TOKATIANの紹介で...
 ヴェニスからテーブルクロス再び



  一昔前にベニスのサンマルコ広場で見つけて一目惚れしたオーガンジーのクロスは、その後に2枚を取り寄せて、3枚を交互に使っていましたが、2枚を取り寄せてからでも早8年、それなりの使用感は拭えない状態になりました。美しい上に結構丈夫で、数えきれないくらいに洗濯機でまわされてきたわけですから、あたりまえといえばあたりまえの結果ですね。それでもアイロンをかければピシッと、さしたる型くずれも無く、まあ、....醤油が飛んだり、紅茶がこぼれたりで、さすがに、取れないシミも増えてきたことがくやまれますが、これも使っていればやむを得ないことです。

 そこで、2011年2月、ユーロ安に刺激を受けて、トカチアンに新しいテーブルクロスを注文しようと思い立ちました。
 8年前にはサンマルコ広場にあるトカチアンとか言うリネンを扱っている店を特定するのに苦労しましたが、後日のために当時のショップカードや、インボイスや、メールアドレスもちゃんと保存してましたから、もうコンタクトを取るべき相手の連絡先は判っています。ただ、さすがに8年...価格も確認しなくちゃなりませんし、もしかしたら新たなデザインがあるかもしれないとの期待もあったので、問い合わせ事項が多い...。電話よりも確実にこちらの意図を伝え易いe-mailに、参考資料として手持ちのクロスのイメージを添付して送りました。
 8年前のアドレスが活きているかどうかの不安は少々...でもメールは問題なく送信されました。....が、返信がこないではありませんか。e-mailは即答が普通...とはイタリアでも通用する常識ではないかもしれないので、数日待って再送しましたが、結果は同じでした。となると、ジャンクメールかなにかで処理されていて、読まれていない可能性もあるということで、ファスクを送信。それでも無反応なので、最終手段で、仕方なく電話を入れました。

 電話に出たのは若い(多分)男性でした。
 ファクスちゃんと届いていましたが、問われて確認して、今読んでいるという様子がありありと伝わってきました。それでもこれで話が先に進むと安心したのも束の間、彼はテーブルクロスは売っていないというのです。
 聞き返しましたが、no more sellerという返事に、わたしは軽くパニック状態。普通に解釈すれば、店は閉店したということになるんでしょうけど、電話は通じるし店名も同じだし....しかもその店は今はジュエリーを売っているというから余計に混乱しました。
 そもそもサンマルコ広場TOKATZIANという店がいくつかあって、8年前にわたしは、ジュエリーのTOKATZIANにも写真店のTOKATZIANにも「そちらはリネンを扱っている店ではありませんか?」と電話をかけて尋ねたではありませんか。今手元にある電話番号は、執念で入手した『正しい番号』だったはずなのです。それが、何故にジュエリーのTOKATZIANに繋がってしまうのか...。実は本店がジュエリーを扱っていて、8年前に商品と一緒に送られてきたショップカードは、本店の物で、カードに記載の電話番号は、当時実際にわたしがかけた番号と違ってるとか....ショックが大きいと通常は思いつかない逃げ道にすがりたくなるものですが、かけ間違いで他にリネンを扱っているTOKATZIANがあると言うわけでもなく、判ったのはオーガンジーのテーブルクロスをTOKATZIANで買うことはできなくなったということだけでした。
 念のために、昔はリネンを売っていた店だよね?と(だって、買ったんだから!)とくいさがりましたが、スタッフは....わずか...8年前を知りませんでした。no more sellerとは、そのまんま、売り手がいないと言うニュアンスだったのかもしれません。
 ただ、相手は短い返答に終始したわけではなく、わたしが言葉に詰まっている間にも何やらペラペラと.... 。そのうちに、いきなり(ではないんでしょうけど....)電話口からはなれ、けっこうな間を置いて戻ってくると唐突に(ではないんでしょうけど....)数字を読み上げ始めました。電話番号らしい数字を控えたわたしに、TOKATZIANのスタッフは、そこに(わたしが欲しがっているような)クロスがあると思うと言ったのです。昔のことを頼りに迷い込んできた子羊に、今の道を示してくれたのですね。親切に感謝して電話を切った後で、店の名前がわからないことに、わたしは気がつきました。ペラペラ...の中で聞いていたのかもしれませんが、全く聞き取れてなかったんですね。
 
 その店は...本来わたしが連絡を取りたがっているリネンを売っているTOKATZIAN...という希望はさすがに保てないので、多分わたしが知らない店......。ただ、観光ガイド本などで紹介されているヴェネチアレースで有名な店だったら、これは意味がありません。だってその種の店には、ひとしきり立ち寄りましたもの。そして、そこには無かったモノを、わたしはTOKATZIANで見つけたんですから。意味の無い電話を避けるために、教えられた番号は、数冊のガイド本に紹介されているどの店のものとも尖っていることを確認したのち、相手を特定できないままに、わたしは電話をかけました。

 最初に電話に出た女性は、Please と Weitの 単語だけを2度程繰り返して、すぐに男性に変わりました。そこそこ年配の..気配があるおじさんでした。
 日本から電話をかけてきた相手が、昔にサンマルコ広場の店で買ったテーブルクロスと同様の物を探している者だと名乗るのにたいして、さすがに戸惑いがあった様子でしたが、わたしも必至。実はTOKATZIANという店で買ったテーブルクロスと同じような物が欲しくて...とつづけたところ、おじさんは納得を示してくれました。そして、TOKATZIANはリネンの販売をやめたんだよと、TOKATZIANのスタッフよりもTOKATZIANに詳しい所を見せてくれました。そこからの話はスムーズでした。
 電話番号とファクス番号が同じだという店に、わたしはメールアドレスと欲しいテーブルクロスの条件を(サイズ、素材、デザインの傾向など)を書いて送信し、3日後に、商品の写真が添付されたメールを3つ受け取りました。
 素材はリクエスト通りに全てオーガンジーでしたが、テーブルクロスはレース使いの物がふたつ、シャドウワークの刺繍つきのは1枚だけで、ドイリーが色違いで3枚ありました。選ぶのに迷うほどの種類が無かったのはTOKATZIANも同じでしたっけ....。ホワイトオンホワトのデザインなら他にもあるということでしたが、わたしは色が付いたものを選びました。クロスは、やっぱりナプキンつきでした。

 これとこれにしますとオーダーのe-mailを送信してから、商品が届くまでには10日程かかったでしょうか。
 発送が遅かったのではなくて、UPSの、急を要しないけど大事な荷物を送るのに適した、少しリーズナブルな発送方法が使われたようで、イタリアを出てからドイツ、中国で寄り道をしながらの日本着でした。

 送料のお知らせや、発送後の追跡番号のお知らせも、メールやファクスを使わず、電話をかけてくるおじさんにはちょっと驚かされましたが、苦労して手に入れた商品にも、正体不明の店の対応にもわたしは満足しています。良い出会いに恵まれました。

 インボイスから店のスペルは判明しましたが、読み方が判らず、スペルで検索してもリネンショップではヒットせず...で、なぜか....電話番号とe-mailのアドレスがおなじプチホテルを発見しました。もしかしたら、ホテル内のショップだったのかもしれませんね。

                                      11/03/24 

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