正体見えず...
     胃粘膜下腫瘍の謎

 2014年12月、定期健康診断を受けたクリニックから“胃粘膜下腫瘍の疑い有り”との結果報告が送られてきました。
 
 年に一度の胃X腺(バリウムを飲むヤツです)検査の結果、初の『異常事態』でして、胃カメラによる精密検査を受けるようにとの指示が記載されていました。
 わたしが、X腺検査を受け出したのは5年程前からで、それ以前の市の定期検診では、胃のX腺検査は項目にはなかったんですよね。市内には協力医療機関が多く、すぐ側のかかりつけ医院で用が足せたので気軽な検診ではあったのですけど...保険の種類別に受けられる検診が変わってからは、市からの案内が届かなくなったかわりに、主人の勤務先から分厚い封書が....。これまでの検診項目に加えて、視力、眼底検査、婦人科検診...おまけに胃部X腺検査もくっついてきて、ありがたくも面倒なことになったんですよね。
 多少なりとも結果が気になったのは、5年前にはじめてバリウムを飲んだ時だけで、(人生初の胃のチェックでしたから)その後は、発泡剤飲んで、バリウム飲んで、下剤も飲んで....って、胃の不調を自覚するのは年に一度の検査の後という状況に、わたしは、検査で被る不利益に物もうしたい気分でしたが...ついに『早期発見』の利点と向き合うこととなりました。
 ただ、それが、胃潰瘍とかポリープとかではなく、粘膜下腫瘍などというおどろおどろしいネーミングとなれば、見つかってよかったという話にはなりません。年の瀬も押し迫っている時期だったので、胃カメラは年明けにまわして、とりあえずはと、ネットで情報収集を試みました。

 胃粘膜下腫瘍のキーワードで検索すると、公的、私的サイトで少なくない情報がアップされていましたが、深刻度に関しては、バラツキがありました。胃粘膜下腫瘍とは....粘膜から発生するポリープや胃がんに対して粘膜の下に出来る腫瘍の総称のようですが、良性、悪性があって、悪性は増殖も転移もするらしい...。悪性となれば、手術も検討される“病気”ですが、腫瘍は良性の場合が多いとする説明もあれば、殆どが悪性(GIST)という見解もありました。 問題は、粘膜の下に出来た病変の性質を見極めるのは困難と言うことでした。胃の内側に出来たモノなら、カメラで状態を見るなり組織を調べるなりで判断がつくものの、正常な粘膜の下にあるモノの正体はつかみにくい...胃カメラだけでは分からないと言うことです。ただ、胃カメラで形状や大きさを確定したのちに、2cmまでなら経過観察、2cm〜5cmならCTや超音波胃カメラ等でより詳しい検査を行い、5cmを超えるものは摘出と言うのが治療のガイドラインのようでした。大雑把に言えば、深刻さは大きさに比例すると言うわけです。

 小さい腫瘍は無症状で、検査等で偶然発見されるケースが多いという....無症状ですが、疑い有りとされたわたしの腫瘍のサイズ予測は検診結果に書かれていませんでした。
 大きさや腫瘍がある位置など、もう少し自分の腫瘍について具体的な情報を得るついでに、精検は超音波胃カメラでなくて胃カメラでいいのかと検査を受けたクリニックにたずねたところ、クリニックの医師からは超音波胃カメをを奨められました。やっぱりね...。ただ、あくまでも“疑い”の範疇なので、大きさ等の詳細情報は得られず、(だからカメラを飲んで調べましょうということなのよ。)かわりに、X腺のデータ(大きなフイルム数枚)と紹介状を宅急便で送ってくれました。

 2015年1月上旬、わたしはフィルムと紹介状を持参して、大学病院の消化機内科を受診しました。
 12月下旬に予約が入っていた婦人科診察日に、術後フォローの腹部CTを2月に撮りましょうという話があったので、一緒に胃の方も...とのリクエストは完了していたので、この段階では精査超音波胃カメラで診断を受けるのが最善策だと思っていたわたしは、K医師から「とりあえずは、普通の胃カメラで、(粘膜下腫瘍が)本当にあるかないか、確認しましょうか..。」との提案を受けて、悩みました。
 “ある”ことを確認するだけでは、コトは済まないわけです。
 胃カメラで腫瘍が見つからなければそれで終わりと言うことは、超音波胃カメラでもおなじことですけど、あった場合は同じことにはなりません。...2度手間じゃないですか、ねえ。
 ただ、フィルムでも「これかなあ〜?」と疑いを持つ程のものはハッキリ写っていない状況で、いきなり超音波胃カメラという話にはなりにくい事情もある様子で、ダメとは言わないまでも、K医師は、まずは胃カメラ推奨なのでした。
 加えて、昨今の胃カメラ検診は鎮静剤を使うというところも多くなっているようだったので、大学病院なら当然...と期待していたら、鎮静剤使用下での検査のワクが埋まっていて、かなり先にならないと出来ないので....まずはフツーの胃カメラでと言うわけです。(鎮静剤も使わず)初めてでいきなり超音波胃カメラ飲んで、胃カメラに拒否反応持っちゃっても困るし...と諭されれば、拒否反応は既にしっかりと持っちゃっているわたしとしても、胃カメラよりも器具も幾分太いし、時間もかかるし...の超音波胃カメラをど〜しても!とは言えないじゃありませんか。
 案外(胃カメラって)こんなもんかと思えたらしめたもんだし(思わないよね〜。)がんばってみて!とK医師にエールを送られてから1週間後の初胃カメラ体験は、さんざんでした。
 今になってみると、12月、風邪の症状がおさまってからも続いていた胸からもみあげるような咳がようやく収まったばかりの頃で、わたしの喉もあれていた可能性は大きいし、トロトロゲル状の麻酔薬が、効くべき喉の部分に充分な効果を発していなかったような気もしますが..基本的に検査中はずっと痛かったです。喉への刺激がつよくて、オエ〜状態に繰り返し襲われました。モニターを見たり、息を深〜く吸って〜止めて〜、などの技師のリクエストに応える気力はのこっていたものの、喉を通っているカメラのの管がわずかでも動くと、痛い、むせるというわけで、(より楽に検査を受ける為に有効と言われる) リラックスモードを保つなんて無理!
 こんな検査を繰り返してから身体を傷めるに違いないと確信したわたしは、(検査後、痰に血が混じっていましたし、数日は水を飲んでも喉の奥が痛かったので、傷めたのは事実))帰宅後に鎮静剤併用での胃カメラ検診をしているクリニックを、真剣に探しました。
 と言うのも、粘膜下腫瘍は、やっぱりあったんですよね。虫にさされてプクッと膨らんだような形で、(一応細胞も取られたのですが、その結果で、良性、悪性の確定はまずもって出来ない)良くて経過観察、万が一のばあいは、治療....となれば、胃カメラとは切るに切れない強い縁が出来ると言うことです。
 切れない縁なら少しでもマシな付き合いを模索するのが、長続きの第一歩。近場に数件、鎮静剤使用で、苦しくない胃カメラ検査を全面にアピールしているクリニックがありました。わたしがさんざんな目にあわされた大学病院とも協力体制にあったり、院長に当大学病院の勤務歴があったりとの情報を見て、わたしは、大学病院からクリニックへの転院を申し出る決意で、K医師と向かい合いました。 
 初胃カメラ検査から10日程のちのことです。

 診察室に入るなり、「おつかれさまでした〜。大変でしたか?」と聞かれたので、「もう、無理です。」と宣言。
 かくなるうえは、先生...勝手なことですが...と言うのは検査結果の説明を受けてからと思っていたら、K医師の方から、今後は鎮静剤を使って出来るワクを早め早めに予約で押さえるから大丈夫ですよと言われ、わたしは、ちょっと拍子抜けしました。つまりは紹介状を持参してきた患者の現状を判断する為に、最初の胃カメラ検査は急ぐ必要があったので、鎮静剤なしでがんばってもらったけど(鎮静剤か検査の予約は埋まっていたそうで)、今後は余裕を持って検査の予約を入れることができるから、大分楽に検査が受けられるはず....と言うわけです。
 で、実際に見つかった胃粘膜下腫瘍の大きさは....2cm前後.....。微妙な数値じゃありませんか。
 より詳しい検査が必要とされる大きさです。ただ、2cmとはいっても、粘膜の厚みも込みの大きさで、下に隠れている腫瘍の大きさはもっと小さいはず...形状からは悪性の疑いも低いので、経過観察でも問題は無いと思うけど..「嫌や!と言うんでなかったら、2cmあったら超音波胃カメラの検査もうけられるけど、どうする?」という話になりました。
 眠らせてもらえるなら、出来る検査は受けておきたいと応えると、既に予定に入っているCTの結果を待ってから、決めましょうと言うことになったのですが、このCTで、“あきらかな胃粘膜下腫瘍は認められない”との報告があがりまして、(あるんだけどね...。)どうも、やはり...CTでも写らないくらいの大きさ(2cmあれば写るそうで)だろうということでした。となれば、スタンダードは、半年〜1年後の胃カメラで経過観察...ですが、もう一つ、2cm大の場合のスタンダードも有効でしたから。わたしは、勢いで超音波医カメラの予約を取っていただきました。
 経過を診るにしても、現状の正しい判断のためには情報は多い方がいい...、眠っているうちに終わる検査を拒否する理由があるでしょうか。
 人によって薬の効き方には差があるので...大丈夫だと思うけど...と、ちょっと慎重なK医師に、鎮静剤がチャンと効くことを祈ってます!とおくりだされてから約2週間後、ケル状麻酔薬を喉の奥にためて3分程(出来るだけ奥に...は分かっていても、スルッと喉を通り過ぎるようなゲル状態、なんとなならないんでしょうか...。)の気持ち悪さに加えて、鎮静剤投与のための点滴ルートの確保が追加され、検査の姿勢を取ったあと、担当技師から、薬を入れるので、少し眠くなりますよと言われ、少し!?と、警戒心が頭をもたげかけ、モニターを目にして、あれ、薬の効きが悪いのかも...?と、不安になりかけたところ、スーっと喉から器具が抜かれたので、なんとか持ちこたえたとわたしは理解したのですが、実は、カメラ挿入時の記憶は全くないことに、あとで気づきました。
 瞬時に意識がなくなって、終了間近に覚醒したようで、検査台から下りて休憩用の椅子(血圧,バイタル等の計測モニターに繋がれて1時間)に移動する時には眠気もふらつきもありませんでした。K医師からは理想的な効き方と言われましたが、確かに、検査中にリラックス状態が保たれたお陰でしょうか、ごくわずかな喉の違和感も帰宅時には取れていました。数日間水を飲むのも痛みを感じた前回と同種の検査だとは信じられないの負担感のなさでした。

 で、粘膜の下に隠れた腫瘍の大きさは、約5mm...初胃カメラでの計測時の4分の1に落ち着きました。筋腫のような物で、心配を要する病変では無いとの診断でしたが、大きくなったり、形状が変わったりすると要注意なので、とりあえずは経過観察....。最初は半年後をメドに、その後は1年毎に鎮静剤下胃カメラで様子を見ることになりました。
 胃カメラで診て、変化があったら、超音波胃カメラ...というより、毎回超音波胃カメラで経過観察した方が手っ取り早いんじゃないかと思いましたが...K医師は、変化しない前提で胃カメラ観察の方針を決めたようです。
 それはそれで、良かったというべき話ですね。

 6ヶ月先、さすがに鎮静剤を使う胃カメラ検査の予約は殆ど埋まっておらず、日にち、選び放題でした。

 ただ...一昨年まで無かった腫瘍が5ミリとはいえ出来たと言うことは、1年の間に5ミリまで変化しているということ?との、わたしの質問に関しては、おそらく、ず〜と前からあったものだと思うというのがK医師の見解でした。
 この大きさだと(胃内への盛り上がりも平たい)バリウム検査で見過ごされることも充分あり得るそうで、実際に今回のX腺フィルムでも、分かりにくかったくらいなので、疑問を抱いた検査医師のお陰でたまたま今回発見出来たんじゃないかと...。
 お陰で...胃カメラデビューするハメになっちゃいましたけどね。正体が曖昧な異物を持っていることなど、知らずに済んだ方がストレスも無かったでしょうにね。なんでもなければ、『早期発見』もそれなりに迷惑な話です。
 せめて、バリウム(発泡剤と下剤と)飲むよりも、ウトウトしつつの胃カメラの方が優しい検査かもと言うことで、X腺検査卒業を喜ぶことにしましょうか。

                                      15/04/02 

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