JUNのトマムレポート2009
2009年トマムのランドマークとしてお馴染みのタワーのお色直しが完了しました。
まだら模様には好き嫌いが分かれるところでしょうけど、20数年を経たタワーの外壁補修は必要なことでしたし、寒暖の差が著しい環境で、レンガタイル貼りの仕上は(後の管理には)適切ではなかったと言うのもあたりまえの判断で..様変わりは仕方がないですね。
贅沢な設えや在り方へのこだわりは、人によりけり....関わってこなければ『軽い』のかもしれませんし、それもまた、仕方がない話です。
全く使われないホテルをはじめとして、多くの施設がその本来の役割を解かれいる期間が多くなるのを見るにつけ、おそらくはそう遠くないうちにはいくつかは存在を省みられなくなる時を迎えることを察するのも容易く、やはり惜しむ気持ちを自覚しますが、でも、『もとのように』なることへの期待は失せてからずいぶんになります。
100年に1度といわれる不景気だし....ではなくて、100年に1度のバブル期が再来したとしても、元には戻らない...。
資金があれば出来るという物ではないですし、そもそもバブルのただ中にあってもトマムに似たリゾートは創られなかったわけで、わたしには、維持されるかどうかの問題でした。失われた物がいつか...ということはもとより考られません。時代も、取り巻く環境の変化も小さくはないのですから、リゾートのゆとりが無駄といわれることもあるでしょう。
それでも、トマムの自然は美しいし、隔離性の妙は褪せません。それに何より、そのステージに甘んじなかった精神が残っています。20年経てば、リフトは架け替えが待たれますけど、人材は財産になるわけで、それは一時的に減ったかもしれないけれど、ゼロになったわけじゃない。時間とともにまた満ちてくると、わたしは思っていました。
事実、ひとり、ふたり...といい感じのスタッフとの出会いに恵まれていましたしね。
ですから今年のスキーも、、いつも通りに....でした。
そんな中でのプラチナムのクローズです。当掲示版でも話題になりましたが、 突然でしたね。シーズン初期に随分な荒天続きで、急な判断を要する事態となったのかもしれません。予約済みゲストの利用に問題は無いし、リクエストに関しても心配無用との話を、わたしは馴染みのスタッフから聞きましたが、正直、さほど心配していませんでした。これまでもクローズ時は個室で...ということもありましたし、なんとかしてくれるだろう...と、トマムへの信頼でもあり、甘えでもあったのでしょうね。事実、実害はなにもなく、貸切状態のプラチナムで好物を堪能させていただきました。
ただ、気になったのは、突然の変更について、一般論としてのフォローが全くなかったことでした。
予約済みのゲストには、個別に案内が行われたのかもしれませんし(未確認です。)利用の予定が無かったゲストには無関係な話ともいえますが、現実には、予約済みなら大丈夫と言われたけれど本当のところは...?とか、予約をするつもりだったのにどういうことなんだろう?とか、投稿やメールが寄せられました。わたし自身の利用に際して、ご心配いただくメールも頂戴しました。当方へでさえそうなのですから、トマムに問い合わせが無かったとは考えられませんよね。
こういうことでのイメージダウンや噂の一人歩きは、サービス業を営む以上は『敏感になる』はずなのに....、閉店の御知らせに補足コメントも何もないことで手一杯だったわたしの驚きは、イヤでも伝わったであろうゲストの戸惑いやストレスに対して、責任者のリアクションが皆無だった結果を待って、大きくなりすぎて粉砕しました。
ホスピタリティーを誇ったトマムなのに...というまでもなく、近くのパン屋さんでも定休日以外に臨時休業する時は事前にお知らせがあるし、取る物も取り敢えずの状況でも『ご迷惑をおかけします。』ぐらいの張り紙は出すでしょうに...というレベルの話です。
サービスは誰にでもできる。
幾人ものスタッフから、ショックだったと聞かされたトップの価値感について、そんなバカな..とわたしは思ったものでした。
料理を運んで、空いた皿を下げるだけならともかく、料理の説明や注文のアドヴァイス(ビュッフェとセットメニューのみなら不要ですが...。)、飲食のペースを測っての次の料理を出すタイミングを見極めたり、利用したことのあるゲストの嗜好を覚えていて、お勧めの一品を紹介したりということは、先輩に倣いながら経験を積んでできるようになることで、誰でも出来ることなんて知れてるのです。
だからこそ、一喜一憂しつつも評価や判断は先に回して、今しばらくは、一部といわざるをえない『サービスのプロ』の好意や配慮に甘えさせてもらってきたわけですけど、経営陣が“そこ”を目指していないなら、甘えはいつまでたっても個人的な甘えのままで、トマムの標準には移行しないのですね。
プラチナムの一件に限らず、利用者(ゲスト)の立場に少しの配慮があれば、この対応は無いだろうに...ということが、今年になって急に増えたと感じるのは、誰でも出来るサービスが広がってきたから?と言ったら皮肉になるのでしょうか?
でも、まあ...「我々の提案したことが気に入らないなら帰れ!いうくらいの自信を持って..。」と、星野氏はテレビでもおっしゃってましたし(星のや嵐山の開業に際して)、トマムについても諸事情あっての現状なのではなく、自信を持っての結果とすれば、そろそろ、わたしは帰らなくてはいけないのかなという気分になりました。
星野リゾートでは“日本の旅館を世界の一流の仲間入りに..”との目標をお持ちのようですが、マルチジョブシステムで、一流が生まれるとはわたしは思えませんし....まあ、グズグズ言うなら帰りなさいといわれるところなのでしょうね。
話が前後しますが、2月中旬、プラチナムのクローズ(のありかた)について星野リゾート宛に意見メールを送ったリピーターさんが受け取った返信によると、“トマムは過去と同じような営業形態を続けていては生き残れないので、安定した運営にする為に毎年改善や変化を続けて、試行錯誤している”そうで...。
なんと、トマムは破綻したリゾートとして捉えられていたではありませんか。
前回(A.C破綻)はあたらな所有者(世代交代)が見解の相違から経営者を交替させただけ、今回は本業が危うくなった所有者が手持ちの不動産の処分をしただけ(大雑把な言い方をすれば)で、トマム自体に閑古鳥が鳴いて経営が破綻したわけではないと理解していたわたしは(5年程前は予約数の上昇にスタッフが嬉しい悲鳴を上げていましたし、加森観光もトマムの運営に執着を見せたくらいで...。)トマムが再生事業の対象になっているとは思っていませんでした。
それゆえ、星野リゾートには星野リゾートの色があることは承知で、それでももう少しね、トマムの開発コンセプトや培ってきた時間に配慮してくれればいいのにと繰り返してきましたけど、破綻したと位置づけられているなら....そりゃ配慮も敬意もないですよね。トマムは、これまでを否定されてるということなのでしょうね。
となるとここからは、自分が評価してきたモノが否定されて毎年変化を続けることに、どう向き合って行くかという問題です。
必要なのは忍耐や寛容さではなくて、もちろんトマムへの愛着でもなく、現状を気に入るか気に入らないか....のようです。
気に入るのは難しいと判断したわたしは、夏のトマムをあきらめましたが....当面は、再生の成果を待つのがいいのかもしれませんね。
なお試行錯誤中とのことでは、情報の有効性が維持できないので、保存目的のトマム最新情報2010は稼働を見合わせます。
09/12/16 
ページ内イメージは2009年2月のプラチナムと三角の料理の一部。

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