マリアージュ・フレールの茶葉を
  パリから取り寄せるまでの
              長い道のり 

 パリのマリアージュ・フレール本店を訪れたのは、20世紀終盤....。

 さかのぼること数年、凄くいい香りの紅茶を見つけたと言って知人の情報で尋ねた店でオーダーしたのは、ボレロ、2回目はマルコポーロ、とっかりはオリジナルブレンドのフレーバードティーでしたが、出会いから短期間でシングルエステイトの春摘みダージリンにハマってしまったのは既出の話です。
 紅茶の葉が産地(地域)ではなく農園別、収穫の季節別に分類されてあるということを知ったのは、マリアージュ・フレールの『お茶の本』を手にして...カタログリストのラインナップの多さに驚きもしましたが、春摘みダージリンのブームは時を置かずにはじまりましたっけね。紅茶専門店も増える中で、季節になると、「春摘みピュッタボン入荷しました。」とか「春摘みダージリンフェア開催中」のお知らせを掲げる店も珍しくなくなりました。

 マリアージュ・フレールでしか入手出来なかったカテゴリーの茶葉が他店でも取り扱われるようになることを歓迎しつつも、ちょっと...レア度が低下していくのを惜しく感じたことも事実でした。
 代理店の閉鎖で、一時、店との連絡が付かなくなったり、直営店になってからは入荷が特定の店舗に限られる茶葉が増えたり(しかも,直営店では電話注文、発送は受け付けない...。)で、決して購入し易い環境ではなかったにもかかわらず、切れそうな縁を繋ぎ止めながらの20数年の間に、我家は何度かパリ本支店で、春摘みを中心に茶葉の大量買いをしてきました。
 1998年末年、初めてドアを押した本店で、価格の違い(安かった!)に舞い上がったわたしは、対応してくれたスタッフに日本からの注文はできないのかとたずねたところ、彼は、即答しましたね〜。マリアージュ・フレールの茶葉は世界中のどこにでも送ることができえる!...と。世界中にと、彼は誇らしげに言って、オーダーフォームをくれたのでした。欲しい茶葉を書いて、住所と名前書いて、クレジットカードの情報書いて、ファクス番号に送信でOK。

 オーダーフォームを手にした時の、通販出来るんだと分かった瞬間の感激は忘れもしません。
 ただ、それよりも鮮明に覚えているのは、その後の落胆でした。
 帰国後、しばらくして(買って帰った茶葉が無くなりかけた頃、)コピーしたオーダフォーム(何度も使うことになると考えていたのよね、)の茶葉注文欄を埋めて通販部門宛にファクスしたところ、帰ってきた連絡は注文受付の確認ではなく、残念ながら日本の住所宛には発送出来ないという内容でした。ショックを受けたわたしはオーダーフォムをくれた店のスタッフに、「日本には発送出来ないと言われた...。」と,泣きの電話を入れましたが、スタッフも一応は困惑したように記憶しています。おかしいなあ、どこにでも発送できるはずなのにな〜という感じですね。だからといって、じゃ、僕がかわりに送ってあげるよとはならない(あたりまえ?)。わたしにとっての大問題は、なんと、「ま、いいじゃん、またパリに買いにくれば言いよ。」で終わったのでした。
 
 “また”の機会は数年後。
 その間に、マリアージュ・フレールは公式HPが出来上がり、オンラインショッピングの環境も整えられましたが...発送に関しての説明には、日本への発送は出来ないことが明記されていました。HPの言語はフランス語、英語に並んで日本語の切り替えボタンがありましたけど、日本語に切り替えるとサイト自体が日本版に移るのです。商品ラインナップも価格も日本バージョン...つまりはマリアージュ・フレール・ジャポンの公式サイトにリンクしているのでした。

 マリアージュ・フレールの国外初出店は日本。(ありがたや..。)

 当初は代理店でしたけど日本法人が設立されたことで、直営店展開されている日本は、その他の国と区別がなされたということですね。
 余談ですが、ウィキペディア等では法人設立は1988年と記載があります。90年半ばまで、マリアージュ・フレールの本店は青山にあり、当時販売を請け負っていた代理店のスタッフがレピシエを立ち上げたことで、マリアージュ・フレールの販売形態が代理店から直営に代わり、法人設立もその頃と、わたしは推していましたが、日本上陸の時点で日本法人は出来ていた...ということですね。いまも、販売店舗は直営、代理店,共に在るようです。
 直営店の規定は代理店を縛ることが無いので、代理店の方が融通がきく傾向もあります。

 と、言うのはさておき、パリまで飛ばなくても,茶葉をチェックして購入出来るのはありがたい、けど、日本法人を介する結果、わたしたちだけが同じ茶葉を違う価格でかわされる現実は...まあ、よくあることとはいえは、ありがたくありません。

 まして、 本国と同じ茶葉は日本では揃わないとなれば、なおさらです。
 銀座の本店まで出向けば、春摘みもそれなりに充実して入荷していますが、地方店は、新茶入荷はたいてい3銘柄とまりでしたから....わたしはしぶとくに幾たびか“取り寄せ”にトライはしました。
 ファクスで送信云々の時代はおわり、ネット通販...ですが、発送出来ないとされる日本の住所でアカウントが取得できないので、パリのショップに直接手紙を送りもしました。
 いわゆる通販部門では規定で発送不可と振り分けられるものでも、個別のショップからならなんとかならないかと...。
 実際には何ともならなくて、無駄なアプローチの合間に結局はパリ現地で大量買い...そして、パリと東京本店と、時折は国内地方店の利用で通年を過ごすペースに落ち着きかけた頃に、腹立たしくもオートクチュール・シリースの登場です。
 
 多くの春摘みに関して言えば、契約買い付けかオークション買い付けかの違いはあっても、例えばピュッタボンの春摘み他店でも買えます。春摘みブームの一頃程の選択肢は無くなったものの、各農園の新茶は日本国内でも流通していますから、昨今、我家がパリや東京で優先して購入してきたのは、ポピュラーな農園別の春摘みよりも、*年振り入荷の**とか、未入荷の**という、マリアージュ・フレール専売のレア度の増した品種でした。
 そんなところにオートクチュール・シリーズです。
 完全受注生産の限定茶葉! 初年度展開の茶葉は、タイミングよくパリで購入が叶いましたが....その翌年、わたしはあて名をGeneral managerにして、店に手紙を送りました。
 世界のどこであってもクリックひとつで取り寄せが出来るオートクチュール・シリーズを、日本で住んででいるからと入手が困難になるのは納得できないと綴った手紙です。
 マリアージュ・フレールが国外発出店に選んだ日本で、わたしたちはなぜ、他国の人たちと同じようにマリアージュ・フレールのオートクチュール・シリースを味わうことが叶わないのか...。東京本店で全ての品種は入荷しないだろうし、入荷した茶葉も、発送はしてもらえない。わたしたちが被っている不利益を理解して欲しいという文句とグチと願望を詰め込んだ手紙です。
 回答は得られませんでした。手紙が、読んで欲しい立場にある人に読まれたかどうかもわかりません。
 もとより、何かを期待してのアクションではなく、言わせてもらおうじゃないかのノリでした。

 ところが、先日、公式HPの発送案内から「日本を除いて』の但し書きが消されていることに気づきました。。
 わたしのグチが効をそうしたとはいいません。何かの切っ掛けで、ももしかしたら同じような意見が寄せられていたのかもしれませんが、状況が変わったんですね。パリ本国のHPで、買い物をするためにアカウントを取得する際,国名選択の一覧にJAPANNを見つけた時には、かなりテンションが上がりました。ほんとうに?ほんとに日本からの注文が受け付けられるんだ...、2017年の新茶もオートクチュール・シリーズもクリックひとつで...取り寄せることができるなんて、感激です!
 
 初回の買い物は5種、4種はオートクチュール・シリース、もう一種は2017年新車のナムリング・クイーン・アッパーを選びました。ナムリング・キング・アッパーは、関西の店舗にも入荷していてで、購入済ですが、クイーンアッパーは知る限り入荷履歴が無い茶葉です。オートクチュール・シリーズは、紹介されている茶葉のイメージの中から気になった数種をしぼり、説明コメントを参考に選びました。
 上のイメージは、一番最初に決めたエクセルシオール。青みのあるスリムな茶葉が、沢山の銀針のフィルターをえて、エレガントな色合いに仕上がった美しい茶葉です。
 下のイメージはクイーン・アッパー。撚りの甘い若草色の茶葉が目立つ、春摘みらしい茶葉でした。

 買い物かご機能を使って注文を終えると、自動送信の注文受付メールが届き、よもやその後に、いえ、実は日本には発送出来ないので...などというお知らせがくることは...と警戒中の、約8時間後に、UPSからトラッキングナンバーの通知が届きました。マリアージュ・フレールからの商品発送のお知らせメールは、それより4時間程遅れて届きましたが、いずれにしても“仕事が速い”印象でした。
 UPSのの追跡機能は、荷物が動く度に反映され、細かく現在地を追うことができる優れもので、早い段階で配達予定日も表示されます。
 ドイツや中国を経由して...今回は注文から4日目に届きました。
 送料は、重さ等でも変わる様子ですが、今回は25€。国内で購入可能な品種であっても、価格差次第では1種100gの取り寄せでもメリットがある送料です。....が、関税がかかりました。まとめ買いで送料を節約して関税を払うか、16666円以下になるように分けて注文して、個別に送料が加算されても非課税で受け取るか...検討の余地がありますね。
 それと、やっぱり...と言うのはパリの店で購入した時と同様に、シールが袋の封印の役割を果たせていませんでした。折り曲げた袋の口がのびようとする力に負けて、シールがはがれるんですね。箱の一辺の長さは、口を折り曲げた袋の長さにあっていて、シールがはがれても折り曲げた口がのびきって開いて、茶葉が出てくるという心配はなさそうですが....国内店舗からの発送の場合はシールを貼る前に透明なテープでしっかりと口が止められ、また袋自体をエアキャップ等で完全に包み込まれて届くので、こういうケースでは日本店の丁寧で完璧な仕事に感心させられますね。
 
 新茶のシーズンはこれから..。
 パリ本国の公式HPのチェックが楽しみでもあり、(懐具合に関しては)恐ろしくもありですけど、20年余りのストレスから解放されての『パリからのお取り寄せ』解禁です。一時の気の迷いによる変化でないことを願いつつ、まずはしばらく楽しみましょう。

                                     17/04/27 

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