画面のレイアウトが乱れる方へ

 

 ローマ、フィレンツェ、ヴェニスを12日間の急ぎ足で見て参りました。
観光名所やお勧めスポットなどは、美しい写真と共に多くのガイドブックで詳しい紹介を見ることができますから、ココで観光ガイド的な旅行記を展開することには、あまり意味を見出せません。
 たとえば、コロッセオの迫力を説明して、それを見たわたしの感想を伝えることよりも、駅前で剣士の衣装を付けたおじさんと一緒に写真を撮ってから、請求された金額が果たして妥当なものだったのかどうか、いつまでも悩んだというようなエピソードを中心に進めていくつもりです。         
                           01/01/16  




   

出発

 出発の朝は、不本意な夕食の遠因となった前日の悪天候が嘘のような青空に恵まれました。

 朝食は、昨今のスタンダードになりつつある和洋のビュッフェで....朝粥定食などという手間のかかるものはありませんでした。関空の日航ホテルには用意されていたので、期待していたのですが、同系列、グループのホテルだからといって同等のグレートを望んではいけないことを今回は学びました。お値段の違いで、悟るべきでしたね。
 ただ、朝食のお供は“今、ここにいる喜び”というわけで、 安心と満足感に浸っての良い時間を過ごしました。

 アリタリアの出発時間まではかなり余裕があったので、のんびりと始まった朝でした。
 ロビーの隅には、JALのチェックインカウンターがオープンしていて、大きな荷物を持った人たちがすでに手続きを始めていました。昨晩は、とにかく“食べること”に気を取られていて、それどころじゃなかったものの、今回このホテルを選んだ決め手は、このサービスに期待してのこと。
 ルームサービスがなかったことも、朝粥がなかったことも、すでに終わってしまった話、ホテルでの搭乗手続きのメリットと引き換えに全て水に流しましょう。めでたし、めでたしと思っていたら、主人が「でも、あれはJALのカウンターだ...。」と。わたしたちはアリタリアのゲスト、なんですね。共同運行便なんだから、仲間なんだから...いいじゃないと主張するわたしに、空港では(JALではなく)アリタリアのカウンターで手続きするしなあ、という主人の慎重論が襲いかかりました。トランクを持って並んだものの、「お客さま...こちらのチケットはアリタリアのカウンターでの受け付けになります。」などと言われたらシャレになりません。
 打ちのめされるとしたら早い方がまし、ということで、スタッフに確認を取りました。
 大丈夫でした。一旦せき止めかけられたマイナスポイントはとりあえず水に流すことができました。

 カウンターの“窓口”はわずかに3つです。利用客数を考えればそれなりに十分なのでしょうけど、並ぶ必要がないというほどではありません。ラインを誘導するロープも張られていました。でも、空港と違って、フロアの人口密度が少ない上に音の氾濫がないので、並んで待つことはあまり苦にはなりませんでした。

 順番を待つ間に、キャリーに括り付けられたピカチュウとその仲間を見かけました。
 ハンドルを収納できるタイプの、もうひとまわり小さかったら機内に持ち込みもできそうなキャリーバッグの上に黄色い固まり結わえられているので、何かと思ったら、食い込んだ紐で変型したピカチュウだったのです。その横に並んだキャリーにも、名前が出てこないピカチュウの仲間が張り付け状態になっていました。持ち主らしきアメリカ人(推定)のふたりの子供は、特にピカチュウたちが好き!という素振りは見せませんでしたけど...それでも、あんなになっても(かなりボロボロでした)旅の間も放れていられないんだねと興味深く見ていたら、もうひとつポケモン仲間が張り付いたキャリーが人壁の向こうに現れました。大きめのキャリーの持ち主は、子供たちのおかあさん!
 これは、なかなか印象に残る光景でした。それというのも、おかあさんのキャリーに括り付けられているポケモンも、相当に使い込んで(可愛がってと言うべきでしょうか....?)いて、ぬいぐるみといえども瀕死状態なのでした。小さい子供たちならともかく、成人が持ち歩くと人目をひかずにいられないくらいに大きくてクタクタのぬいぐるみです。大胆な扱い方だけど(主人は、せめて頭を上にしてやってくれ...とつぶやいてました。)理性よりも感情が優先した結果に見えました。
 ところが、ピカチュウ以下3匹とも、キャリーごと預けられてしまったので、わたしたちはびっくりしました。いびつな形に張り付けられたままです。そのまま貨物室に連行されたら.....他の荷物に挟まれて擦られて押さえ付けられて、どんな運命をたどるのやら...。それでも、連れ歩くのは、やはり愛着があるからなんでしょうか...。

 一方、愛着はあるものの、ピカチュウたちとは相反して、人目に触れることなく飛行機の客室に置かれてイタリアに旅立ったのが、主人のお気に入り“ボンズのセーター”でした。

 天気が良い上に空港内は暖房が効いていて、コートはもちろん、主人は早々とセーターも脱いでしまってたのですけど、機内持ち込みバッグに無理矢理しまわれたそのセーターと同じデザインのものを着たおばちゃん(中年の女性と書くべきかもしれませんが、当日のわたしたちの言葉にならいます。)を搭乗待ち合い室で見かけてしまったのです。
 バーバリーのマフラーやシャツなら驚きませんが、なんといってもこのセーターは古いパンフレット(値段、品番の記載はなく、店鋪紹介を主な目的としたもの)でモデルが着ていたデザインをリクエストして編んでもらったという曰く付きのものなの(ボンズのセータ・メールオーダー編参照)ですから、目を疑いたくなりました。
 世界にひとつの一点ものとは言いませんけど、よりによって日本で、同じ日に同じ飛行機で同じ場所に旅立とうという他人が着ているとは....。しかもボンズのセーターは目立つのです。こういう場合、気が付いた方が“負け”ですね。主人はセータを着るチャンスを逃しました。
「おばちゃんが、個人輸入をしているとは思えないから、オーストラリアで買って来んだろうな。」
「 でも、あの柄は今はないはずだから..3年くらい前に行ったのかな?」
「ウチのオーダーの残りが3枚あるんだよね。おばちゃんが去年買ったんだったら、そのうちの1枚だよね。」
「ウチの残りもんだ!」

 負け惜しみ(?)の想像力が逞しくなった、出発の日でした。

                                          02/12/10 


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