ハードルがいっぱい!
 不動産売却ゴールまでに
         横たわる障害 

 2年ほど前、主人の実家の売却へのスタートラインに立ちました。

  相続、所有したのはおよそ7年前、住人不在の家屋は築100年の、いわゆる古家です。が、元々は義父母が携わっていた事務仕事に使っていた事務所部分の賃貸契約は継続中だったので、まあ、家賃が入るうちは急いで処分しなくても...というスタンスででしたが、呑気に構えてもいられなくなったのが、『間貸』のリスクでした。

  大家たる住人と借家人が同じだった時代とは異なり、使用されるのは古家の一部分で、大部分は住人不在の空き家状態、しかも切り離しはできない一軒家...。日毎に埃が積もっていく家の中で、日中に二間だけが使われているという状況は、家賃でカバーが難しいストレスでして、いづれは建て直し、あるいはリフォームして活用する予定もなく、自分たちで維持管理ができない以上、“売却”を考えざるをえなくなりました。
  業者に庭の手入れを依頼したこともありましたが、雑草の育つ勢いたるや、多少の手入れで追いつくものじゃありませんし、締め切った屋内はドアや襖の開閉にも引っかかりが...少し片付けをと思っても、室外機を外したエアコンは使えないし、明かりも、使わなくなって久しい電気製品をオンにするには不安がある中での自然光頼りの作業では、できることもしれてます。気づけば、建物の経年劣化のスピードが、各駅停車列車から新幹線レベルに移行した感じだったでしょうか。
 ただ、不動産売却となると、「売ります。」「あ、買いましょう!」で進む話ではないわけで、まずは査定!
 複数の業者に一括査定を依頼できるサイトを利用して、フォームに必要事項を入力して送信したところ、各社から、割合早い段階で更地での見積もり価格の提案がありました。古家ありにチェックはいれてましたけど、最初の段階で家屋付きでの見積もりを知らせてくれた社はなくて、古家に関する情報が不足している以上、仕方がないですね。
 査定価格は、似たりよったりでしたっけ。
 
  気軽に物件の相場が推せる一方、最初からリアルに対応してくる業者は数件で、賃貸契約の状況、古家の大きさなど具体的な情報を電話で聞かれたのが2社、直接話をと自宅に訪ねてくれたのが1社でした。電話でやりとりをしたうちの1社は、仲介だけでなく古家丸ごとの買取、借家人がいる状態での買取にも対応かとのことでしたが、更地での売却想定価格よりも買取額はがやすくなるのは当然ながら、賃貸契約継続のままだと場合によっては(裁判沙汰などの最悪のケースをも想定して)一千万安になることもとの話でした。
 ...これは、大きい。賃貸契約の解消だとか、退去の要請だとか、スンナリ行かない話も聞くので、丸ごと買い取ってくれるならそれもアリと考えていましたけど、差額一千万の可能性を示唆された以上、不動産売却のステップ1は“古家の完全空き家化”となりました。

 契約の解消の通達は更新の6ヶ月以上前にということで、査定を依頼した時点では次年度のの賃貸契約は自動的に更新となるため、順調に行って、“
空き家化”計画達成は1年後...。年明け早いうちに、主人がまずは口頭で賃貸契約は年いっぱい、来年の更新はできかねることを伝えました。当方で家を十分に管理できる状況にないため、賃貸できる物件ではなくなってきたことを、退去要請の理由としました。
 事務所移転の費用負担はどうするかとか、退去月の家賃はどうするかとかの、想定していた交渉ごとはないままに数ヶ月....ただ、押し迫ってから、言った言わない、聞いた聞かないとなるのも困るなので、6ヶ月前に賃貸契約の更新はしないことと、年内いっぱいでの退去を求める内容証明は送付しました。その時点で、もめているわけでもないので、抵抗は多少ありましたが、結果として揉めることになった場合に備え、書類作成、送付は弁護士に依頼しました。(差出人に弁護士名は入れず)9月頃、今後の予定をたずねたところ、新年から移転先で営業の心つもりはあると確認が取れたので、更地での売却見積もり価格、売却戦略等の提示はありつつも、賃貸問題の結論が出るまでコンタクトが途切れず、待機体制だった2社に状況を報告、また1月には空き家になるという前提で新たに査定依頼をして、縁があった2社と合わせて、仲介業者候補は4社となり、売却への道のりが具体化します。売却物件は『土地、ただし敷地内に要解体の古家あり』なので、全ての業者から、解体費用の算出のために、家屋内の立ち入り調査を求められました。
 近隣でも売地ののぼりが立ったまま長く置かれている土地が目につくし、更地にしたから売却価格が期待通りにアップする保証もないしで、 我が家は費用をかけて更地にするつもりはないことは伝えていましたから、更地相場マイナス古家解体費用で、妥当な売値を算出するというわけですね。各社担当者がそれぞれに解体m、撤去行社のスタッフ同行でが埃まみれ、電気もまともにつけられない、古家内をチェック(4業者のうち、2社は解体業社と撤去業者個別スタッフ、1社は同行スタッフ一人で、撤去と解体費用別見積もり、残る1社は待ち合わせの時間に来られなかったので縁がなかったようでと、断りの連絡を入れました。折り返し担当スタッフから一週間間違えていて....の留守電がはいっていて、縁を切ってよかったと判断。)
 その後一週間のうちに、3社から解体費用を反映した売却案の提示がありました。便宜上、提示が早かった順に A社、B社、C社とすると、更地売却提案価格がもっとも安かったA社の担当者が、営業適性度120%みたいな人物で、最初から、査定価格よりも高く売る自信はあるから仲介させてほしいという、熱意と気合いと、売却戦略データに根付いた自信とにあふれんばかりで...しかもマメ!ときたもので、査定の価格は参考だし、多少の価格差は埋めてくれそうな担当者のやる気にかけてみようかという気持ちに、実は我が家は傾いていました。担当者も手応えは感じていたと思います。 
 予想よりも、撤去、解体費用が高く見積もらてたものの、もっと安く請け負ってもらえる業者をさがすし、 自分もバンタイプの車を所有しているので、中のものの処分はサポートする。モノを減らして、わずかでも撤去費用を抑える『作戦』も実行しましょうと...、例えばトラック1台分の本を処分したから、撤去費用がが当初の見積もりより*万円やすくなって売り出し価格も*万円高く設定できるとは思いませんでしたが(撤去物を4分の1、3分の1に減らせたというならともかく)、具体的な『作戦』が交わされる状況で、他社の(売却見積もり)結果をもらう前に決断するのは筋が違うので、A社には返事を数日待ってもらうという心境だったのは確かです。
 少しでも高値で売却できる可能性に寄りたいのは当然ながら、 見積もり(予想)価格よりもスタッフ力の方に期待がかたむいてたんですね。B社、C社の担当者に期待が持てなかったという話ではなく、A社担当者のやる気に捕まった感じでしょうか。
  最初から、需要はあるから買主のアテはあると言い切ったA社担当者にたいして、他2社は少々慎重なものいいで、個人宅には広すぎる土地、数件に分けるには適さない縦長地形、裏通りに面した増築部分(義妹が相続)の壁と倉庫の壁が一体なので補修が関わってくる解体が面倒....と悩ましそうな様子もあった中で、『いい物件』だからとの姿勢を貫かれれば、そりゃ、傾きますって。(見積もり察しも一番分厚かったし...。)

 ところが、その後、話だけは聞かなくてはと迎えたB社担当者が、 購入希望者を見つけてきたので、我が家の密かな決断が揺らぐことになりました。
 撤去解体費用の見積もりは、A社のそれよりも相当高く算出されていて、更地売値マイナス撤去解体費用の方式だと、むしろA社の方が条件がよくなる数字でしたから、撤去解体費用の見積額の資料を見た瞬間に、やっぱり(A社)...と思うところで、購入希望者の存在が明かされたのですから、驚きました。
  実は仲介だの買取だのと言っていた初期段階で、買取を期待できそうな法人に物件情報を提示して、価格調整をしても構わないかと確認され、我が家では問題ないとして書類を交わしていたのですけど、**円くらいでなら、買取り先が見つかりそうですよではなく、**円で現状買取しますという相手がみつかりまして...という話で、しかもその価格が、査定を依頼した複数の業者から更地での売却相場として提示された価格の平均値と変わらないレベルで、“美味しすぎる話”で、逆に手放しで飛びつけないくらいでした。
  先方の条件は間口が*メートル1cm以上あることと、確定測量を行うこと。測量については、他社スタッフからも聞かされていた『売却の流れ』の一つでしたけど、間口は、個別の事情による条件です。B社担当者は自分でも測ってみたところ*メートル1.5cmあったので、条件は満たしているというのですが、0.5cmの余裕はむしろこわい...けど、担当者に言われるまでもなく、よくこの価格を提示されたと言っていい条件で、B社としてはこれ以上の好条件は...というわけです、言い換えれば、もしも間口が足りなくてまとまらなかったしなかった時の“戦略”は、具体化していないように感じました。何はともあれ全力で“まとめよう”の意気込みでしたっけ。まとまるものならこちらもまとめたい...。 
 ついでに言えば、物件情報の提供に関して書面は交わしていなかったC社も、買取意志が確認できた法人情報を持ってきてくれましたが、こちらの条件は確定測量と更地化で、買取価格はB社提案よりも数百万円安く、そさらに撤去解体費用我が家持ちですから、検討の必要もない条件でしたが、結果としてはB社の提案の好条件さが際立ち、A社への傾きをリセット(お断りにはストレスを自覚。)、不動産売買の仲介を依頼する契約をB社と正式にかわす、サポート情報になった気もします。。
 本来なら、そこから売値を定めて、買手を探すことになるのでしょうけど、買手は決まっているので、契約の日取り決め、それまでに金銭負担のない仮測量を行うことも決まりました。仮でも確定測量を依頼する予定の専門家が測量するので、B社担当者の自主的計測よりも精度はますでしょうし、その段階で、間口が*メートル1cmをきっていたら、考えなくちゃ!ということです。
 
 どうせ必要なら確定測量やっちゃったらと内心思いつつも、契約前の安心材料として仮もやらないよりはやってもらったほうが...ぐらいの気分で立ち会っていて、とりあえず肝心の間口は*メートル3cm!わずかに余裕が得られました。が、隣家との境界が“ココ” としての計測結果!
 “ココ”じゃない場合がありえるというのがね〜。我が家の場合隣家の所有者が変わる時に交わした図面(双方の署名捺印あり)があって、いわゆるこれが隣家との境界を確定した測量図だと理解したのはもう少しあとでのことですが、間口に関して言えば片方の境界は確定済みだったので、そこから反対側隣家の塀まで(そこに釘が打ち込まれていて、義父たちが境界を承認しあい、位置を指差して釘を打ち込む写真が添付された覚書が残っていた)の計測でした。ただし仮。
 隣家にも立ち会ってもらい、お互いに境界を承認、境界標設置、確定図面作成、署名押印で完了するのが確定測量...らしい。境界を接している全ての土地の所有者の立ち会い、承認、署名捺印、お隣と、義妹と、裏手で一部が接している空き家の所有者(と我が家)との都合を調整して、集まって、確定測量の計測が行われると聞いて、そこに住んでいるならともかく、空き家にしている土地所有者にしてみれば隣の境界確認のために「きてください」と言われるのは、ありがたくないお誘いだろうなと思いましたが、お誘いしようにも空き家の所有者とコンタクトが取れない経過を測量士から聞かされて1ヶ月が経過すると、空き家の所有者が今は北海道に住んでいてなんてことだったらどうなるんだろうなどと、考えても仕方のないことでストレスを抱えました。
  幸い我が家の裏手の空き家の所有者さんは比較的近くにお住まいで、連絡がつかなかったのは知らない番号からの電話には出ないようにしていたということだったらしく、結果としては快く立ち会いに出向いてくださり、境界の確認も、(どのお隣とも)スンナリ終わりましたが、所有している不動産を売却するのに、周りの“協力”が、必須というのは予想外でした。相続等で代が変われば、近所付き合いどころか面識ない間柄での“協力”ですもんね。土地の境界確定云々という話に、警戒されて立ち会い拒否されなくてよかったというべきでしょうね。
 
 確定測量から、必要な資料が整えられるまで2週間少々、法務局での手続きも行われたようですが、売買が完了したのは、契約して一時金を受け取ってから3ヶ月後でした。契約時に定められていた有効期限ギリギリで、十分に余裕があったはずなのに、コトが進まずなかなかタイトなスケジュールになりました。
 
 その間にも、下水が表通りじゃなく裏通りに繋がっているかもしれないため、下水管の移設が必要になる可能性が浮上(B担当者が不利益情報として買主に伝えました)したり、法務局保管の図面では、義妹が相続した土地との境界が増築した建物(義妹所有の空き家)の中になっているので、図面修正が必要になったりと、実際に自分たちが動くわけじゃないんですが、面倒が小出しで現れる感じで、土地と古家と家の中のものの引き渡しの条件(確定測量図など)が整うまでの時が長く感じられました。
 おまけに、法務局での手続き(境界確定図の受理...とかでしょうか)待ちで、引き渡しの日にち調整に入っ頃に、義父が趣味て立てたと(わたしたちは)思っていた歌碑が、市の街並みなんとかに登録されていて、勝手に処分できないお邪魔アイテムだったと明らかになり、ぞっとさせられました。
 買主が、引き渡し後の手続きか何かで市役所に行ったところ、その場所には歌碑があるはずですが、それは(敷地内でも自由に処分できません)...と 言われたそうで、*メートル 1cmは必須とされた間口に鎮座する結構な幅の歌碑は、もちろん関係者はみんな目にしていたアイテムですが、わたしたちを含めて誰一人、お役所の紐付きだなんて、考えもしませんでしたものね。
 引き渡し時に、工事中は一旦どいてもらうけど、ほかさずにちゃんと保存していきますという先方の意向を聞いて、(買主が)対応力のある法人で助かったと、つくづく思いました。
 自分たちで先に更地化を試みてたら、手に余しただろうし、個人との売買なら、敷地内に自由に処置できない歌碑がついてるなんて、契約の途中でモメたかもしれませんね。(その前、下水管の移設の件で問題浮上、だったでしょうか。)

 売買契約完了後、一週間ほどして墓参りのついでに自宅前を通ったら、幕が張られ、すでに屋根が取り去られてました。でも、裏手から見える倉庫前に物は散乱、撤去物も膨大なんですよね。

 終わってみると、丸ごと買い取ってもらえる相手に出会えた『奇跡』に感謝です。

                                     19/04/14 

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