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 10数年振りの再訪を切っ掛けに、2010年のグリーンシーズンもルスツでゴルフを楽しんで参りました。
 今はなき...というべき旧トマムのコンセプトに夢中になったわたしの価値感は変わらずですが、その旧トマムで何よりも評価してきた(オールドファンが言うところの)トマムスピリッツは、場所ではなく人によって受け継がれていくのだということを、昨年来のルスツリゾートで実感させられています。
 旧トマムに変わる地としての妥協点が見つかることを期待して訪れてから1年、トマムのような快適さの中で、今後は『ルスツらしさ』をも楽しめる時期が来たように思います。

 



     
レストランと食事

ベルビュー (サウスウィング 4F)

 グリーンシーズンのルスツの公式HPで紹介されているベルビューの料理は...多分冬期とかわっていません。あくまでも,参考イメージなんですね。
 具体的にコースの内容(料理名)も記載されていた冬期とちがって、夏場は少々情報不足。ま、それ故に昨年は、(ルスツ行きを決める前に)レストラン状況を問い合わせて、定番のコースメニューを送付してもらったりもしたわけですが、メニューを見て利用するとかしないとかを考えるのではなく、利用することに迷いはなくなった今回は、定番のメニューを確認せずに、料理の調整をお願いしました。

 冬期の内容であれば、原則調整の必要もないところですが、そして9月の連休や冬期の利用時は店の雰囲気通りの営業形態だったのですっかり忘れていましたが、.....実はば、1年前の同じような時期(夏休み前の平日)、ベルビューはテーブルバイキングでの営業だったのです。
 店の設えとサービススタッフのスキルを持ってして、もったいない気がしてなりませんでしたけど、それも需要と供給のバランスを取った結果かと......何しろ、ご飯がおいしければ...多くは望まずという『覚悟』の初利用でしたから、残念な部分は気にしないで過ごしたのでした。ただ、今回も同様だったら、フォアグラのポアレはない...かもしれません。それに、やっぱり,ベルビューのような(せっかくの良い雰囲気のある)店では落ち着いて食事がしたいので、昨年来わたしたちが頂いた量、品数を基準に、料理はコースで、フォアグラのポアレのリクエスト以外は、お任せしました。
 これまでの定番リクエストともいうべきスープの食材や口当り、メインの素材についても、リクエストは見合わせました。
 根菜素材のサラサラ食感の軽い仕上がりの...つまり我家好みのスープは、ベルビューでも頂けることが(昨年の利用で)わかりましたし、希望すればメインに和牛の料理を期待することも出来るという安心感から、“今までと同じ感じ”に固執しなくてもいっか..という余裕がうまれたんでしょうね。 そもそも、どの料理もおいしかったわけで、お任せしたら好みと大きく違ったなどというリスクを考える必要もなくなりましたしね。

 ですから、送付されてきたコースの中に『冷たいコンソメとカリフラワーのムース タラバ蟹添え』を見て、ほんっとにひさしぶりのクリームスープではないメニューに対して、少なからずときめきました。興味と期待に起因するときめきです。
 そのスープが上のイメージ。
 ジュレ状のコンソメと淡白なムースのコンビネーションは、口に優しく、目に艶やかで、あたりまえですが、クリームスープとは全く異なる風味を堪能できました。タラバ蟹の赤に対して、ジュレの中に透けて見える緑色は,あるのと無いのとでは大違いの重要アイテムなのですけど、正体は判らず終い。カリフラワーの茎は緑がかっていたかなとか、キュウリを、中心を避けてスライスすればこんな感じになるかも...とか、一応分析は試みましたが、ルスツで頂く野菜はね、良い意味で意外性があって、※※だよね?と確認したくなる場合があるんですよね。
 右イメージの『地元北欧農園の各種根菜と帆立貝のマリネ 海胆とオレンジ風味のビネグレット』の野菜は「(味が)濃い」「あまい」の単語で表現したくなるものばかりでした。日常でも,野菜の選択肢はたくさんあって、様々なこだわりが表示されるようになりましたけど、でも倍の金額をはらったからといって必ずしも違いハッキリとは感じられないのが正直なところなのに、この一皿に乗った野菜は、違いすぎてビックリしました。野菜がおいしいのは今回に限ったことではないんですけど、野菜メインの前菜と言うこともあってか、ひときわ!でした。

 赤紫のビーツに驚かれるゲストも多い様子ですが、わたしたちのビックリナンバー1は人参でした。見た目も食感も生なのに、じんわりと、しかもしっかり甘いんです。特有の、正直わたしは好みではないにおいも気になりません。普通の人参じゃないのかもとの疑いを抱いて、確認したくらいです。
 契約農家の、採れたての、普通の人参(特殊な人種ではない)とのことで、採れたての威力に感心するばかりでした。....が、やや時間を置いて後、シェフのひと工夫がほどこされていたことが分かりました。「実は...」と、シェフから聞き出してきました!と言う感じのスタッフの話し振りを尊重すれば、ここでわたしがひと工夫の解説をするのは控えるべき....ですね。
 興味のある方は、ベルビューで、グラッセでもないのに甘みが強くて食べやすい人参が出て来た時に、感動と疑問をスタッフに投げかけてみてくださいね。シェフのひと工夫がもどってくるかもしれません。
 スープと前後しましたが、上イメージが、二品目の『厚切りフォアグラのポアレ 新玉ネギのピューレとグリーンアスパラガス ポルト種風味』。今回のリクエストはフォアグラのポアレとだけでしたが、初めての利用時にお願いした細かなことも活かされて、大満足の一品でした。札幌黄を思い起こさせられるような玉ネギの甘み(余談ながら、オニオングラタンスープをリクエストしたくなりました。おいしいに違いないと思うのよね。)と濃厚なソースの相性もよかったです。

 そして、魚料理は『カナダ産オマール海老のミニュートと夏野菜の人皿 香草入りバターソースとビェルシェソース』、右イメージが調理される前と後....。店内の水槽から取り上げられた食材を、厨房に運ぶ前に、スタッフが見せに来てくれました。実際には(イメージよりも)もう少し青みがかったオマール海老が食欲をそそる変貌を遂げて再登場!
 色変わりも、大きさも見事でした。(一匹が二人分)
 余談ですが、サービスについてくれたスタッフが着用していたのは、洞爺湖サミットの時の制服だそうです。ポケットや襟に黒のトリミングがほどこされたミディアムグレーの上着は、なかなかおしゃれでした。
 
 口直しのシャーベットを挟んで、メインの肉料理は、『l国産牛フィレ肉のポアレ グリーンピースの入ったポテトのパルマンティエ ブロッコリーと舞茸のフライ  ピアントソース』か『フランスシャラン産骨つき鴨胸肉のロティジュニバベリーとマスタード入りソースと夏野菜』の二品からの選択でした。骨をとりのぞいて、食べ易い状態でのサービスも可能というので、鴨胸肉を選びました。本来フランス料理に適しているかどうかは別として、牛肉なら和牛の指定をつけたいところでしたし....それよりもわたしに取っては鴨の方が非日常的でしたから、お任せしたからこそ得ることので来た機会を活かさなくては,もったいないですものね。
 柔らかさと噛み応えが同居した鴨肉淡い桜色に染まって、ソースとも良く調和していました。
 メインと一緒に生野菜のサラダが供されるのは、ベルビュースタイルのようで、生野菜(葉っぱ類)が苦手な人は、要相談かもしれません。案外野菜の見直す切っ掛けになる可能性もおおきいいので、がんばってみるのも一案です。

 メインの選択のタイミングは、当日、席についてからでしたから、その日にベルビューを利用したゲストが見たメニューに(単品かコースかに)同様の料理が用意されていたかと考えます。
 創作フレンチ、北海道キュイジーヌ等の文言にいつわりなく、この日のベルビューは,1年前のように中央にサラダ,ドリンクバーの設置もなく、100%テーブルサービスでの営業でした。時期によってはまたビュッフェスタイルを取り入れることがあるのかもしれませんが、基本、フレンチレストランと捉えての利用を検討するのが良いかと思います。

 デザートは『パイナップルのスープに豆乳のアイスクリーム 季節のフルーツ添え』(右下イメージ)
 え〜と、ですね、我家のもう一度食べたいスープのナンバー1は、メロンのクリームスープでして、遥か昔に、京都のフレンチレストランで,デザートではなくスープとして出されたものなんですが、シュースとは全く違って、でもしっかりとメロン風味の液体で、...今となってはもう味も思い出せませんが、おいしかったんですよね。そのメロンのスープ以来のフルーツ素材のスープ(栗のスープは別として)ということで、パイナップルのスープは、とても楽しみでした。

 ただ、スープは、さっぱりとしたアイスクリームに、甘みが乗った果物、そして“敷地内のちょっとその辺で採ってきた” という、キュウウ〜と酸っぱい野苺をまとめる役割だったかな...という感じで、それ自体は控えめに敷き詰められていました。(イメージ、アイスとさくらんぼの間に見える黄色いのがスープ。)
 小さいグラスでスープだけをククッと飲んでみたかった....。
 
 ベルビューにはドレスコードはありませんし、予約不要(受け付けない)というシステム故、初めてでも、ルスツに来てみてからの思いつきでも、利用はし易いかと考えます。でも、利用のし易さ(価格設定も含めて)がレベルと連動しているわけではありません。備えているモノを正当に評価すれば、もう少し敷居を高くしても良さそうなものですが、利用者に配慮して“バリアフリー”でがんばっているという印象です。
 本来あるべき敷居を見失わず、ありがたさ(利用のし易さ)に感謝しましょうね。

                                           10/08/18 

 
 2010年グリーンシーズン、ベルビュー2回目の利用は8月下旬。

 北海道では秋風を感じる季節に突入ということで....お任せで頂いたコースメニューには、“きのこ”や“秋の野菜”の単語が目立ちました。

 この日の第一の皿はフォアグラと『鴨肉のポアレ 桃で造ったソース ポテトのピューレ添え』でした。おかげさまで、焼き加減やソースの傾向など細かなリクエストはもう必要がなくなった“定番”のひと皿です。
 2番手が上のイメージの冷前菜、『新鮮帆立貝と生海胆にアンティーブとささげのブレゼ キャビア飾り』角度によっては7月の前菜と似てみえますが、上からの目線で盛りつけの妙がよく判ります。惜しげ無く飾られたキャビアはもちろん、海胆が放つ艶やかなオレンジ色も贅沢なコンビネーションです。
 海胆の甘みとキャビアの塩味、そして、帆立貝の旨味が融合したおいしさが完成するのは口の中...。1枚(1セット)目で、うわあ、こんな感じ(の味)になるんだと感激して、2枚目で確認して、3枚目4枚目では期待を膨らませ、5枚目で余韻に浸る心準備をするといわけで、こんなに沢山でなくても良いのに...という言葉は出てきませんでした。本来の適正は(主人はともかくわたしの場合は)3枚程なのでしょうけど、5枚(もある)の余裕が嬉しかったです。

 フォアグラ、キャビアに続いてスープではトリュフが登場しました!
『プチレギュームとトリュフのコンソメスープ パい包みきのこ風』の外見と中味が右のイメージです。お任せした結果の、温かいコンソメスープは具沢山で、パイ生地も合わせると結構ボリュームがありましたが、クリアなコンソメは具の持ち味に対しても穏やかな干渉にとどまっていて、ボリュームのわりに重さはありません。バターが香るようなパイ生地も全部浮き実に変えて完食しました。
 パイ生地を浸すスープには、生地の甘みも加わってコクが増す感じでした。いろんな味が楽しめる一品でした。

 魚料理の素材はオーソドックスに白身でしたが、料理名は鮮度をアピールする形容詞つきで『豊浦漁港直送の白身魚のポアレ ポルチーニ入りリゾットとトマト添え』。
 
 ふっくらとした白身の食感にインパクトを与える皮の香ばしさは、プロの作る魚料理!とでもいいましょうか。パリンとした焦げ目ではなく、カリッという、そこだけ揚げたような食感をできるだけお伝えしたくて、一部をアップにしてみました。
 爽やかな酸味のトマトも付け合せとしては優等生でしたが、リゾットが添え物だったのは、惜しい...というか、もったいないと思わせられるほどおいしかったです。主人も印象に残ったのか、グリーンシーズン(我家の利用時)にはクローズのイタリアンレストランへの興味を強くしたようでした。
 確かに、叶うなら単体で頂いてみたいリゾットです。

 ところで、今回のメインは『仔羊背肉のロティ 秋の野菜のラタトゥイユ 森の薫りきのこつけあわせ』でした。
 
 素材のリクエストをせずにおまかせすると、意外に牛肉ではない素材が提案されます。
 フレンチなんですから、あたりまえといえばあたりまえかもしれませんね。とはいえ、フランスよりも日本で食べる料理の方がずっとおいしいと感じる(仏国のご飯がまずいと言ってるわけではありません。)わたしは少し悩みました。和牛を...とリクエストをすることが多かったのも、メインで外さないためには馴染んだ素材の方が無難だからというい自衛策のようなもので、鴨はともかく羊はねぇ、フランス料理ではおなじみのでも、我家にとってはなじみの薄い食材です。(ジンギスカンでさえもう長いこと食べていない....。)しかも、記憶にある部分では、少々塩味が強くて.....なるほど...好きとは言えない料理だわと思って食べたのが最後....一昔以上も前のことです。

 提案を受けた時点で、メインを和牛に差し替えてもらうことも可能でしたが、ただ、主人が、普段食べない料理に興味を示しました。積極的にリクエストしたいとは思わなくても、作り手が提案してきた料理にはおいしいよという暗黙の了解がある...との解釈で、“羊さん”に再会するいい機会なんじゃないかと...。
 それで、塩気とソースの味が濃いのは苦手ということだけを伝えて、折角のチャンスを活かすことになりました。
 
 その判断が正解だったという証が、右側のイメージです。
 桜色のまん中に薄紅を差したような肉は小ぶりで、どことなく愛らしくも大変きれいな仔羊さんでした。片面に野菜を敷いて、少し高さを保った盛りつけも実際よりもコンパクトに見せる効果もあったのかもしれませんが、仔羊らしいサイズがいいですよね。柔らかくて、かつ、弾力のある肉は、食感に特色はあるものの,いわゆる“クセ”は気になりませんでした。消さなくちゃならない程のクセが現れる以前の仔羊だったのでしょうね。香草の強さもなく、ソースも自然な仕上がりで、おいしかったです。 

 脂身部分は...「ごめんなさい。」で残してしまいましたが、これは....挑戦してみたら意外と...だったのかもしれませんが、見た目で負けました。

 でも、そのおかげ(?)で、メニューには無かったタルトとケーキを味わう余力が出来ました。追加のひと皿に一瞬たじろぎましたし、スタッフの無理はしないようにとの気遣いも心底ありがたいと思ったのに...たべられちゃったんですね〜。つくづく、自覚しているよりも胃袋は逞しいんだと...。
「全体量は増やさずに。」というリクエストが、厨房で疑われることになりませんように。(いつも本音なの。)
 
 左のイメージが、シェフからのプレゼントとしていただいたもので、この後にフルーツ(赤肉メロン)、小菓子とコーヒーでフィニッシュでした。

 今回サービスについてくれたのは、冬期にもお世話になったスタッフでした。別の日の朝、オクトーバフェストを利用した時に先輩スタッフの仲介のもとにわたしたちのテーブルまでご機嫌伺いに来てくれた若いスタッフです。
(2010スキーシーズン スタッフ参照)その折りの予想に違わず、真摯なサービスには縁に恵まれた時間の分だけ親しみが増して、かわす言葉の量も増えました。
 
 料理がシェフの腕の見せ所なら、サービススタッフが担うのはシェフの作品を活かす店内環境。
 若いスタッフも確実に腕を上げて行くベルビューの雰囲気が悪いわけがありませんね!

                                     11/01/21 

 

 

 

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