トマムのサービス
そもそもの切っ掛けはなんだったんだろう..... ?
トマムのサービスを特筆すべき大きな魅力として意識するようになったのは...というお話です。
リピーターの間では『トマムスピリッツ』という言葉で表現されることもある『マニュアルを越えたホスピタリティー』......初期のリーフレット等に 、トマムが目指すサービスとして明記されていますが、わたしは“実感”が先だったように思います。
ホテル・アルファリゾート・トマム.....低層のシックなホテルがオークラグループに属して、サービスのノウハウをオークラに倣ったという事前情報が好印象に影響したのではなく、好印象が情報の理解を促したといえそうです。
20台の半ばからしばらくの間、学生時代を過ごした都会の空気が懐かしくて、年に数回友人と東京詣でを繰り返していた時期が、わたしにはあります。立地条件がよかったり、手頃なプランがあったりした一部のホテルを除けば、興味に任せてあちらこちらと利用の範囲を拡げました。チェックインとチェックアウト、フロントデスクのスタッフと短い言葉をかわす程度の関わりかたでは、特別に印象づけられることなどありゃしません。小娘の価値観を持ってすれば、どこも大差はないというわけで、前回京王プラザだったから、今回はニューオータニ....今度どこにする?赤プリ行ってみる?みたいなノリでしたから、オークラに対してだって、格別な感情はなかったのです。
オークラのサービスコンセプトが、例えば帝国ホテルと比較してどんな特色があるのかと問われれば、分析して語るだけの経験もなかったわけで.....いはば世間で定評のあるオークラ流サービスを、わたしはトマムで体感し、オークラへの特別視は、実はその結果だった気がします。
じゃあ...トマムで、何が良かったんだろう?...と、最初の疑問にもどりましょう。
柔軟性、対応力、わたし自身が幾度となく使ってきた表現は、再訪を重ねるうちに体感した事例から発したもので、具体例には事欠きません。ウィンドウ越しに見えたグッズが欲しくてショップを開けてもらったり、販売していないパンを分けてもらったり、スキー板があらかじめロッカーに収められていたり、レストランで長居した後はバスを待つことなく、スタッフが宿泊施設まで送ってくれたり...そうそう、わたしも...と思い当たるゲストも多いことでしょう。
でも初めてトマムを利用した時に、てんこ盛りの配慮に感激しっぱなしだったわけじゃありません。
スキー場にあるホテルに泊まって朝から晩までスキー三昧のつもりで乗り込んだわたしが、いの一番に感激したのは、やっぱり、広さと雪質。当時は各ツアーの専用デスクも設置されていて、チェックインもツアー会社のスタッフから、ルームキーや食券、案内一式がひとまとめにされた封筒をわたされるだけで、トマムのスタッフとの接点は小娘時代の東京ホテル巡りよりも少なかったくらいです。
それなのにね。
帰宅する前から、来年もトマムだと決めていたのは、よほどホテルやゲレンデの、施設や設備がよかったのだろうと、普通は考えますよね。確かに、スキー場ではなくリゾートと呼びたくなる雰囲気はそれまで知らなかったもので、“大自然”も素晴らしければ、ホテルの、まだ1棟しかなかったタワーの“設え”も魅力的でした。
それでも当時、わたしは友人や知人から何度も言われたものです。
「ど〜して、毎年同じ所にいくの?」
「 他にも行ってみたいとおもわないの?」
.......思わなかった、ですよねぇ。
回りの疑問と意見を集約するとこういうことです。
北海道なら雪質は
トマムにかぎらず良いだろうし、スキー場なんだから自然があるのはあたりまえ。北海道自体が非日常で、トマムだけが特別というわけでもないんだし、どうせならいろんなリゾートに行った方が、そのつど新鮮で、たのしいんじゃないの?
う〜ん、細かいことを言えば、トマムに特別な要素はありました。初期は施設の増設も進んで、新鮮さもあった。
だけど、それが他への興味を失わせるほどに強烈だったかと言えば、多分、違うと今は言えます。
なぜって、新たな施設が建たなくなってからでも、三角沢スキーコースが凍結してしまっても、間もなく着工予定と聞かされたゴルフ場新コースが頓挫しても、トマムへの愛着は褪せませんでしたものね。
施設、設備は決定打ではなかったのです。
振り返れば、かなり早い段階で、つまりフォグラのポアレをリクエストしたりするよりもずっと以前から、よくまあ〜飽きもせずに同じ所へ...という言葉にたいして、わたしは、トマムはサービスが良いから快適だもんと主張していた気がします。
(準備ができていれば)チェックイン時間まえでも客室に案内されるとか、夕食券に縛られることなく、差額を払えばメニューは自由にえらべるとか、シーズン中なら次の利用日まで荷物(スキー板等)をあずかってくれるとか、10年後と比べれば初期の具体例はわずかなものです。おまけにそれは、言っているほどには、自分では感激していなかった具体例でした。都心のホテルで、チェックイン時間まで客室使用をお預けにされたことがありませんでしたし、その程度はそれなりのホテルなら出来てしかるべき対応という意識もありました。
注視すべきは、スキー場の宿泊施設で都心のホテルと同じ感覚を持ち込めたということです。
北海道だし、スキー場なんだし...※※だし...と譲歩する必要がトマムにはありませんでした。
へえ...と、北海道の同じ場所にスキーに行くことを「もったいない。」という隣人たちを手っ取り早く納得させる理由は、自然でも雪質でもない、ホテル自体の快適さにあったのです。それは、たとえ隣り合わせに在ったとしても同じにはならないポイントなのですから。
そのうちに面倒な具体例などはしょって、わたしは言ってましたね。
「だって、トマムはオークラグループなんだよ。」
それで充分。
テーマパークが隣接されているわけでもなく、ゲレンデやゴルフコースに近いわけでもなく、ましてや自然と無縁の都心に乱立するホテルの中でも世間に認められた一流が、針葉樹に囲まれた癒しの森にうまれたのですから、これ以上の特異性はないではありませんか。トマムは北海道の見事なステージを得ながらも、サービスのカテゴリーで自立を意識した
数少ないリゾートだったと思います。
残念ながらバブルの遺産、夢の跡と言われれば、反論の言葉も浮かび難い時代になりましたけど、当時、スタッフが倣い、身につけたものは本物でした。
その本物の名残に惹かれて、オールドファンはまだトマムへの愛着をいだいているのかもしれませんね。
20年前を思えば、オールドファンこそ『裏切られた感』は強いはず。思い描いていたものとはかなり異なってしまった現実の中で、それでも夢の跡を楽しめるのは、夢で終わらなかった『トマムスピリッツ』のお陰に他なりません。
「まだかよってんの?」と知人には驚かれそうです。
ホテルやってないんでしょ? リフト架けかわってなってないんでしょ? 施設も相当ふるくなってんじゃないの?
.....その通りですけど、でもまだ“トマムのスタッフ”がいるから...
。そうそう、と、どのくらいの人がうなづいてくれるかな?
..........で?
そもそもの サービスに魅せられた切っ掛けは....?
次もトマムにと決めた根拠は?
尋ねないでくださいね。
当初、特別なことは覚えていないのです。多分何もなかったのでしょう。
ただ、誇らしく晴れやかなスタッフの、トマムへの愛情が空気に満ちていて、わたしは即座にとりこまれたのかもしれません。
イメージはA.C破綻後、スタッフから届きだした年賀状。
運営会社の交替は深刻な変化には繋がらず....スタッフの影響力を再認識したものでした。
茶話室リスト
09/09/04 

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