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衝撃の初対面
初めて、チーズケーキを見たのは、忘れもしない、札幌の‘狸小路’でのこと。
店の名前と、当時の自分の年令はきれいさっぱり忘れましたけど、ケーキの形は記憶にあります。
右のイメージのようなタイプで、ふんわりと柔からかく仕上げられ、表面にはペッタリとジャムが塗られていたはずです。もっとも、テカテカと光るそれが、ジャムだと認識したのは、かなりたってからですが....。
ツブツブの残る赤い苺ジャムか、マーマレード、あるいは不透明のチョコレート味やピーナッツ味が、わたしにとってのジャムの全てみたいなものでしたから、実際に口にしてもなお、甘くて半透明のゲル状物質がジャムだとは思いませんでした。データ不足故に、正しい認識が遅れたのですね。
同様に、“ チーズ”といってまず思い浮かぶのは、薄く切って、パンに挟んで食べる四角い固まりでした。記憶の蓄積量もまだまだ少ない時代です。それ以外に“チーズ”という言葉に合致するものといえば、銀紙に包まれた三角形かソーセージのような棒状のもので、いわゆるプロセスチーズと言われる固形タイプものだったのですね。一枚づつ包まれた薄く四角いチーズが、温められてととろけるさまに感動するのは、この時よりも後のことで、クリームチーズの存在など夢にも思わなかった頃のことです。
かじって食べるチーズと、柔らかそうなケーキとの接点は、見つかるはずもありませんね。
つまりは、当時のわたしにとってチーズケーキは、“得体のしれないもの”として興味をひかれる対象でした。
ただ、生クリームともフルーツとも無縁の“得体のしれないもの”は、ケーキとしての華にかけていた為、子供心に優先順位が低かったのも事実で、チーズケーキがショーケースから出てわたしの口に入るまでには、それから少し時間があいたような気がします。
不鮮明ながら、その頃、わたし自身が(ショートケーキよりも)チーズケーキを選んだという記憶はないので、チーズケーキの購入は、母の決断(?)だったと推察します。
間近に見たそれには、もちろん、お馴染みのチーズのカケラも見つけることはできませんでした。
ババロアとカステラの中間のような口当たりの生地は、チーズというよりもチーズ味のプディングという印象で、想像していたよりも甘く、(当たり前ですけど)しっかりとお菓子になっていたのが驚きでした。
ナイフで切る時にも結構力が必要なチーズを、どうやってか、こんなにしっとりフワフワに変身させるなんて、ケーキ屋さんはすごい!と感心したものです。
その時から随分経って、チーズケーキを焼く為に材料を揃えた時には、迷うことなくクリームチーズを用意しましたから、プロセスチーズが(ケーキ屋さんの秘伝で)チーズケーキに生まれ変わるという自己流解釈は、成長過程のどこかで修正されていたのですね。
ケーキ屋さんがすごかったのは、チーズを柔らかくしたことではなく、柔らかいチーズを知っていたことだった.....と、気がついた瞬間は、残念ながら記憶にありません。
余談ですが、先日、母に、母にとっての初チーズケーキがいつ頃だったかを尋ねてみました。
**の店でよく買っていた、という母の記憶は、わたしが既に二十歳を過ぎていた頃のもので、札幌の狸小路以前に遡る試みは、見事に打ち砕かれました。
ただ、どうやら、‘狸小路’以前には、母にとってもチーズケーキは“お馴染み”のカテゴリーではなかったようです。
もしかしたら、日本におけるチーズケーキ初登場から、それほどの時をおかずに、わたしはチーズケーキに出会ったのかもしれませんね。
02/05/09
手抜き、に見えたレア・チーズケーキ
杏ジャムが塗られたふんわりチーズケーキが定番化して、最初の衝撃も感動も薄れかけた頃に登場したのが、レアチーズケーキでした。
もともとチーズケーキがヒットしたのは、控えめな甘さがそれまでのケーキと一線を画したことが大きな要因だったと思うのですが、ただ当時のチーズケーキには店鋪差というものがあまり無かったように記憶しています。
あっち(の店)よりもこっちの方がおいしいとか、酸っぱ過ぎるとか、さっぱりしていているとかくどいとか....何かと比較するようになったのはレアタイプが登場してからのことですね。
ただ、子供心にオーブンに対して強い憧れを抱いていたわたしにとって、焼かないケーキは、受け入れがたいものがありました。
混ぜて、冷蔵庫に入れるだけなんて...プリンの素を使うプリンのごとき手抜きに思えたのです。幾分偏見がありますけど、これはつまり“ママしか作れない本物のプリンと、あたしでも簡単にできる***のプリン”の間に横たわるグレードの壁のようなものだったのです。
( 母はこの壁に頓着せず、そのうちにプリンの素の愛用者になりましたけど、児童から学生と呼ばれる年令になってから今日まで、わたしはプリンは熱を加えて作ることにこだわっています。)
レアチーズケーキが新商品としてショーケースの中に並べられだした頃、わたしはプリンと同じ基準を持ってケーキを見ていましたから、母達には好評だったこのケーキを、下層グループにランク付けしていたと思います。それまでのケーキとは違う食感に加えて、酸味が効いたものが多かったので“おこさま口”には合わなかったせいもあったのでしょうね。
家庭用のレシピではグラスに入れて固めたり、ビスケットを砕いたものを底に敷き詰めたりと、手軽さをアピールしていましたから、なおのこと“一人前のケーキ”と認定する気にはなれなかったのかもしれません。
でも、用いる素材と配合によって、千差万別の表情を見せるレアチーズケーキはオリジナリティーを具現するには最適のアイテムかもしれませんね。おいしいものとそうでもないもの...好みがわかれやすいのもこのタイプだと思います。
気がつけば、(ちゃんと)オーブンで焼いたスポンジやタルト生地が使われていたり、生クリームで飾り付けされていたりと、手を抜かない仕上がりの物が多くなりました。
03/08/27 
モロゾフのフルーツソース
イメージは今現在も販売されている(はず)、モロゾフの白いチーズケーキ、ソースが別添えになった個別パック仕様の長期保存が可能な便利ものです。ソースが無ければ、地味な一品...ですね。
もっとも、最近では、この種の商品にソースがついているのも当たり前で、そのソース自体にも趣向がこらされるようになってきましたから、モロゾフの白いチーズケーキは(ソース付きでも)インパクトは弱いかもしれませんね。我家でも、自分で購入しなくなって、ずいぶん経つ気がします。
でも、初めてソースをかけて食べたレアチーズケーキはモロゾフの、だったのですね〜。
簡易アルミ型に入れられて販売されていたレアチーズケーキ自体が、他店の物と比べて酸味が控え目、ミルキーな仕上がりで、いわゆる“おこさま口”にも対応しうる風味でした。(過去形なのは、最近購入していないからです。いまでも変わっていないとは思います。)
とはいえ、やはり華にかけるのがレアチーズケーキの宿命とでも言いましょうか、同じアルミ型入りで、デコレーション無しの形も同様ながら、(せめて)焼いた感じの伝わるクリームチーズケーキの方を、わたしは好んでいた記憶があります。
それが覆される切っ掛けとなったのが、 専用のフルーツソースなのでした。
記憶が正しければ、ソーズは手のひらほどの高さの小ぶりの白いビン入りで、2種か3種....ブリーベリーにストロベリー、オレンジもあったような気がします。 もしかしたら、わたしにとっての初ブルベリー味は、モロゾフのソースだったかも....という話はともかく、この専用ソースの登場で、モロゾフのレアチーズケーキは、しばらくの間、わたしの一番のお気に入りになりました。数百円のホール一つで、いろんな味が楽しめる利点はもちろん、鮮やかな色のソースが白いケーキの側面からお皿の受けに広がる様に、結構刺激を受けたものです。
いろんな店で、チーズケーキの微妙な生地の質感に食指が動くようになるのは、 これよりもう少し後の話。ソース使いで視覚を満足させられたモロゾフのケーキをじっくり、たっぷり味わってからのことでした。
07/05/11 
感動の味、ひとつ目【大阪、中ノ島ロイヤルホテル(現、リーガロイヤル)】
お待ちください。

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