ホテルオークラ東京
  アルファ・リゾート・トマムが模したオークラ流の今...

 2015年5月、ホテルオークラ東京に宿泊する機会を得ました。

 失効期限がせまったマイルを消費しなくては...、1月に購入した東京駅美術館共通券も3カ所分が余ってるし....それじゃと思い立った東京行き...さほど期待していなかったにもかかわらず連休中日程での特典航空券が確保出来たのち、空室を探して到達したのがホテルオークラでした。
 1月は都内で比較検討する手間を省いてTDR に逃げましたけど、 目的地銀座と東京駅周辺となれば、そうもいきません。都内のホテルは...相当長い間、すくなくてもディズニーシー開業以降は宿泊していませんから、参考情報は白紙状態です。そんな中で、オークラは昔利用したことがあるから..と言いたいところですが、じつは、殆ど、縁は無かったホテルでした。敷居の高さがネックになってというのではなく、行動圏内からはずれていて利用しにくかった上に、当時は、歴史や伝統に強い魅力を感じ取るには、わたしたちも少し若かったですしね。ですから、今回のオークラ利用は、積極的なものではありませんでした。連休の中日、手頃な価格で空室があるホテルの中で、ホテルオークラ東京もあったので、取り急ぎ予約を入れたのでした。

 選択可能な他のホテルではなくオークラに決めたのには、多少の理由はあります。
 スタンダード(しか選べなかった)の客室でもそれなりの広さがある様子だったことと、そして、言うまでもなくトマム繋がりでの信頼感でした。今は昔の話ですが、アルファ・リゾート・トマムが規範にしたホテルオークラ...。 20数年間にわたって縁を繋いだトマム流の『本家』に対して、興味が湧いたのでした。


 宿泊したのは別館、スタンダード。
 シャワーブースも洗い場もなく、トイレと一体になったバスルームは、最後に利用したのは年月も思い出せないスポルト(トマム)以来でしたが、ベッドルームのスペース、室内調度品等に不足はありませんでした。寝具は、羽毛コンフォーター使いのデェベスタイル、(いまだに毛布と言うことも無いだろうけどと思いつつ、事前に確認は済ませました。)、リネンの質も申し分なく、ローチェストとドレッサーの機能も兼ねたデスクの天板は広く、王道の調度品の使い勝手の良さを再認識しました。最近多くなってきた感じのTVボードは、雰囲気はいいんですけど、ドレッサーにはらないので、意外と不便なこともあるんですよね。
 別館の開業は73年というわりに、いささかの劣化を感じさせない室内の状態はさすがだと思います。日常のメンテナスにに留まらず、必要に応じて、室内リペアも行われているのでしょうね。照明も充分な明るさがありました。

 昔からの定番、ライティングデスクと大きな鏡も、それ自体は、充分に新しく,経年の劣化はありませんでした。しかも、容量たっぷりの引き出しが左右に3つづつ。収納スペースに余裕があるのもいいねと、開けてみた引き出しの中が、,残念なことに、汚れていました。
 何かのラベルが1枚と、木屑のような茶色い粉ゴミが数カ所に..。開ければすぐに分かるものなので、ビックリしましたが、1段目だけではなく2段目も同種の粉状のゴミがあったので、ルームメイドが引き出しのチェックをし損ねているのだと理解しました。
 まさか...の話ですが、ここでクレームをつけても、不愉快なだけ。
 本館立て替に伴い4年間余りの休業が決まっているオークラで、モチベーションが下降中のスタッフもいるんだろうと...わたしは自分で引き出しの中を拭き取りました。ところが....外の景色はと、内側のすりガラス窓を開けてみると、外の窓の内側に虫が一匹はりついているじゃありませんか。空気の入れ替えかなにかで,外側の窓を開けている時に迷い込んだ虫が、出るに出られず2重窓の間で行き場を失っているという状態でした。景色を楽しむ部屋ではないので、内側の窓を閉めておけば害はありません...が、ルームメイドが知らずに内窓を開けてるときに、(掃除の時には、開けるわよね)虫が室内に迷い込んでも面倒なので、2重窓の間に閉じ込めているうちにと、駆除を依頼しました。
 対応は早かったです。殺虫剤とタオルを持ったスタッフが二人、虫を取り除いたあと、スプレーで汚れた(と、ハッキリとは分からない)ガラスも丁寧に拭いて行ってくれました。
 その後、わたしが化粧を落として洗顔し終わらないくらいの短時間内に、ティーバックの紅茶と焼き菓子が届けられました。(虫騒動で)貴重な時間を使わせてしまったお詫びの気持ちだそうで....、ダメ押しのフォローに感心させられました。
 で...これで終われば、トラブル転じて対応力の高さを知ることが出来てよかったという話なのですが、続きがありました...。翌日、美術館を4箇所はしごして、歩行困難になりかけて戻った夕刻、夕食まで一寝入りする時間は無いものの、とにかく汗を流して...とリラックスモード全開中に、呼び鈴らしき音が聞こえたのでした。訪問者の予定は無いので、最初は気にしませんでした。わたしはドライヤーを使っていましたし、主人は、テレビの音も子守唄になりかかっている状態でしたしね。それで、一定の間隔をおいて、ピロロ〜ンと聞こえるのが,自分たちの部屋の呼び鈴らしいと認識するまで少しかかりました。

 訪問者は客室係の責任者だったようで、前日の虫騒動のお詫びを一言..というのでした。
 着衣もまともではなかったわたしたちは、セーフティロックを外さず、「わざわざご丁寧にど〜も..。」と、隙間越しの応対でしたが、あいにく、このご丁寧さは、感心事項にはなりませんでした。

 虫は、清掃の最終チェックをきちんとしていれば防げたトラブルかもしれませんが、その瞬間には気づかない場合もあり得る話です。すぐに駆除が行われて、おやつも頂いて、わたしたちとしては完結したトラブルでした。日にちが変わってからまでの『お詫び』には、過ぎたるは...のことわざのとおり、感心や恐縮を通り越して、首をかしげたくなる心境にさせられたのです。

 こういうケースでは要対面のマニュアルでもがあるのでしょうか? 
 こちらが室内にいることは分かっているとしても、状況の把握は出来ないはず。入浴中かもしれないし、熟睡中かもしれないわけで、1、2度の呼び出しで応答が無ければ、メッセージカードを残せば済むことではないのか...あるいはチェックアウト時に一言で、充分じゃないのかと...思っちゃったんですよね。 そもそも、前日のお茶とお菓子は『貴重な時間を使わせた』お詫びというスタンスだったわけで、一言のお詫びのために、脱ぎ散らかした服をとりあえず身に付け、裸足で対面するハメになったこちらとしては、くつろぎの時間を阻害されてまで、必要ではないお詫びに付き合わされた感が残りました。
 虫一匹でそこまで反省されrても...それよりも、引き出しにゴミが残っていたことのほうが、問題は深刻なのに...と、言いはしませんでしたが、思ってしまいました。
 
 レストラン、フロントをはじめ、パブリックエリアでのスタッフの物腰は柔らかく、落ち着いていて、丁寧で、気配りも充分ですが...何の不足も無いんだけれど、格別印象にも残らない....。
 立ち入りすぎず、押し付けないサービスを心情にしている.のかどうかは知りませんが(あえて、サービスされていることをゲストに気づかせないサービスを心がけているところがありましたっけ)それもまた、一流の域なのかもしれませんね。ただ、我家の価値感では、感動は薄いといわざるををえません。アルファ・リゾート・トマムに長く勤務し、ルスツリゾートを経て、オークラに転職したスタッフが、ようやくオークラ流のサービスに慣れてきたと話していたのを思い出します。オークラ流に倣ったトマムにいたのに、違いがあるのかと疑問でしたけど、対応力、柔軟性重視の基本は同じでも(要望に対して出来ないと言わない、無理な場合でも代案を提示すると教えられたと、言うのは別のスタッフの話)表現は異なるのかも...地域性や客層の違いからくる変容でしょうか。
 
 
 朝食はまずくはないけど...の感想。
 トマムのやま里で天ぷらコーナーを担当していたS氏が、研修に行って目を見張るばかりの(調理技術に)感激しきりだったという山里の天ぷらは、おいしかったけど....で終わりました。
 (天ぷらの味はいかがでしたか?と帰り際に聞くのは、控えた方がよろしいかと...。終わってから聞いても仕方がないわけで、どのみち、おいしかったと応えない客はいないでしょう。カウンターで向かい合ってるんだから、好みと合ってない様子の客には、早めに察して対応する方がスマート。)
 価格を考えるのはフェアではありませんが、...トマムやルスツを知ってしまったときから、都心での食事に価格込みで大満足するのは不可能に近いという実情を確認したようななものですね。

 そういえば、定評のあるオークラ流ホスピタリティは、常連客を対象に発揮されるという噂はありましたっけね。
 馴染んでこそ気づかされるモノを,我家が感じ取るとが出来ず、一流を正しく評価出来なかったとしても、仕方がないとしましょうか。
 特色薄く、感激も不満も薄く....の滞在でした。


                                         
15/05/08 

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