MARGHABリネンのクオリティ

 ヴェニスで買ったテーブルクロスを長いこと愛用して、そろそろ新しい物をと思い立ったところ、店はリネンの取り扱いをやめてしまっていて大変だったという話は既出のレポートですが、紹介された別の店から見本のイメージが届くのを待つ傍ら、わたしは今後のことを考えてました。その店に好みの商品がなかったら、その店とずっと先も連絡が取れる保障は無いし(そう頻繁に購入する予定のないアイテムですから...。)あてに出来る店が一つだけと言うのはいかにも“無防備”ではありませんか。
 たまたまヴェニスで見つけたものの、他の都市で同じような感じのリネンを見かける機会は無かったし...と、記憶をたぐるうちに、ロンドンのアイリッシュリネン・カンパニーを思い起こしました。そもそもはこの店で買ったハンカチが、我家の初“シャドウワーク刺繍がほどこされたリネン”だったです。でも、公式HPでの商品紹介はごく一部。テーブルリネンに関しては、アイリッシュリネン素材のシンプルなものばかりで、もとめる雰囲気の商品との縁は薄いように感じました。
 そこで、試みたのが、商品名での検索でした。“organdy,”“tablecloth”等のキーワードで、好みの商品を扱っている可能性のあるリネン専門店を特定することからはじめようというわけです。いくつか、オンラインで購入もできる店は見つかりましたが.......それよりなにより、見つけてしまったのが、これ! 欲しかった!というテーブルクロスやプレイスマットの数々! 欲しかった!と過去形なのは、それら、オーガンジーに刺繍やアップリケがほどこされた綺麗なリネンは、どれもが、SOLE OUTのもので、しかも大半はオークションを通じて販売されていた様子だったのです。

 そしてもうひとつ、共通していたのは、欲しかった!と思った商品はどれも、MADEIRA、またはMARGHABのLINENだったということです。MADEIRA は、ポルトガルのマデイラ島ですね。ここで作られる手刺繍のリネンが有名だった時期があったようで、MAARGHABはその中でもデザイン、テクニックや品質等に定評があったブランド...のようでした。正しい読み方がわかりませんが,ファミリーネームがそのままブランドネームになったようで、その名を継ぐ者はいなかった....のでしょうね。MARGHABのリネンはヴィンテージ、アンティークとして取り扱われている.....らしいと判ったところで、わたしは、MARGHABのコレクションを保有しているミュージアムのショップに、購入可能なMAGHAB LINEN(具体的にデザイン名も記載して)について問い合わせました。回答は、あいにく販売物はハンカチくらいしか残っていないという残念な事実と、ebayで購入が可能だろうというアドヴァイスでした。
 せっかくの情報を活かさなければ、問い合わせた意味が無いとばかりに、ebayの利用に踏み切ったのが、3月下旬のことでした。
 
 MADEIRA LINENの出品は250前後、そのうち我家で用途のあるテーブルリネンに限定すると選択肢は約半分、そのうちデザインやコンディションなど、条件をしぼっていくと、そうそう食指がうごくものはありませんが、そこに、MARGHABのキーワードを追加すると、商品は10分の1以下で、おまけに大半がタオルなんですね。タオルを買うならハンカチを買うわけでね....まあ、毎日毎日欲しくてたまらないアイテムが出品されるのも困りますが、サイズの合うテーブルクロスなら、数ヶ月で、3〜4枚だったでしょうか。どれにも縁は有りませんでした。

 縁がなかった理由は、素材がオーガンジーではなかった1枚以外はベースの生地とモチーフの色が同色で、もとめている雰囲気とは違っていたことに加えて、時差のリスクがあった為です。オークションの終了が夜中か明け方か..では、がんばりにくいんですよね。

 最初に縁のあったNARGHABのリネンは右上イメージの、テーブルクロスではなくテーブルランナーとカクテルナプキン(コースター)のセットでした。ご覧の通りに、単色のシンプルなセットですが、これは実は大変に美しいものだったのです。オーガンジー生地のハリと艶、透明感が、MARGHAB待ちの合間に気に入って購入したMADEIRAのリネンとは違うものでした。精密に仕上げられた刺繍には、迫力さえただようようで.....MARGHABのことを何も知らなくても、ひとたびMARGHABのリネンを手にすれば、それが特別なものだと判るでしょうという、とあるサイトの言葉を思い出しました。

 特別なものだと判っている人が世の中に少なくないようで、MARGHABか否かで、商品の価格に随分な差が生じる様子に、ヘエエ〜?と目を見張っていたわたしも、特別なものには特別な価格もやむなし...と理解出来る気がしました。百聞は一見に敷かず..とはよく言ったものですね。
 カプテルナプキンはドイリーに、プレイスマットは、テーブルセンターにも代用出来るし...と、テーブルクロスの他にも選択の枠を拡げた頃、理想のパターンを見つけました。MARGHABではHortensiaのパターン名で発売された紫陽花のデザインです。シックな色合いのオーガンジーに、色糸使いのシャドウワーク、生地のフィルター効果で淡い色調で浮かび上がる花(花じゃないかもしれないけど、この場合は花と言いたい。)の美しさといったら!!!出品されたのはプレイスマットとナプキンとカクテルナプキンの24枚セットでした。(各8枚)気合いが入りましたが、オークション終了日は、よりによって、わたしはTDRを目指して新幹線の中でした。しかも終了時間は東京駅到着直前という悪条件。(起きている時間帯だっただけまだマシと思うべきでしょうか...。)
 
 横浜を過ぎた辺りで、わたしはebayにアクセスを試みました。終了時間の延長はないebayでは、終了直前の数秒間が重要なんですが、数秒前まで引っ張るのは無理なので、品川を通過前までに余裕を持って入札を終えて、結果はTDR閉園後にミラコスタで確認の予定でしたが、ページをひらいて、価格を見たとたんに、段取りは崩壊しました。
 ......1500ドルを越えていたんです。
 数ヶ月間、MARGHABリネンのページでも見たことのない数字ではありませんか。
「え〜?」ってなもんです。 枚数が余分にあると思いきって使えるから良いかも...という気分は反転、本当は8枚も必要ないし、ナプキンは使うことないしなどと,余計なものが気になってしまうわけで、そうなると気合いなんてもろいものです。まあ、わたしとしては常識的な状況に陥った(立ち返った)ということでして、その間にも価格は上がっていて、1700ドルを越えるのを「ひえぇ〜。」と(頭の中の声)眺めながら、品川を過ぎたのでした。結局、ビックリしただけで、何のアクションも起こせずに終わりましたが、縁はひと筋繋がっていたようで、しばらくの後に、MARGHAB Hortensiaのテーブルクロスとナプキンのセットの購入が叶いました。(一番上と以下数枚のイメージ。左上は、花のモチーフがMADEIRAの、騎士の方がMARGHABのリネンです。その上はMARGHABのアイリスパターン。)

 新幹線の中で値上がって行くのを眺めていたセットとは色違いで、もっとも欲しかった色目ではなかったものの、プレイスマットよりも活用機会のあるテーブルクロスとナプキンの組み合わせです。ナプキンはともかく、本来探していたテーブルクロスの出品に、わたしは、先のプレイスマットセットを逃した(入札もしませんでしたが)経験をいかして、それなりの価格を覚悟していましたが、ありがたいことにそれほど沸騰はしませんでした。
 それでも、最近ヴェニスから購入した新品のクロスよりは高いわけで、わたしは、出品者に、商品の発送には価格に見合う保険をつけて欲しいとリクエストしました。

 USPS( アメリカ郵便公社)の国際郵便にもいくつか種類があるわけでして、多少の送料がかかっても郵便物の追跡ができて、万が一の場合には賠償がきくオプションを、わたしは希望したのでした。先方(個人ではなく主にリネン類を扱うアンティークショップ)の返事は早く、一応丁寧なのですが、肝心の一言が抜けてる感じで、久々に....壁を感じました。
 例えば、発送方法別に送料とサービス内容(所要日数や、追跡の可否、受取りの際にサインが必要かどうか等)を知らせてくるものの、保険についての説明がないわけです。ただ、Fed Exの送料(一番高かった)も知らせてくれました。 1ヶ月経つのに届かないとか、荷物がどうなってるのか 尋ねてもまともな回答が得られないとか....ネット上で“お悩み”コメントが少なくないUSPSよりは、詳細な追跡が反映されるうえ、事故時の保障もあるFed Ex! わたしは迷わず選択して、送られてきたインボイスに従って、支払いを終えました。ところが、支払いの確認、発送予定日等が書かれた返信の発送方法はUSPS EXPRESS MAIL となってるではありませんか。EXPRESS MAILも追跡はできますが....別途保険料がいるはず....それより、わたしはFed Exの送料を支払ったのに....ということで、(発送方法がEXPRESS MAILとなってるけど)ちゃんと、Fed Exで送ってくださいね!と、確認のe-mailを送信しました。
 すると、返ってきたのは「どうして?」という内容なのです。
 
 『あいにくUSPS以外では対応できないのです。
 でも、どうして、Fed Fxでなくちゃだめなんですか?USPSで何かトラブルでもあったんですか? EXPRESS MAILは、追跡番号もあって、受け取る時にはサインも必要です。保険はついてないけど、でも、たわしはこれまで沢山の荷物をUSPSで発送しましたが、一度もトラブルはありません。あなたは、何かありましたか?でもEXPRESS MAILは大丈夫です。Fed Exは送料が高いだけです。高価な商品を、わたしはいつもEXPRES SMAILで送ってますが、問題はありませんよ。ドントウォーリー。』
 日本語にするとこんな内容でした。

 いやいやいやいや...Fed Ex の送料を知らせてくれたのはそちらでしょ。わたしはその送料を支払ったでしょ。USPSで トラブルにあったことはないけど、日本のサイトではトラブルの経験談をみることもあるので、だから、保険をね....と返信メールを作成中に、5分と立たずに先方から続編が送られてきました。

『あなたが、それでもFed Exでなきゃと思うならわたしはUSPSに行って送料を確認してきます。でも高いと思うんです。90ドルくらいかと....。Fed ExはUSPSと提携してるので、USPSで送るのと同じようなものなんですよ。それでもUSPSはイヤですか? Fed Ex は送料が高すぎるので使ったことはないんです。わたしは、EXPRESS MAILで何の問題もないと確信してます。ドントウォーリー!』

 いやいやいやいやいや、ウォーリーするでしょう。
 いえね、わたしはUSPSがイヤだと言ってるわけじゃない。Fed Exの提案があったから、それでとお願いしたわけでね、追跡ができて保障が付いているという条件さえ満たせば、どこでもいいわけですが...と返信しながら、おそらくは、Fed Exの送料が違っていたかなにかだったのだろうと推して、支払った送料がFedEx のではなく EXPRESS MAILの価格ならEXPRESS MAILで発送してもらってもかまわないので、保険をつけて欲しいのだと、最初のリクエストを繰り返すことになりました。

 でも、先方の記載でまちがっていたのは、送料ではなくFed Exそのものだったようです。

『混乱させてごめんね。Fed Fx はわたしのミステイクでした。EXPRESS MAILのことだったんです。USPSのスタッフはいつも保険はつけられないというのですが、わたしはまた確認してみますね。つけられるようなら、もちろんつけて発送します。ドントウォーリー。』

 .......ウォーリーでしたけどね。もっと早い段階で間違いに気づかないかなあ?USPSのHPに保険料の一覧もあるんだけどなあ...。ハッキリ、スッキリさせたい事はありました。
 ただ、1を聞いて10を知る...のではなく、1を聞いたら10の混乱がついてきそうな感じで、この後は、わたしは先方の判断に任せようと思いました。海外発送も日常的に行っている(らしい)ショップなのです。彼女達にとっては何でもないことが不安を感じる事実は事実として、万が一に備えて..というこちらの意図がつたわりにくいのは、確かに、これまでトラブルを経験していない証のようなものですしね。半分根負けしたような心境でしたっけ。

 ただ、発送後に追跡番号を知らせてくれるメールも続けて2通届きました。さっきのは間違いで、正しいのはこっち...というわけすが、さっきのもこっちのも『Hi ※※※( 名前)』の※※※が、わたしの名前じゃないんですよね〜。
 わたしは※※※ではなく○○○ですけど、わたしの荷物の追跡番号は?と問い合わせたところ、はじめに受け取った番号が送られてきました。間違ったのは番号ではなくて、名前だったみたいですが、なんなのでしょうねえ。やっぱり今回の相手はは少々そそっかしいんじゃないだろうかと、感じざるをえない間違いの連続.......。(ちなみに保険は商品価格よりも百数十ドル安い価格で申告されてました。)

 言い間違い、書き間違い、勘違い......まさか商品入れ間違いなんてことは...。
 保険つきの荷物の現在地を追跡しつつも、この荷物の中味は......という不安はつきませんでした。商品間違いで返送、交換となった場合に、支払った関税の返金手続はどうやるんだっけ?なんてことを調べたくらいです。
 受け取った荷物をあけて、紫陽花の柄を見るまではマイナス思考に取り付かれた日々でした。

 でも、結果よければ全てよし! 
 手に取ったMARGHABのテーブルクロスは、まさに見とれるばかりの美しさでした。
 葉はオーガンジーのアップリケに葉脈は同色のステッチ、
茎はしっかりと盛上ったライン、シャドウワークで仕上げられた花の色のやわらかさ! 

 そっか...。
 こんなに綺麗なものだったんだとしみじみ眺めて、畳んで、翌日には拡げて、また眺めて、見飽きるがない気がします。折角入手が叶ったモノなので、使わなくては意味がありませんが、しばらくは、醤油やソースからは遠ざけておきたい1枚です。
 10数日間のストレスはレアな経験でしたが、それよりレアなMAEGHABのリネンの前にすると、たいした事じゃなかったねと笑える気がします。

(イメージ上から5枚目の左側部分がシャドウワークの裏面。下から2番目はクロスとセットのナプキン。生地は麻、カットワークのオーガンジー部分にHortensiaのモチーフ。)


                                     11/08/22 

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