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 2012年(11年末〜)のスキーシーズンを前に、トマムは名称を星野リゾートトマムに変更し、生まれ変わったとコメントが公式HPにて掲載されました。

 開業から30周年の迎えることなく、アルファリゾートトマムの名前は消えたということですね。住所と名称は同じでも実態は随分かけ離れてきたと感じて,当サイトで、旧、現トマムは別物と位置づけてから数年、今更の名称変更にショックを受ける話ではなく、名と実がフィットしたという点で、むしろ、スッキリした気もします。
 長く、バブルの遺産という形容詞を背負わされてきたトマムですが、我家にとっては、、ついこの間まで夢と理想の余韻を充分に楽しめる貴重なリゾート地でした。アルファ・リゾート・トマムの終焉は残念ですが、それは、現状に配慮して昔話を控える必要も無くなったということ...。良い時代の思い出話がしやすくなりましたね。
 当ページは、アルファ・リゾート・トマムユーザーを対象にした区切りのレポートです。
 トマムの“民事再生法申請”報道についてアルファと星野、どっちがどっち?等と併せて、おさらいの気分でご覧ください。




    

 
 「トマムの事は、トマムのスタッフやお客が一番良く分かっているから、現場の声をおおいに参考にして....。」というようなお話を、星野氏は、運営が決まった当初、スタッフを前にして、なさったそうです。意見が直接経営陣に届き安くなったと言う事で、再編された組織のフラットさを、歓迎する声も聞きました。
 明らかなスタッフ不足のなかで導入されたマルチジョブシステムに対しても「今は何でもやらなくては。」とか「異なるの仕事をも経験する事で、(部署違いの)スタッフ間の理解がふかまる。」とか...星野リゾートの運営となったトマムに残ったスタッフは、有言実行で、がんばっていた事を思い出します。そんなふうに、期待や気合いを言葉にしていたスタッフの多くが(わたしが直接話をしたり、名前と顔が特定出来るスタッフに限定しての話)その後、わずかの間に退職していった事実から察するに、実態は予想と違った...あるいは違う事が見えてしまったということでしょうね。(残ったスタッフが)思い描いている状況にはならなと思うといって、加森観光と行動をともにしてトマムを去ったスタッフの判断が正しかったのかもしれません。もっとも、去る方ではも数年の後には星野リゾートがトマムから撤退する事をみこしての、しばしの武者修行(のようなもの)との話もきかれたわけで、程度の差や結果の是非はともかく「こんなはずでは...。」という思いは、等しく降りかかったともいえそうですが.....。

 スタッフにだけではなく、それは、わたしたち、ゲストにも同様の話でした。

 経営者の交替は初めての出来事でもなく、しかもトマムと共有点を感じるのも難しいルスツリゾートの担い手、加森観光の運営になってからも、気持ちの切り替えを迫られるような変化は多くはありませんでした。夕食券対応のメニューが固定されて、差額を支払っての自由選択できなくなったり、レストランの禁煙席が廃止された事ぐらいが、要対策の変化だったでしょうか。
 夕食券の利用は控えて、予約時にタバコの煙が苦手な事を伝え、なるべく端の方のテーブルをとお願いしておけば、満席時(満席でなければ、隣は空席)でも愛煙家に挟まれる事態は回避できましたから、対策と言う程の対策でもなかったですね。ただ、そういうことも、効率重視の加森観光らしい合理化によって表立ってきたマイナスポイントに思えて仕方が無かった時代に、新たに登場した星野リゾートへの期待は、小さくはなかった..。
 振り返って思えば、短い分割運営の後に星野リゾートの一因としてトマム残るスタッフの方が、加森観光に属してトマムを去るスタッフよりも饒舌で、期待の根拠となる情報には偏りがあった事は否めません。豊富な情報量の内容に、こちらの希望的観測が反応して、数年後にあるべきアルファ・リゾート・トマムへの期待感は増してしまった気がします。

 でも、ホテルに併設予定(と聞かされた)だった大浴場が、VIZの中に作られてしまった現実は、膨らんだ期待の9割を打ち砕きました。持ちこたえた1割は、現場でがんばるスタッフへのもので....星野リゾートへのわたしの思いは、突然の大浴場の建設に伴うVIZの改装を見た初年度に、本当は....なくなってたんですね。

 ふさわしくないロケーション(平地に露天風呂)に浴場を作るためにロゴプールやサウナコテージが壊されたショックは、当時もしつこく繰り返したものですが、実はそれ自体よりもなお、気分の良くなかったのは、公式HP等で、浴場(木林の湯)の新設については華々しく宣伝する一方で、ロゴプールに関するコメントが一切無かったことでした。
 
 新規の経営者が、 既存の施設や慣習に価値を見いだすことが出来無かったことを、批判の理由にはできません。
 他人が作り出したものですから....利用価値で(利用し易いか否か)で判断すれば、冬期には屋外床暖房を1秒たりとも停止することができないロゴプールは、存続のメリットが無い施設に振り分けられても仕方がありませんよね。希少性や美しさにこだわっていられる余裕の時代は過ぎた状況も、わたしも理解はできたつもりです。
 VIZの改装は決定事項として通達があったそうで、馴染みのスタッフは「まさか、ロゴプールをつぶされるとは...。」と、心中穏やかではない様子でしたけど、前もって意見を述べる機会を設けられたとしても、結果は変わらなかったでしょう。
 

 
 それでも、理解と感情は別のもの。非日常を象徴様なロゴプールの在る風景が、わたしは好きでした。底にありながら水面に浮かんで見えるハマナスが風を受けて揺らぐさまや湯煙にかすむ幻想的な様子は、トマムのゲストの記憶に刷り込まれているはずです。それに、手がけた人たちがいます。ロゴプールの建設に関わったひとたちは....イタリア製のモザイクタイル1枚も、人の手で生み出されたものなのですから....閉鎖するなら一言あってもいいじゃありませんか。

 「.....ロゴプール(サウナコテージ、リラクゼーションコテージ)を閉鎖し、跡地にお客様からの要望の多かった大浴場を新設する事になりました。これまでご利用いただいていた皆様には御不満もあるかと思いますが、寒冷地トマムにおいては、アウトドアプールよりも、浴場、露天風呂の方がより多くのお客様に喜んでいただけるとの結論に至りました。皆様にはご理解いただき、今後もかわらずVIZをご利用いただけますようよろしくお願いいたします。」

 例えば、こんな類のご挨拶がね....あればね、かなり、「こんなはずじゃ...。」という、わたしたち(アルファリゾート・トマムのファン)の感情は和らいだろうにと思います。
 
 一言の威力は大きい。実際に、星野リゾート単独運営以降、初対面ながら印象が良かったスタッフには、以前と変わった事に対する気遣いをちゃんと言葉にあらわす共通点がありました。「以前は食事の評判が高かったそうですね。」という雑談めいたものから「(これまでと)様子がちがって、何か不自由をおかけしてませんか?」という問いかけなど、スタッフ自身が(トマムに)不慣れななかで、既存ゲストへ対応は.......どうやら、個人の資質によるものだったようで、会社としての配慮は示されること無くすぎました。
 星野リゾートにしてみればトマムは破綻して転がり込んできた物件、変えて行くのが当然で、以前を引きずっているゲストに何の配慮を...と反論されるかもしれませんね。お家騒動やら、本業の悪化で運営会社の交替が起こっただけで、トマム自体はさぁ〜というトマムファンの主張は100歩譲って呑み込んで、破綻したとしましょうか。破綻して、現経営者に行く末を託したとして、それでも二十数年続いてきた実績はあるじゃありませんか! 

 当サイト内でわたしは、現経営者の、過去(トマムのそれまでのあゆみや、培ってきたもの)に対しての敬意が感じられない事を指摘したことがありますが、その過去には、わたしたち自身も含まれているわけです。
 それ故、VIZの一件で火がついた星野リゾートへの反感は、現場のスタッフのお陰で軽減されつつもくすぶり続けて、幾度も再燃しました。

 タワーの外壁工事にしても同様でした。
 補修は急務だし、タイル仕様は維持が大変そうだというのは明らかでしたけど、それでもトマムカラーで統一された施設が織りなす景観を、わたしたちは馴染んできました。補修に際して「前の外壁は威圧感があると思っていた。」と聞かされて、気分の良いはずがないではありませんか。

「しばらくは生まれ変わったタワーの色に違和感を抱かれるかもしれませんが、これまで以上にトマムにおこしいただき、新たな景観をおなじみのものにしていただければ...。」と言うくらいの大人の挨拶ができないものかと不愉快でしたが、違和感があるなら来ていただかなくて結構と言うのが星野リゾート姿勢となれば、妙に納得出来る状況でした。おつきあいもそろそろ限界ですねとなるのが、自然のながれですよね。

 アルファ・リゾート・トマムへの執着が仇になっての融通の無さ...と言われそうですが、でも付け加えれば、トマム時代までさかのぼらなくても、この種の不快感はくりかえされているのです。

 最もわかりやすい具体例がレストランですよね。
 雪花、SEKKA、プラチナム、どれもが星野リゾート単独運営以降にガレリア桃里のスペースに開業し、短期間で閉店した店ですが、案内があるのは開業の時だけ。新規店は既存にすり替わっただけなのに、閉店情報が皆無なので、わたしたちも最初の頃は混乱したものです。

 SEKKAがイタリアンフレンチなら、洋風会席の雪花とは別の店?
 いやいや、SEKKAは雪花の場所に出来てる...と言う事は、雪花は1年でおわり?なんで? 評判よかったのに....とひねった首を戻す間もなく、公式HPには新たにプラチナムオープンのお知らせがUP....。え?SEKKAはどうなったの?と、利用したことのあるゲスト(あるいは、存在を知ってて利用を予定していたゲスト)が疑問をいだくことは明らかなのに、閉店の案内(利用者へのお礼と、利用予定者へのお詫びです。)を怠るなんて。ゲストにも関係スタッフにも、失礼な話じゃありませんか。何だか、使い捨てを連想させられて、不快でした。

 「新たに料理長を迎え、昨年ご好評ただいた雪花の料理に、料理長の得意分野、イタリア料理を融合してお届けします。これを機に店名も云々....。」なんて案内は、めまぐるしくレストランが変わり中でいちいちやっていられない....と言う程、たいした労力でもないはずですが、星野リゾートは、無くなるものには無頓着ですよね。昨年よりも今年、半年前よりも今回...利用を重ねながらゲストの方ではデータが蓄積されていくのに、ホスト側でブツ切りにされてたのでは...ねぇ。トマム二十数年の歩みがどうこういう以前の問題に思えます。

 過ぎたもの(こと)を省みないのは、先への意欲の根拠になる所為であはありません。
 それは単なる無礼というもの。そして、我家の価値感においては、再訪の足を留める決定打のひとつでした。。トマム自体は今なお大きな魅力を有しているとは考えますが、残念ながら運営会社の姿勢は、現場のスタッフも多くが変わった現状では「気にならない」とは言えなくなりました。

 今後は、大事な記憶と向かい合って、良い時の思い出話を咲かせましょうか。
 

                                       12/01/26