画面のレイアウトが乱れる方へ

 

      
 
                               

 2015年10月、間もなく夏時間から冬時間へ切り替わるという,パリで6泊してきました。

 2年前よりは1ヶ月程早い季節...とはいえ、春摘みダージリンへの期待は高め過ぎずの心構えでの出発でした。
 飛行機とホテルは、白紙とまではいかないものの、極薄いグレイ状態で、再検討しました。
慣れとともに感動が薄れていることを自覚しつつ、フライトスケジュールの利便性と価格で、今回も選択したエミレーツは、ことごとく『慣れ』と異なる初体験とむきあわされ、今後の航空会社選びを本気で白紙からはじめなくてはと考えさせられました。

 一方、刺激的な感動は薄れても、慣れで増す親しみが快適さに直結するホテルは...より良い(我が家にマッチした)物件をもとめて、探索をくりかえし、前回までは対象外にしていたカテゴリーのホテルに挑戦してみました。

 日程の関係で、参加可能な未参加のオプショナルツアーは選択肢が狭まりました。
候補にあげていたシャルトルもランスも折り合いがつくツアーが無く、本当に久々に、自分たちで鉄道を利用して、郊外に足をのばして来ました。『いつものクレープ』に加え、評判のクレープリーで食べたガレットが、強烈に印象に残った6泊9日、焼き栗売り登場まであと何日?という季節、街路樹も色づき始めた住宅街、ようやくボワシエに立ち寄ることが叶いました。

                                  15/10/29 

  
 更新日  23/09/17    

ホテルの感想 ホテル・ル・スィス(LeSIX)

 
ホテル公式HPでは星4つ...ですが、ミシュランガイドでは黒屋根3つ、クラッシックでもヒストリカルでも..もちろんラグジュアリーでもなくデザインホテルに位置づけられていたホテル・ ル・スィス、カタカナ表記ではルシックスとかル・シックスと紹介されている場合もあるホテルのエントランスは、6の数字をデザインした把手のあるガラズドアでした。自動ドアも回転ドアもない、一カ所のみの出入り口で....ドアマンはいませんでした。

 エミレーツの送迎サービスで到着したとき、ドライバーがトランクを下ろしてくれている間も、ホテルのスタッフが出てくる気配がなかったので、トランクを受け取る主人を待たず、わたしが先にホテルのドアを押すと、フロントデスク内にいたスタッフが即座にたちあがり、サポートに出てきてくれました。
 
スタッフの印象は良かったです。
 ただ、チェックイン手続を終えて、さあ、客室へ(案内)と,そのスタッフにトランクを引っ張っていかれると....そっかぁ、と思いましたね。ドマンだけじゃなくベルパーソンもいないんですね。客室数40前後、うんうん、家族経営と言うことでしたし、なるほど...と、わたしは、とりあえず小さいながらもエレベーターがあったのでほっとしましたっけ。
 そのエレベータの横に螺旋階段があって、階段の中心部、吹き抜けにエレベーター(とおぼしきもの)があって、一瞬、ブリストルやウェストミンスター・オペラの歴史観漂うエレベータを思い出しました。

 ル・スィスの歴史は浅くても、建物はそれなりの時代を経ている様子で、改装しても、螺旋階段のエレベーターはちゃんと残されているんだ...と。ですが、ブリストルやオペラとはちがって、スタッフからその部分の説明はありませんでした。使われていないのか、使っちゃいけないのかと気になっていたら、滞在中に外国人客がそのエレベーターから下りてくるのを見かけたので、わたしたちも,興味本位で一度乗ってみました。幅は主人と並んでると衣類が横の壁に触れるくらいで、奥行きは...壁にピッタっと背中をつけて、ついお腹を凹ませたくなるくらいの、二人一緒に乗って大丈夫かしらという極小サイズでした。体験して、案内されなかった理由を察しましたっけ。


 エレベーターは想像を絶して笑える程でしたが、そこまでではないにしても、 廊下(通路)もコンパクトでした。
 6階、エレベータの真ん前には(廊下を挟んで)フィットネスコーナーがあるのですが、仕切りがカーテンですもんね。狭い場所を工夫して使っている印象に、一抹の不安をいだきかけたところに案内された客室は、でも、期待を超えたゆとりの空間でした。



 まずは、バスルーム。
 ベッドの大きさに想定を越える意外性はないわけで、重要なのはバスルームの使い勝手なんですよね。
 トイレが一体型なのは...覚悟のうえですが(トイレとシャワーブースとバスタブが全て独立していたブリストルは、凄かった。...お値段も。)シャワーブースとタオルウォーマーの有無でした。いずれも満足度は高めだったとレポートしたドーブッソンには無かったもので、今回無条件で再びドーブッソンに...とならなかった理由でもありました。タオルウォーマーがないと、エアコンで快適室温に設定しているベッドルームよりもバスルームの方の気温が低くなるので..入浴前などは.意外とストレスになるんですね。ル・スィスは公式HPの客室イメージで、タオルウォーマーがあるらしいことは判っていましたが、設置されていた大型タオルウォーマーは、ヒーターのオン、オフ、オン時の温度調節、またタイマー設定も可能な優れものでした。おかげで、広いバスルームを常時温かく保つことができましたし、バスルームの扉が引きと仕様だった為、使わない時は扉を済めずに室内と一体化していましたが、その室内よりもバスルームの方が少し温かい状態なのも助かりました。
 シャワーコーナはバスタブの奥に、部分的にガラスで仕切られてありました。この仕切りが....どうせならもう少し仕切って欲しかったと言いたくなるところで途切れてまして....。バスタブは全く濡れないかわりに、洗面台寄りの床面が濡れるのが残念でした。シャワーヘッドホルダーは可動式で、上下の高さ位置だけでなく、角度調整も出来る使い勝手の良いタイプでしたが、下向き加減の使用をこころがけても、お湯の勢いはとめられず...です。
 2枚用意されている足拭きマットの1枚を、仕切りの横(シャワーコーナーと洗面台の間)に置くと、マットがそれなりに濡れる....乾いたマットで足を拭きたいからとマットの位置をずらすと、濡れた足が床を濡らすと言うわけで、どっちにしても濡れるんですね。扉で完全に仕切って...とまではのぞまないとしても、あと20cm...幅が広かったら、わたしはありがたかった。大柄なゲストは、出入りに不自由になるのかもしれませんけどね。

 最上階にあるスイートルームは、室内の所々の壁に傾斜があって、バスルームも、シャワーコーナーの手前の壁はせり出してましたから...。

 客室はベッドルームとリビングルームに分かれていました。
 事前にリクエストした通りに、ベッドはふたつ。寝具は羽毛ではなく何か人口素材綿仕様の軽い物でした。羽毛の方が良かったことは否めませんが、軽い寝具の保温力は充分で、使用感に問題はありませんでした。一夜明けてからは(私的な好みはともかく)羽毛アレルギーのゲストにも対応した寝具かもしれないと、評価を改めました。
 収納はベッドルームの壁に嵌め込まれたクローゼットと棚。引き出しは、棚の3段目(だったかな)に一つ....。リビングのライティングテーブル、ベッドサイドテーブルにも引き出しの類がないので、整理はやりにくかったです。棚もクローゼットと同じだけの奥行きがあって、スペースは充分なんですが....これはドーブッソンでも同じ感想を抱きましたっけ。

 リビングの二つの窓は開いて、バルコニーに出ることができました。
室内の床面よりもバルコニー面の方が高いので、外に出る時には、よっこらしょと上る感じですけど....出るというよりもバルコニーに腰掛けて風を感じる様な使い方が画になりそうな造りですね。
 リビングの天井よりも高い通路の天井には壁を突き抜ける太い梁が見えていたり、おそらくは、もともとは壁の中にあった鉄骨があらわれていたりして、新しく機構的な備品の快適さと、古い建物の味わいが融合している客室でした。
 
 ターンダウンサービスはなく、毎日19時頃にスタッフがミネラウォーターと小さい板チョコを手渡しで届けてくれました。
 チョコは3個だったり2個だったり..この時間に戻っていなかった日は、水は机の上に置かれていたものの、チョコレートはみあたらなかったり...まちまちでした。気にするのはやめましょう。

 専門職のスタッフは常駐していない可能性は織り込み済みでしたが、ルームメイドも外注のような気がします。
 外からワゴンがはこびこまれていましたしね。この客室数で自社スタッフによる清掃となれば、フロントデスクスタッフが兼任となりかねないわけで、外注で専門性を優先するのは悪い話ではありません。

 
 ただ、朝食は...香ばしい香りとともに焼きたてのパンが運ばれてきていたドーブッソンほどのインパクトはありませんでした。

 物足りないという話ではありません。パンの種類も多く、トースターの用意もありました。ハム、チーズも数種類、温かい料理はスクランブルエッグとカリカリベーコン、マッシュルームのソテー(連日変わらず)、ジュース数種(おいしかった!)フルーツ、ヨーグルトなど、朝食としては充分でした。
 でした...が、 今更ながら、ドーブッソンのパンは美味しかったよね〜、という話になるのでした。ル・スィスの朝食は調達された物で調理された物ではなさそう...と言うのが、乱暴な印象でした。(確認したわけではありません。)
 (夕食営業の)レストランが無いんですから、調理環境が整っていないのは判っていることで、それを批判するつもりはありません。
 ドーブッソンのパンにしても、至近のブーランジュリーで焼かれてたかもしれないわけで、レストラン営業の無いスモールホテルで提供される朝食が自家製か否かという話にあまり意味はありませんね。
 ル・スィスの朝食は、おいしさでお腹を満たすに何も不足はないけど、満腹をおしてでもまだ食べたくなるようなと感激にはすこし遠かったというべきでしょうか。

 ただ、調達されたお茶が、ボックス入りのロンネフェルトだったのには、驚かされました。
 あ!ロンネフェルトの紅茶がこんなに!と言うのは早合点で、いわゆる紅茶は、また別のメーカーのボックスがおかれていて、ロンネフェルトのほうは、お茶シリーズでした。JASMINE GOOLD(Spring: China)、PRIENTAL OOLONG(Summer)、CREAM ORANGE...レモンとかミントなど、9種類が専用箱に入っておかれていたのです。
 美しさに見とれました。
 左下イメージ。テンション上がりすぎて、今時のデジカメでまさかの手ぶれが悔やまれます。

 朝のホットドリンクはカプチーノをオーダーしたわたしが、あまりに興味をしめすので、スタッフが気を利かせてティーポットにお湯いれてを持ってきてくれました。
 習慣でついポットに入れてしまったあとで気がついたのですが、これはカップ用でした。ティーキャディのシングルバーションというか、ミニ版ですね。ポットで抽出しても薄いと言うことはありませんでしたが、翌日からはカップ抽出で、2種、3種を飲み比べて楽しみました。

 スタッフは、皆いい感じでした。
 ドアマンもベルマンもいないホテルでしたが、例えばフロントデスクには、目の前を通る度にマメに立ち上がって挨拶をするスタッフや、言葉の壁を砕くがごとくに笑顔で話しかけてくるスタッフがいて、アットホームな雰囲気を実感させられたました。
 フレンドリー...よりも、アットホーム、ですね。
 どこへ行ってきたのか、楽しんできたのか、何か不自由していないか...(言葉の)壁を砕くまでもなくなんとかなるレベルの会話ですけど、戻ってきた時に『こんにちは』じゃなく『ただいま!』という気分にさせてくれる対応でした。
 小規模ホテルなので、出会うスタッフも限られていますから、馴染み易さはあるのかもしれませんね。外部要員とおぼしきルームメイドも、清掃中にわたしたちが(一時的に)戻った時に,このまま清掃を続けてもいいか、(わたしたちがが出かけたあとに)出直しした方がいいのかと尋ねられました。
 昼間でもちょっとホテルに立ち戻ることは珍しくない我家では、これまでも清掃中に遭遇してしまったことがありますが、こちらの意向を確認されたのは初めてだと思います。
 他のホテルのルームメイドの態度がどうこうというのではなく、言葉が通じない前提で、挨拶以外は余計なことは言わない傾向があるんでしょうね。
 じゃ、ル・スィスの(あるいは担当の)ルームメイドが、英語で話しかけてきたかといえば....???通じたから、100%フランス語ではなかったんだろうけど...という話であって、ボディーランゲージ込み込みの会話でした。 
 品のいい沈黙よりも心ある雄弁....スタッフの積極性(積極的なアプローチ)は、ご承知の通り、我家の価値感に添っていました。

 我家にはパリは遠くて...ルスツのように、じゃまたまた来年...という挨拶は出来ませんが、ル・スィスは、良心的な室料のみならず、パリ滞在の頻度が高いゲストをリピーターとして取り込むスタッフ力がきわだっていた気がします。


                                               15/11/19 


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