ、炒める時間の意外な長さ、にんじんソース?など、美味しいのかどうかも含めて謎めいた一皿でしたが、熱々のレタスになぜがシャキシャキ感が残っているという、不思議だけど、美味しいレタスの鉄板焼きでした。(左イメージ、レタス調理中) 
 朝のもうひとつ鉄板料理が、出来上がる前から美味しいこと間違いなしのだし巻き卵。
  実は朝食は和食か洋食の選択が可能で、初利用の我が家は和食を選んだのですが、左手四組くらい先のゲストは洋食を選ばれていたようで、鉄板でオムレツが作られているのが見えた後の、我が家の前ではだし巻き卵でした。(具材をいく種か選べる様子の)オムレツも美味しそうでした。
 鉄板のあるカウンターで、肉料理となれば、鉄板焼きの料理の提供は予想の範囲、夕食の意外性はむしろ、鉄板で焼かれていない料理だったりもしますが、朝ごはんの鉄板焼きは、インパクトがありました。
 朝食ではおなじみの素材を、 炒めるか焼くかのシンプルな調理ではありますけど、“本気の出来立て”を、朝からいただける食環境は、ゲストにはありがたく、せかいえの強みかと思います。

 懸念を付け加えれば、『肉料理ひとしお』 は、“人”で仕上がる空間です。宿泊客がほとんどいなくてという心配は横においても、食事の時間によっては、ゲストが数組という状況はあり得そう...。
 わたしたちが食後のデザートタイムに差しかかった頃、19時30分から利用のゲストを迎える準備が所々で始まってましたが、先付けのお皿の数から、このあとは3組の利用かと推察されました。

 『月の道棟』客室数は13室、ペントハウスはプライベートキッチンもある部屋と、もう1室、この2室の利用頻度は予想できないので11室で満室とすると、11組分の席はありそうなカウンターなんですよね。
 わたしたちの利用時には、わたしたちの左の席までで、6組 が埋まっていて、それよりも左寄りは何組の利用かは確認できていませんが、鉄板調理は行われてましたし、サービススタッフも動いてましたから、2組か、3組、つまりは当日の宿泊客の3分の2以上は早い時間からの夕食を楽しんでた訳で、そのあとの準備の料理数が少ないのも当たり前ですよね。

 ただ、同じ空間に“人”が単純に半分以下となると、 居心地がいい環境と言えるかどうか... しかも、時間とともに広い厨房の中にはその日の役割を終えるたスポットが増えてくるわけです。フルオープンならではのライブ感に勢いがあるはずの、早い時間の夕食利用が無難かもしれませんね。

 右上イメージは、グッズと食品に分かれてあったお土産コーナーに展示されていた、練り切り。他のお菓子と違ってむき出し展示だったので、単なるディスプレイかと思いましたが、購入できる“和菓子”でした。ただ、注文を受けてから職人さんが作るとのことで、前日までの“予約制”のお土産です。

 日持ちはしないし、翌日は河口湖だし...お土産に適しているとは言い難いアイテムでしたが、こう、並んでるのを見せられると食指は動きます。3個入りの箱があるとのことだったので、悩んで3個を選びました。 

 チェックアウト時に、他のお菓子と一緒に渡されたのを、箱を開けて見ると一つ一つカバー付きケースに納められてました。真っ直ぐに...を心がけては、つい油断して...をくりかえし、タクシーと新幹線と長距離バスと在来線を乗り継いで、途中で、斜めになったり、一度はひっくり返りもしましたが、3個ともなんとか、綺麗な状態で我が家に到着できました。
  持ち帰りの間も含めて、思い出深いお土産でした。

                                        24/05/26 

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