画面のレイアウトが乱れる方へ
ローマ、フィレンツェ、ヴェニスを12日間の急ぎ足で見て参りました。
観光名所やお勧めスポットなどは、美しい写真と共に多くのガイドブックで詳しい紹介を見ることができますから、ココで観光ガイド的な旅行記を展開することには、あまり意味を見出せません。
 たとえば、コロッセオの迫力を説明して、それを見たわたしの感想を伝えることよりも、駅前で剣士の衣装を付けたおじさんと一緒に写真を撮ってから、請求された金額が果たして妥当なものだったのかどうか、いつまでも悩んだというようなエピソードを中心に進めていくつもりです。         
                           01/01/16  

 

   

千歳空港、一時閉鎖

 
イタリア旅行の日程を立て始めた当初、わたしたちは関西空港発着を念頭に置いていました。
 千歳-関空ならば、日に数便飛んでいて、前後泊するにしても無駄の少ない時間帯を選択できますし、ホテルも空港に直結しています。難波までは30分ほどで、その中間、堺市には主人の実家があるという位置関係ですから、何かと便利..。それで、関空発の便がある28日に出発する日程をたてたのに、アリタリアのフライトスケジュールが変わってしまって、28日は成田発しかなくなってしまいました。日程を延ばす(休暇の)余裕がない我が家としては、関空発にこだわると、最初のロ−マ4泊の予定を3泊にしなくてはなりません。ところが、ローマのホテルは3泊すると4泊めは無料という願ってもないプランを見つけだして予約しているわけですから、4日目を泊まらずにいられようか、というようなものです。結局、成田発、関空着のスケジュールに落ち着きました。
 落ち着かないのが、その、成田到着まで、です。
 千歳-成田便は1日に1本だけ! アリタリアの予約と一緒に国内の移動便もHISでお願いしたので、早々と席は確保できましたが、飛行機が無事に飛んでくれなくては...。
 
 ひと事ではないと思って見るから、余計に目につくのか、悪天候等で千歳空港のフライトの乱れが目立った2000年の12月、週間天気予報が発表されてから1日たりとも欠かすことなく予報をチェックしていた27日の、当日の朝は上々といっていい幕開けでした。家を出る直前に掲示板に残した書き込みでは、その日に北海道スキーの為に千歳に飛んでくる予定の方に「今日は飛行機は大丈夫みたいです。」と言った記憶があります。
 時折、雪がちらついていたものの、ほぼ無風状態で、見晴しは良好でした。自宅から空港に向かうまでは....。
 なにしろ、空港が見えてきた時にタクシーの運転手さんの「これだけ見通しがよけりゃ、今日は大丈夫だ〜!」(前日は大変だったらしい...。)という御墨付きまでいただいたのでした。
 
 ところが、出発ロビーに上がってみると、雰囲気がおかしい...。
 案内の電光掲示板には天候見合わせ中の文字が幅をきかせているではありませんか。何を見合わせる必要があるの?という気分でしたが、自分たちの出発時刻までにものすごく余裕があったわたしたちは、4階のカード会社の待ち合い室で時間を潰すことにしました。
  成田空港や成田線の機材にトラブルが発生した場合には、近くの空港に降りる他の便に振り替えてもらうしかありませんけど、例えば、成田が悪天候なら羽田も危うい可能性がありますから、下手をすれば名古屋や大坂空港に飛ぶことになるかもしれません。こうしたケースも視野に入れて、15時前のフライトだというのに10時過ぎには空港入りしていたわたしたちは、成田行きが欠航か、おそらく欠航という話にならない限りは、待つしかありません。
 ただ、4階の待ち合い室に入った時には見渡せていた窓の向こうの景色が、30分経った頃には雪に遮られて何も見えなくなりました。風がないので、荒れているという感じではないのですが、雪の量が.....お芝居の舞台で、雪に見立てる紙吹雪きを散らそうとして、過ってザルごとひっくり返した為に肝心の役者も見えないくらいの大雪になっちゃったというような降りかただったんです。
 待ち合い室から出発ロビーに戻ってみると、いっそう人が増えたロビーには、滑走路が除雪の為に一時閉鎖中というアナウンスが繰り返されていました。掲示板の表示されている多くの便は搭乗手続き見合わせ中! 1日にわずか1本しかない成田便も例にもれず、でした。 それでも、滑走路の除雪が済んで安全確認ができ次第、順次手続きを再会予定ということで、遅れは出そうだけれど、この日の内に成田に到着すればいいわたしたちにとっては、まだ顔が引きつるほどの深刻さはありません。しかも、「お昼ご飯食べようか..。」と動き出した時に、電光掲示板の成田行きの横に搭乗手続き中の案内がでたので、すかさずチェック・イン。時間と共に、気分にも余裕が生まれました。
 でも、このとき、チェック・インカウンターに取り付いた主人は、スタッフが「手続きは見合わせ中なので... 。」と言うところを掲示板には手続き中となっていると主張してチェック・インを済ませたのでした。「かなりの遅れがでると思いますので、案内を御覧になってお待ち下さい。」というアドヴァイスもいただきました。それでも、手続きが始まったということは前進には違いありません。便数の多い羽田行きには機材の確保ができない為に欠航が決まる便もでてきましたが、欠航便に搭乗予定のゲストはそれより前の便(遅れているので、出発は欠航便と同じくらいの時間
に振り替えられて飛び立って行きました。間引き運航ながら、飛行機が離発着しているというのは、安心のもとでした。
  それなのに...食事をしている間に、掲示板の様子は一変! 成田行きも含めて、全ての便が調整中になってしまいました。風がない分、雪雲が停滞しているのでしょうか。小降りになったかと思った後には、再びザルがひっくり返った紙吹雪の降り方....。2本ある滑走路を、除雪をしながら何とか交互に使っていたのが、それすら間に合わずに1時的に全面閉鎖、です。アナウンスでは、相変わらず、除雪が完了して安全審査(どこかの部署がやるらしい。)の結果待ちと言う話。でも、雪は降る降る...。こんなことなら、さっき飛んで行った羽田行きに乗って行った方がよかったかも、と感じたのはわたしたちだけではなかったかもしれません。なにしろ、空席はあったんですから。
 
 ただ、出発予定時刻が次々と変更になる中で、成田便は定刻、14時45分のまま動きません。
 わたしたちは、14時過ぎには手荷物チェックを受けて、搭乗口に向かいましたが、その後、出発時刻が15時40分に変更になりました。覚悟していたほどの遅れではなかったので、ほっと一息ついたものの、時折、ボーディングブリッジの向こうに停まっている機体すら見えなくなる雪の様子に、じわじわと不安が....。
 搭乗待ち合い室でわたしたちの回りに座っていたのは、香港からの観光客数十名(あとで分かりましたが、この団体さんは相当の大所帯の一部でした。)で、当初は仲間内でビデオを撮ったりして、元気なものでした。
 彼等の足下にある北海道土産を見て、思ってしまいました。...いいなあ、帰りの人は気楽で。 
 掲示板には成田便と上下になって東京(羽田)行きも表示されていましたが、出発予定が成田の前だった東京便は変更が相次ぎました。15時が16時に、その次には17時に、と言う具合で待ち時間は長くなる一方!
 それでも、成田便は15時40分のままだったので、数ある東京便よりも成田便を優先しているのだと、解釈していました。
 何か変だ、とイヤな予感がしたのは再び閉鎖された滑走路の安全点検の結果が15時50分に発表されるという案内がながれたのにもかかわらず、成田便、15時40分発の表示が変わらなかったから...。
 搭乗口に待機しているスタッフに問い合わせようと近付くゲストが急に増えました。

 「50分の結果次第では、まだ、遅れが出るかと...。」というのがスタッフの説明。
 その日の夜出発の国際線に乗り継ぐ予定の方も少なくなかったようですが、「本日のお乗り継ぎは無理かと思います。」というお答え。天気ばかりはどうにもなりませんが、日本航空では成田便の予約客を成田へ運ぶところまでは世話をするけど、その後のことはゲスト自身で、という対応です。
 翌日出発のわたしたちとしては、とにかく夜中になっても成田に飛べれば、文句は言いませんという気分でしたが、一抹の疑念を抱きながらスタッフに尋ねました。

「機材の確保は、できているんですよね?」
「いえ、それが、調整中です。」

 この瞬間のショックは忘れられません。 つまり、15時40分に出発予定だったものの、滑走路の状況が悪くなって、足止め状態になっていると思ってたら、乗るべき飛行機も未定というのです。
 じゃ、15時40分という時間はなんなのか、ということになりますが、その予定で、機材は調整していたものの、使用予定の飛行機が千歳空港に着陸できずに引き返した為に白紙戻ってしまったと言うのですね。
 それは、いつわかったのか、本気で飛ばすつもりはあるのか、さっき離陸した飛行機があるじゃないか、と...怒る人や問いただす人が続出しました。
 どこへ向かう人も、気持ちは同じだと思いますが、特に成田便のゲストの大半は成田が最終目的地ではありませんから、ひときわ緊迫感があったような気がします。まわりの話声からは、成田はこういう時、羽田よりも欠航率が高いというイヤな噂もチラホラ...。
  最悪の場合が現実味を帯びてきたので、わたしたちも、HISに電話をかけました。、ローマへの出発を1日延ばすことが可能なのかどうか...。払い戻しの上、空きがあれば、新たに予約という手順になるそうですが、ただ、ビジネスクラスとはいっても正規料金ではない身のつらさで、空港から電話を通じてなんとかなるものではありません。

 東京へはもう何本か飛んでるんだから、機材のひとつをウチに回してとゴネたくなる思いで待つこと2時間あまり...。外はすでに暗闇の18時過ぎだったでしょうか。
 成田便の機材に使用予定の飛行機がどこかの空港を飛び立ったとかで、それが到着後、機内整備を終える8時頃に搭乗案内ができる予定だというアナウンスが流れました。 ただし、その飛行機が着陸できずに引き返す可能性もあるというおまけ付き。一喜一憂とは、このことですね。
 ただ、その飛行機さえ無事に到着すれば、(その後にまた、滑走路の除雪等の必要が生じたりして)どんなに遅くなっても飛行機は飛ばしてくれるらしい...。主人がそんな情報を得てきた頃に、成田から日本航空で香港に向かう予定のゲストにむかってのアナウンスがありました。予定通りに成田行きの機材が確保された時点で、香港行き最終便は成田で千歳からの乗り継ぎ客の到着を待つというのです。
 さすがに疲れた様子だった香港からの観光客にアナウンスの内容を説明すると、パワーの充電が完了したかのごとく元気になりました。

 しばらくすると、誘導灯に照らし出されて、着陸しようとする飛行機が目に入りました。
 雪は小降り。機体がそのまま高度を下げて、無事に千歳空港に到着した瞬間、出発ロビーのゲストから拍手がわきました。大雪の峠はいつのまにか越えたようで、その後は飛行機の到着が相次ぎました。あと30分、あと20分......自分たちが使う機材が見えるまでの時間の長いこと! アナウンスで、機材となる飛行機の到着を告げられた時には拍手とともに歓声も上がりました。

 実際に飛行機が千歳空港を離陸したのは20時を随分回っていたと思います。数人のゲストが最後まであらわれず、キャンセルなのかどうかの確認にも手間取っていました。
 成田に着いたわたしたちは、先に送っていたトランクを受け取る為に(16時頃に受け取り予定としていたので、電話をかけて遅くなることは伝えておきました。)出発ロビーに向かいましたが、その間にも香港行きに乗り継ぐゲストを促すスタッフが、行く手行く手で声を上げていました。

「香港乗り継ぎのお客様ですか?」
「あ。違います。トランクを受け取るだけ...。」

「香港乗り継ぎはこちらです〜。」
「トランクの受け取りなんです。」
「香港、行かれますね?」
「いえ、行きません。」

「香港行き最終便がお待ちしてます。」
「今日は、トランクを受け取るだけなので...。」

 日本航空の香港行き以外に出発する便がない以上、出発ロビーを歩いているのは乗り継ぎ客という認識なのでしょう。
急げ、急げ、の雰囲気で、トランクを受け取ったあと双方の実家に成田到着の電話を入れている最中にも、急かすスタッフに声をかけられました。
 そして、出発ロビーに紛れ込んでいたわたしたちは、この日、日本航空を利用して千歳から成田経由で香港に向かうゲストがいかに多かったのかを知りました。
 香港からの団体さんがいなければ、もっと早い段階で成田便は欠航になっていたに違いないと主人は分析しています。

 ともあれ、夜の10時過ぎ、わたしたちは成田の日航ホテルに向かうことになりました。

                                         01/07/19  
 

 
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