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 2011年グリーンシーズン、国内事情を反映してか、ルスツでも一部施設の稼働や営業時間の
調整が行われています。ピーク時を覗けば、利用出来る施設が限られる(わたしが知る限りは、かつてない程)リスクは避けられない様子です。

 リスクを承知で混雑時を避けて滞在した5日間、『場所』が限られる状況と、選択肢の減少が必ずしも比例しないことを、改めて感じる機会となりました。人(スタッフ)の存在が快適さを強めるかのごときルスツでは、テーブルサービスのレストラン1カ所のみの営業でも、いつもどおりに楽しめました。
 



     

レストランと食事

 夏休み前の平日、我家が滞在した期間に営業(夕食)していたレストランは、3店でした。 おなじみ風花と、ビュッフェのアトリウム、そして、ホテルエリアにある居酒屋のかかし(かかし休業日は、風花が夕食営業後にパブタイム営業)というわけで、実質は、2店舗営業ですね....。大人の事情で個人客はタワーに“おまとめ”対応で、レストランもタワー側に集約されてました。昨年も一昨年も、スキーシーズンと違って、グリーンシーズンは営業するレストランが限られてましたけど、それでも2店舗というのは、最も少ないパターンではないかと考えます。ベルビュー(サウスウィング)の代わりボナペティの営業が期待できそうな感じもありましたが、平日は、あいにく...の結果となりました。

 夏のピークが過ぎた後も、同じような状況が繰り返される可能性が高いと推しますが、これはあくまで“場所”の話。風花では従来とおりに和食定番メニュー数コースとともに、本来はベルビューで提供されるであろう洋食数コースのメニューも用意されて、和食、洋食、ビュッフェに、居酒屋対応で単品メニューというバリエーションは維持されていますから、多少の連泊でも、“食事”に不自由はないかと思います。我家でも、アトリウム(ビュッフェ)利用を挟んで、3度の風花利用の内、2度目は、ベルビュー仕様のフレンチコースを頂きました。

 それでいいのか...と、トマム繋がりで長くおつきあいしてくださっている方は、おっしゃるでしょうね。
 一昔前、既に加森観光の運営となっていたサホロリゾートに宿泊した時、洋食メニューのすぐ横に和食メニューが並んでいるレストランと、どう見ても閉まっている様子の和食堂を何度か見比べ、オフ期は1カ所のレストランで他レストランのメニューも提供していると判って興ざめしたことを、わたしは覚えています。そこで造りや天婦羅を食べることも、食べられる(のを目にする)ことも、場違いなこと。和食堂が閉まってるなら和食はなくて良い、ない方がマシ。調和が損なわれた食環境では、料理の味も半減するとばかりに嘆いて、トマムでこんなことは行われないよう(運営母体が同じでしたからね。)強く願わずにはいられないと言ったものでした。

 わたしの価値観は、今も変わってはいません。
 複数レストランの席数が必要とされない時期に、レストランの営業調整が行われるなら、メニューの集約よりもレストランの日替わり営業が望ましいと思っています。1日1カ所営業でも、今日の店と明日の店が異なれば、滞在中の食のバリエーションに不足はありません。調和も保たれますしね。ただ、それは、通常連泊利用で、和、洋、中、どのカテゴリーにも食指が動く我家の場合の話。1泊して次の目的地に向うゲストもいれば、1週間連続でも食事は和食でなくちゃというゲストもいるかもしれない状況で、望ましいことも様々なパターンが在ることは理解出来ます。
 (レストランの)営業の有無は、いはば運営サイドの都合なわけで、その上で、ゲストのニーズに配慮すれば、場所は限定してでも、メニューに関して選択肢を減らさないというサービスも有りかなと思えるくらいに、わたしも大人になりました。もちろん、この物わかりの良さは、ルスツとの関わりが深まる中で培養されてきたように感じます。
 見ず知らずの喫煙者から発せられる紫煙の“害”には敏感なのに、友人、知人の喫煙には寛容になれる状態に似ているかもしれませんね。

 同じ物事に対して、評価に変化が生じるのは、“気持ち”が影響しているからだと思います。
 それ故、2011年グリーンシーズンのレストランレポートは、わたしのひいき目2割増しの可能性を否定できません。参考資料として利用なさる場合は、ご自身の価値感と(ルスツへの)好感度レベルを基に調整してご判断ください。

 


風花 (ルスツタワー) 洋食コース

 洋食コースを風花で頂くことが決まったのは、出発の4日前でした。

 サウスウィングのベルビューは営業しないかわりに、ベルビューのメニューをタワーのレストラン・ボナペティで提供予定、あるいは提供が可能と言うのが、客室の予約直後の情報で、これは、我家ではこれまで利用の機会がなかったボナペテイの店内への興味もあって、ノープロブレムの話でした。が...ルスツの公式レストラン情報で紹介されているように、その後に、今季のボナペティは主に和洋中ビュッフェレストランとして営業がきまり、1種間前の時点で、フォアグラのポアレを食べる場所は流動的だったのです。。
 ボナペティ自体も100%ビュッフェ営業と確定したわけでもなく、営業しない日や洋食レストランとして営業するケースもあり得るとのことで、頂く料理は決まってる(これまでベルビューで頂いたのと同様のコースです。)けど、場所が決まらないという状態ですね。考えられるケースの中での最善は、洋食コースはボナペティで頂くことだったので“いつ”ということは決めず、滞在期間にボナペティの洋食対応営業日があればその日に、なければ、洋食は2日目の夜にという希望を、事務スタッフに伝え、最終的な場所と内容はお任せしたところ、結果、滞在中にボナペティの営業は無いということで....和食、洋食ともに、風花でとの提案を受けました。

 仕方ないですね。ノープロブレムというわけではありませんけど、場所への不満にとらわれるよりも、望む料理が提供されることをありがたく思わなくちゃというのが、正直なところだったでしょうか。むしろ自社営業だからこそ出来る変則的対応...とまで言うと、さすがに、よくまあ昔のことを棚に上げてと、我ながら苦笑を禁じ得ませんが、(需要に応じての)供給をテナントの増減でまかなっていては出来ない対応であることは確かなわけで、(昔のことは)一旦棚に上げても良いじゃありませんか。


 ただ、前日に利用した風花は全くいつもの通りの和食堂の雰囲気で、洋食の気配がゼロだったので、多少の戸惑いが....。
 店の外に立てかけられたメニューボードには従来通りに風花の定番コースの案内のみで、ベルビューから持ってこられた洋食メニューが並ぶわけでもなく、店内ではナイフやフォークを使っているゲストを目にすることもなく(たまたま皆が和食コースを選んでたんですね。) 主人が、本当にここで(洋食コースを)食べていいのか?と疑問符をなげかけるので、スタッフに確認したくらいですが、幸い、当日の店内では洋食派、和食派のゲストが程よく混在して、違和感は最小限の状態で臨めました。
 
 案内されたテーブルには、不要な醤油やソースの調味料はとりのぞかれて、右手側にナイフとフォークが1セット、ナイフレストに置かれてありました。和食で使われるプレイスマットの設置はなく、かといってテーブルクロスもかかってませんから、あらかじめカトラリーを並べることができないのだと理解したものの、我家の執着の一品、フォアグラを食べ終わった後、使用済みのナイフとフォークを、ナイフレストに戻すかどうか、少しだけ悩みました。

 本来なら、ナイフレストの登場は、カトラリーの使い回しを察するところですが、風花でナイフレストが使われたのは便宜上、略式を意味するわけではないと解釈して、わたしたちは空いた皿と一緒に下げてもらいました。他のゲストがどうしていたかは(見えない)わかりませんが、次の料理に合わせて、そのつど、カトラリーはあたりまえのようにセッティングされました。(あらかじめ並べておくことができず)落ち着かないことで申し訳ないと言いつつ、勝手の違う空間でサービスに付いてくれたのは、ベルビューで幾度かお世話になった、いつものスタッフでした。

 トマム繋がりではなく、ルスツで出会って、ルスツで親しみを増したスタッフです。
 スタッフの影響力については、わたしは様々な場面で実感し、紹介、言及してきましたが、ここでも、やはり...。
 いはば、臨時設えの食環境を整えて、より良い雰囲気に仕上げてくれたのは、スタッフに他なりません。馴染んだスタッフの存在は、記憶を刺激して、居心地よく満ち足りて過ごした時間の再生をうながすもので、多少の不足部分を補って余り有るものです。場所のことなど、気にならなくなっちゃったといえば、わかりやすいでしょうか。

 いささかも補う必要のない料理の立場になれば、和食堂での提供は残念だったかもしれませんが、おいしいものは、場所を選ばずおいしいことを証すには、良い機会になった気がします。
 
 今回も(念を入れて)リクエストした一品、フォアグラは、もう、わざわざ紹介する必要もないくらいに、焼き加減もソースの風味も我家の好みでしたし、少量、多種の欲張り冷前菜(右イメージ。これのみフラッシュ撮影。)は、見て楽しく、食べて嬉しい盛り合わせでした。
 『真狩産早摘みゆり根の冷静ポタージュ その実もそえて』と名付けられたスープは、我家にとっては、ツボにはまるサラサラとした口当りの、素材の甘さを閉じ込めたようなカプチーノ仕立て。スープの素材や口当りについて要望したのは、最初だけで、その後はおまかせした結果、コンソメやら、ジュレ仕立てやら、パイ包み仕様など、いろんなパターンを楽しませてもらってますが、ここにきて原点回帰?ともいうべき、根菜素材のクリームスープは、ほどほどのボリュームも理想的でした。


 そして、主人が感激のあまりに無口になったキンキのポアレが、右上イメージ。
 カリカリの皮は香ばしく、ふっくらと淡白な白身に絡むソースは、酸味を含んで爽やかに甘くて、本当においしかったです。それにも増して、飾り?と思ったヒレ(まっすぐに立って盛りつけられてました。)の素揚げは極薄の煎餅そのもので、皮ももちろんカリカリなんですが、皮にはりついてた身(白身じゃない部分かなあ。正体不明)は、ジューシーでソフト....まるで旨味の凝縮体ではありませんか。シンプルな塩味のように見えて、切り身を押しのけそうな勢いのヒレでした。

 メインの前の口直しの氷菓子は、巨峰味でした。
 イメージつきで紹介するのは初めてだと思いますが、ルスツ(ベルビュー)でこれまで見てきた氷菓子とは、違う印象を受けました。これまでは氷菓子といっても、ジェラートに近い感じで、たいていドーム型に成形されての提供でした。それなりに甘みもある時もあって、口直しに適しているかどうかはともかく、別腹に入るお菓子のようで、嬉しかったこものです。
 ところが、今回のはご覧の通りのかき氷タイプ。盛りつけ方が...です。巨峰の味はまんべんなくしっかりと付いていました。

 コースの内容は、ベルビューの料理長が(これまでのデーターを基に)作成してくださる(予定)とのことでしたが、実際に料理を作るのは別のシェフらしかったので、今回は、風味はベルビュー、見た目(盛りつけ)はルミエールを連想させられる...と思ってたら、シェフは、“もとトマムのスタッフ”だときかされ、驚いたり、嬉しかったり....。当時直接言葉をかわしたことは無いはずで、サービススタッフからシェフの名前をきかされても、こちらでは覚えはありませんでしたが、先方はトマム時代に我家を知っているとのことで、もう、何年も前に、お世話になっていたようで.....。
 そもそもシェフの経歴に話がおよぶことになったのも、サービススタッフの、(我家が)どんな感じで食事をしているかを(厨房でシェフが)気にしていrという雑談が.......雑談、なんですよね。料理の味はどうですか?というような問いかけじゃなく、厨房とのパイプをつなぐような雑談が切っ掛けだったのです。


 実は、シェフが...という話は、ルスツでは(...“でも”というべきでしょうか。)珍しいことではありません。シェフから(サービススタッフを通じて)素材や料理についてのこだわりが添えられることもありますし、途中で、次の料理の量の加減が打診されることもあります。はじめの頃に、こちらがリクエストした料理には、やはり、スタッフからシェフが(こちらの様子を)気にしてるときかされましたっけね。
 これはとても重要なことで、わたしたちは、サービススタッフを通じて、厨房の向こうの名前も知らない料理人にも親しみを抱くことができるわけで、親しい相手の手による料理にもまた、特別なエッセンスが振りかけられるような効果をもたらします。現実に親しいかどうかは問題ではありません。厨房の様子やシェフの人となり情報も、雰囲気づくりには大事なアイテムの一つだということです。だからこそ、サービススタッフと厨房との関係は密でなければなりませんし、(客席との)コミュニケーションなくして、雰囲気つくりもなりたちません。
 おいしい料理をもっとおいしく、格別なひと皿に押し上げるのは、充実した食環境、その最たるものは、料理に関わる相手への好意,好印象、言い方はいろいろですが...好感情だとわたしは思っています。


 ですから、名前を聞かされても知っているとは言えなかったにもかかわらず、シェフの様子や経歴の情報を得て、つまりは、おそらく,フレンチレストラン・ルミエール(カメリアコーナーも、かもしれません。)の記憶を共有しているシェフに親しみを感じ、夕食に対する(わたしたちの)満足度はワンランクアップしました。

 う〜ん、アップの余地があったのは、場所が臨時の、和食堂だったからとしておきましょうか。(シェフが気にしてると聞くまで、場所のことも気にならなくなってましたけど。)

 ひと皿のボリュームがこれまでよりもおさえられて、わたしたちには丁度いい感じにおさまってきたのは、トマム時代のデータが活かされたお陰か、ベルビューで(常に完食しながらも)少し、量が...と言い続けた成果か.....どちらにしても、主人は、今回余裕を持っても完食で、ボリュームも理想的でした。
                                 
                               11/08/04 

風花 (ルスツタワー) 和食コース

 風花には夕食券対応コースの他に、いくつか、価格や傾向の異なるコースが用意されています。例えば抗老化の効果をうたったアンチエイジングコースを食べた翌日はしゃぶしゃぶコースを選択するなどして、連日和食をつづけても、それなりに目先は変わって楽しめるのではないかと思います。...が、コースはそれぞれに全く異なっているというわけではありません。3種の前菜が別のコースで5種になったとして、3種は他のコースと同じだったり、造りの一部、あるいは料理自体が重なっている可能性は大きいわけで、各コースは主な部分に変化を持たされているものの、共通部分もあることは否めません。

 で、酢の物が(この前と)同じだけど仕方ないか...などと思っているところへ、蓋をあければ別の料理に差し替えられていたりするのが、スタッフの腕の見せ所といいいましょうか、レストランの対応力を印象づける好機にもなるのですが、それは予約を通して利用客のデーターが保存されている場合の話。レストランの利用に際して予約制を導入していないルスツでは、利用者情報の収集や蓄積については課題を残していると、わたしは考えてます。
 予約を通せば自然に「※※様」と名前を呼ぶことからはじめられる関係までの道のりが、長いのです。個人の資料がないまま、沢山のお客の顔と名前を一致させる...必要があるかどうかはともかく、明らかな再利用客であっても、現金払いの“お客様”は、利用履歴も把握しにくいじゃありませんか。部屋付けやカード払いならサインをする機会もありますけどね。

 頼みの綱はスタッフの記憶力と会話術という状況で、さすがに、優れたスタッフがサービスに付いているし、利用者との関係構築に意識が高いスタッフが多いとわたしは感じていますが....おのずと限界はあります。 利用を重ねるうちには、見覚えのあるスタッフと言葉をかわす時間も増えて、馴染んだ場所ならではの快適さは増すものですけど、それでも、スタッフ(レストラン)側ではゲストの情報は不足していると思って大きな間違いでは無いでしょう。本来、機転もきけば、柔軟性も備えたサービススタッフが、情報不足が原因でスキルを発揮しきれていないとすれば、おしいですよね。

 夕食は予約があたりまえのトマムからルスツに利用を切り替えたした2009年のレストランレポートで、わたしは(ルスツで)レストランの予約ができない不自由さに言及していますが、タワー満室のピーク時にビュッフェレストランに長蛇の列が出来ていたのを目撃したものの、テーブルサービスの、コース料理を提供している店は,待たされた為にこちらが予定していた時間よりも食事の時間がが遅くなるということもなく、レストランの利用に関しては、予約なしの行き当たりばったりでも、不自由は、多分、ほとんどないことが判りました。むしろ、不自由というなら(ゲスト情報の不足という点で)サービススタッフのほうかもしれないのです。

 ですから、前に残したのと同じ料理が出てきても、ど〜して嫌いな料理が出るかなあ...などと思ってはいけません。
 そうなふうには思わないのが普通というかたは、この先のわたしのアドバイスは余計なお世話かと考えますが...え〜とね、旧トマムのヘビーユーザーは、結構思うんですね。自分たちの嗜好を店が把握してくれている状況でサービスを受ければ、残した料理の再登場など、起こりえなかったことですから、割と気になるポイントなのです。
 ちなみに、我家の近くのホテルの和食堂では、以前に天婦羅カウンターで、苦手な素材の有無を尋ねられて、「大葉」と応えて以来、わたしの前に置かれる料理は、造りの妻にも大葉は使われず、サラダのドレッジングが青しそ風味だった日には別のドレッシングがかけられ、紫蘇がらみの漬け物も差し替えられるという“気遣い”が,スタッフがかわっても,利用の間があいても、今だに続いています。そこまで徹底的に大葉の排除をもとめてなかったわたし自身が、一言の効果に驚くばかりですが、これは、きちんと管理された個人データ活用の効果でもあるんですね。

 その個人データが蓄積されにくいルスツでは、スタッフが2倍の気遣いを持ってサービスにあたってくれたとしても、黙っていては気づかれないことがおこりうるものです。常はともかく、今季のようにレストランの営業が変則的で、同じ店の複数利用が避けられない状況下では、ゲストの方からも必要な情報の提供に積極的になるべきかもしれません。よりによってかぼちゃが苦手で..などという事情がなくても、2回目、3回目の利用時に、料理が重ならないようにコース内容の調整をリクエストしたり、初日にオーダーしたコースに口に合わない一品があったりしたら、次の利用の前に料理の差し替えが可能かどうかを確認するなど、コミュニケーションから改善が期待できることはすくなくありません。洋食コースも含めて、提供されるメニューを事前に見せてもらってから、滞在中の夕食の計画を練るのも一案です。

 我家の場合は、初日にアンチエイジングコースをいただくという前提で、4日目は内容が重ならないようアレンジしたお任せのコースをお願いしました。
 食材に関しても特に指定はせずに、何が出るかのお楽しみ...ということで、たらば蟹の天婦羅からも卒業です。ただ,昨シーズンの経験をもとに、汁もの、液体ものはお腹が膨れ易いので、和風スープと紙鍋(沢煮鍋)は組込まれるとしてもどちらか一品にという要望は伝えました。結果、両方ともなくなり、天婦羅も無くなりました。
 つまり、初日どころか、昨年、一昨年までさかのぼっても、殆ど料理が重ならないという見事なコースの登場となったのです。毛蟹は前菜で、たっぷりのほぐし身が圧巻でした。造りは夏いかと鮮秋刀魚、松川鰈が入荷しなかったとのことで、平目とオヒョウ、白身は2種になって、鱒ハラスを併せて5点盛りのボリュームでした。
 その後の、焼物が、左上のイメージ。『鮑と帆立貝の北海焼き とうきび 玉葱』です。

 オニオングラタンスープ....じゃ無いよねという、驚きの一品は、中からがゴロゴロでてくる角切りの鮑や帆立が、さすががの北海道といいたくなる大きさで、もちろんおいしい。おいしいんですが、いや...でも、鮑も帆立も無くてもいいかもしれないくらいに、玉葱がおいしすぎ!
 オニオングラタンとは全く違う仕様の(あたりまえ)強い甘みが、鮑も帆立も押しのけて、主役をぶんどるような勢いでした。とうきびの甘みも...?と思いきや、探しても探しても、とうきびが見あたらないので、主人はすりつぶして隠し味になってるのかもとか、自家製コーンオイルをつかってるとか...あれこれ想像しましたけど、実は、コーンは良い物が手に入らなかったということで、使われなかったとの説明が(料理スタッフから)ありました。発注していた物の状態がいまいちで、急いで近くの直売店に買いに走ったけど、売り切れだったという事情に笑えました。実は、同日13時過ぎ頃、ゴルフ場からの帰りにわたしたちも(スタッフのすすめで)立ち寄った店なんですが、売り切れてまして、夜に焼き物で食べられるし(普通の焼きとうきびをイメージしてましたから)と、夜の焼物への期待が高まる切っ掛けにもなってたのです。...妙な縁でした。
 思っていた焼物とは別ものながら、わたしたちは料理は堪能したので、実際に(とうきびが)入ってなくてもかまわないんですけど、話をきいて、冷凍コーンでも散らばしておこうと言う判断にならなかったことにはこだわりを感じさせられる一方、料理人納得のとうきび入りの完全バージョンもいつか...と欲も出てしまいました。(くだんの店のとうきびは翌日にゆでたもの頂きました。甘かった!!!)

 焼物に続く、煮物『知床黒毛和牛 地竹 地蕗 わらび スナックえんどう』もまた、肉の厚みに目を見張った一品でした。
 野菜の煮物に、ミディアムレアに焼いたステーキを大振りにカットして混ぜ合わせたような見栄えですが、何と、この、切り口がピンク色の肉に炊き合わせのだしがしみ込んでいるです。ステーキ肉の煮物なんです。香ばしそうな焼き色が付いた肉は、肉汁とだし汁が同時に溢れ出るほど柔らかく仕上げられた、煮物(しつこい?)なのでした。でも、クツクツ煮込んで3昼夜....“とろける”と表現されるようなシチューの柔らかさとも別ものです。低温調理で処理したとの説明に、なるほど....と納得したものの、これは、やっぱりフツ〜の煮物じゃなかったねというレベルの理解。主人は、次も全く同じ料理を望みたいくらいだとの感激振りでした。
 
 右イメージは『トマトの吸酢浸し 玉葱 胡桃』と名付けられた酢の物。
 冬期にも提案をうけながら、う〜ん、トマトの酢の物は....と蟹の酢の物に変えてもらったものですが......勝手な印象でトマトよりも蟹と思ったことを反省させられる料理でした。丁寧に皮を剥かれて大きさを整えられたトマト片はこれまた丁寧にドーム状に整えられて、新作デザートと見紛う綺麗な盛りつけではありませんか。ちゃんと固さ(歯ごたえ)もあって、味も濃いトマトは、それ自体がおいしいにちがいないんですが、まろやかな吸酢の旨味をまとって、フルーティな爽やかさが増した感じで、肉料理の後にはベストな一品だった気がします。具沢山の 飲むお酢料理とも言えそうなインパクトのある料理でした。


 でも、それ以上に強烈だったのが、ご飯のうに丼...メニューにはミニうに丼とは書かれていませんでしたが、コースのご飯ですから、丼ではなくお茶碗サイズだろうと見当をつけていたわたしたちの前に現れたのが、お茶碗に入ってご飯と、別盛り、てんこ盛りのうにと海苔。イメージが一人分のセットで、ご飯はおかわりもできると......。焼き茄子と三つ葉のお味噌汁に株の浅漬けがついて.....うに丼セット1人前、北海道バージョン完全版と命名したくなる仕様でした。
 ルスツではこの時期、うにや毛蟹が旬の食財として紹介もされていたので、わざわざリクエストするまでもなく、食べさせてくれるだろうと期待はしていましたけど、コースで提供されるには、大胆すぎる盛りつけです。
 料理が出るたびにテンションアップしていた主人はまたもや大感激でしたけど、満腹状態まで余裕はごくわずかとなっていたわたしは、その余裕を、うにを見てる間にも使ってしまった感じで、食べるのに少々がんばりが必要な状況に追い込まれました。不覚でした。
 ご飯のお変わりはせず、わたしが残したうにも引き受ける主人の食欲には、さすがに対抗もできず、譲りました。1時間の休憩の後..なら、話はちがっていたかもしれませんけどね。(うに食べ過ぎの主人からは、水菓子のプラムとカンロがひと通津津、わたしに回ってきました。なぜか、フルーツに対しては、満腹中枢がマピするわたし...。)

 今回もコース内容は、和食料理長の考案ということでしたが、ご本人は札幌でミーティングのために不在で、実はとうきびが...という話は、この日に厨房を担っていたスタッフの“告白”だったのですけど、それとは別に、インパクトの大きな料理が増えた印象を伝えたところ、創作料理というジャンルにも意識して挑戦している様子を伺うことができました。
 なるほど、なるほど、なるほど...と感心することしきりで、終えた夕食でした。
 
 “北海道らしさ”の先にあるのは、“ルスツらしさ.”..でしょうか。
 今日の料理を次もまたと思いつつも、新作への興味も捨て難い.....、嬉しい悩みが増えていきそうですね。

     
                                          11/08/16  

 

 

風花 (ルスツタワー) アンチエイジング和食コース

 ルスツの利用に踏み切った頃(10数年のご無沙汰期間を経て、再訪にトライした2009年当初)、ベルビューや風花には、デトックス効果を意識したコースがありました。
 洋食コースではデトックス効果の高いコリアンダーを使ったスープや赤唐辛子、生姜の入ったソースなどに特色が見られる様子でしたが、和食はメニューを見ただけでは特殊な感じはなく、コース価格で、品数やメイン素材に変化がある程度の内容に思えました。夕食券利用の場合は差額2100(当時、夕食券対応コースは4200円。)で、興味は抱いたものの、タラバ蟹の天婦羅や、フォアグラのポアレ、根菜類のサラサラスープだのに執着があったわたしたちは、リクエストつきお任せコースに終始して、デトックスコースの効果を体感する機会を逸しました。

 そのうちに...と思わないでもなかったデトックスコースが定番のメニューから消えたのは、多分(昨年はまともにメニューを見てなかった)今季スキーシーズンからと思います。代わって目についたのがアンチエイジングコースでした。
 解やすいコース名に加えて、店の外のメニュー版にも、各料理毎に、食材の持つ栄養素や成分、期待できる“身体にいいこと”が説明されていました。抗加齢、老化の予防......まさに、自分たちのために提供されたようなコースで、あれが食べたい、これが苦手というのはナシにして、素直にアンチエイジングコースを頂くのが、正しい あり方かも...と、性懲りも無く胃袋の限界に挑戦したあとで、わたしたちは反省も交えつつ思いました。 まして、そのアンチエイジングコース専任シェフが、旧トマムのカメリアコーナーやルミエールで幾度となくお世話になった草野シェフと聞かされては、興味も倍増したものです。
  とはいえ、コースの価格は4200円。デトックスコースの3分の2の価格設定には、懸念もありました。 このコースを選んで、これまでのリクエストつきお任せコースを諦められるかといえば...難しいわけでして...。 たとえば、洋食アンチエイジングコースにフォアグラのポアレを追加して、メインを和牛に差し替えて...という事が可能かどうかなどと、潔くない対策に検討中に、今回、利用の機会が訪れました。

 和食、洋食、ビュッフェ、いつもの晩ご飯に追加でもう一つ何かをということになって、わたしたちは、迷わずアンチエイジングコースを、食事会場が風花(和食レストラン)限定されていたことにも影響されて、和食のアンチエイジングコースを頂く予定を事務スタッフに伝えました。

 定番のコースなので、事前に決める必要はありませんが、決めてしまう事で、(もう一方のコースの)料理が重ならない
アレンジをお願い出来るメリットがあります。内容もわからないのに?との心配はご無用。 30周年を迎えたルスツが力を入れている企画というだけあって、アンチエイジング関係の情報は充実しています。通常のページのレストランの案内ではこのところは店の案内どまりで、具体的なメニューの紹介がなされていませんが(2009年冬期は、メニューの一例がUPされていたんですけどね。)アンチエイジングコースの内容は、特集のページで詳細に紹介されているんです。季節によって内容が異なるという但し書きつきですが、ちゃんと更新されていますから、メニューの切り替わりのド真ん中でさえなければ、充分に参考になる情報なのです。

 ちなみに今は秋のコースに切り替えられたようで、わたしたちが頂いた内容とはちがっていますが、わたしたちが事前にHPで見たコース内容と当日の内容は、ほぼ同じでした。
 主人が苦手なかぼちゃは使われていないし、肉は(ないけど)お任せコースでお願いしたからない方がいいくらいだし、海胆もついてるし、シルバーなんとか(じゃがいも)の饅頭もおいしそうだし...量もほどほどで、良さそうじゃない?と決める為の情報は、充分で、かつ正確でした。
 アンチエイジング料理については、総料理長の言葉を借りれば、抗酸化食材の使用と、栄養のバランスや食べ過ぎに注意する意識が基本で、ルスツで提供されている他の料理にも、パンやラーメンにもその基本姿勢は反映されているとのこと。そういう意味では、アンチエオジングコースが他のコースとまるで違っていて....というわけではありません。何か特殊な食材が使われていたり、“良薬口に苦し”的な味付けにとまどうこともありません。それでいて、普段は余り馴染みのない料理にインパクトもごちそうになるという....いつもの、ルスツらしさが織り込まれたコースでした。(この時のご飯はひじきと大豆の窯炊きご飯。乳白色の,大豆そのものを食べたのは、初めてだったかも....。固めの食感とにじみ出るような甘みが新鮮でした。)
 
 前菜の品数も他のコースと遜色なく、造りは3点盛りでしたが塩水海胆の量はたっぷりでしたし、おなじみの『スープ』も組み込まれていました。ただ、7月のコースに限っては、揚げ物、焼き物はなく、シルバーなんとか(じゃがいも)饅頭や、生野菜のサラダ?と見まごう一品がありました。(右下イメージ)
 もちろん、葉っぱだけではなく、中には鱒がかくれていましたが、メニューでは秋刀魚が使われる予定だったものの、入荷しなかったということで、魚身は差し替えられたという話でした。白いのは長いも、黒っぽいのは....何かのドレッシングです。この料理だけは、さすがに、ヘルシーさをも実感しつつ頂いたのですが...正直、記憶はあいまいなのです。

 実は、アンチエイジングコースには、縮小コピーされた(のかな?という感じの)メニューが用意されていまして、専任シェフ、草野氏による各料理の説明(食材の成分や効能)と併せて、(わたしたちは)食事を楽しんだのですけど、持ち帰ったメニューがここにきて見当たらないのです。メニューの存在に安心してると、記憶力は低下するんですね。おまけに、ついこの間まで同じメニューが紹介されていた公式HPの料理もきりかわっちゃって.....記憶再生の手助けも無くなりました。
 確かなことは、食材も料理の味付けも好みのラインナップで、“挑戦者”になることなく、水菓子までおいしく食べられた適量のコースだったという事でしょうか。
 
 もちろん、物足りないと感じるゲストはいると思います。
 北海道の、スポーツアクティビティーがメインのリゾートで提供される夕食には、ボリュームが求められるのも自然の成り行き....。
 ただ、加齢とともに、適量は減りますからね...。おいしさに背中をおされて、許容量越えにチャレンジを繰り返す我家には、適量を知り、食の恩恵を感じる有益なコースでした。

 アンチエイジングリゾートのコンセプトについては(鴨ネギ状態に陥り易い我家はともかく)北海道ナンバー1をうたうゲレンデや、ゴルフ天国を目指してくるゲストに、需要があるあるかしら首をひねる向きもあるでしょうか? でも、思えば、30年前にルスツに出会ったをエネルギッシュな若者も、20年前に、ルスツを選んだパワフル世代も、“老化”を自覚する時期が迫ってくるわけで、アンチエイジングの理念は、開業当時からの贔屓筋の存在があってこそ生まれた必然なのかもしれないのですね。
 「もう、年だから...。」を不要にする、うれしいコンセプトではありませんか?
  
                                          11/09/08  

 

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