始まりはティーバッグ
いつの頃からか、紅茶の専門店 (コーヒーではなく、主に紅茶を飲ませてくれる喫茶店をさしています。)が、珍しくはなくなりましたね。香りを重視して、店内は禁煙という店も増えているようです。
以前は、喫茶店で紅茶というと、レモンティーかミルクティーぐらいのもので たまに、アールグレイのアイスティーなんていうメニューがあったりすると、それでもうそこは「こだわりの店」でした 。今と比べると、評価の基準は低かったようです。
記憶にある限り最初に飲んだ紅茶は「リプトンの黄色いティーバッグ」
だったと思います。ロイヤルコペンハーゲンの缶にひかれたり、トワイニングのネーミングに憧れたりして(「あたし、紅茶はプリンス・オブ・ウェールズが好きなのよね。」と言ってみたかっただけのことです。)缶入りの紅茶を買うこともありましたが、種類も増えて、簡単、便利なティーバッグは母に絶大な指示を得ていたので、缶の中味はさっぱり減らず、 フォションのアップルティーの出現まで、わたしの家におけるティーバッグの君臨は続きました。
フレーバリーティーはフォションから(ただし、アールグレイは別)
思えば、アップルティーもひとつのブームだったのでしょうか...。
当時、フォションは高島屋でしか買えないと言われたブランドでしたが、輝く金色の缶は、どこからかやってきました。
フォションに限らず、紅茶のポットにリンゴの皮を入れて香りを付ける
方法も良く紹介されていて、わたしが、フレーバーティーという言葉を知ったのもこの頃です。フルーティーな香りが甘味さえ感じさせるアップルティーは、その他の紅茶と区別されて、その後長く、わたしの家のお気に入りになりました。
結婚前、主人が「ウチでもフォションを飲んでる。」といった時、「ラッキー。」と思ったものです。
あとで分かったことですが、当時、義父は、3度の食後にコーヒー、
おやつの時間にコーヒー、お客があればまたコーヒーという珈琲党でした。
人気の高かったフォションは、定期的な頂き物だったらしく、帰省のたび
に見かける缶を見て、主人は勘違いしたようです。
この時の思いが今も持続しているかというと、残念ながら...と言わざるおえません。アップルティーはおいしいと思うし、フォションの紅茶を頂くことを、わたしは歓迎しています。でも、年末のパリで、綺麗に飾り付けられたフォションの店の写真は撮って来ましたが、お土産に紅茶は買って来ませんでした。
平行輸入が盛んになってディスカウントショップで高く積み上げられた金色の缶を見た時、買いやすくなったことを喜びながらも、興醒めしたことは確かです。簡単に手に入るということが、執着を薄れさせました。
そして、マリアージュを知るまで、コーヒーを飲む事が多くなっていたような気がします。
こだわりはマリアージュ・フレールから
少し年上の知人に、半ば強引に連れて行かれたティールームで、初めてマリアージュのお茶と出会いました。
いただいたお茶は、マリアージュのオリジナルで、いろんなフルーツとお花のミックスフレーバリーティーでした。これは、おいしかったです。
8年たった今でも、我が家に常備してます。友達も御近所さんもお客様も、例外なく、お茶を入れたわたしがうれしくなるようなリアクションをしてくれます。
その店のショップコーナーでは、大きな黒い缶にいれられたお茶が棚にたくさん並んでいて、お茶の特徴を聞きながら、棚から下ろされて蓋が開けられた缶の中の、葉っぱの色を直に見て、香りを確かめて、そして、100グラム単位で買うことができました。その日、3種類のお茶を買って帰ったわたしは、メニューと一緒に出されたお茶の本で発見したにわか知識を、主人相手に披露しました。
「あのね、オレンジペコってね、種類じゃなくて、葉っぱの等級なんだって!」
「????、トワイニングのオレンジペコのオレンジ色はなんなんだ?」
「それにね、ダージリンていっても、い〜っぱいあるの。農園の名前が付いてるんだよ。キャッスルトンとか....ジエルとか...」
「じゃ、ダージリンと名乗ってんのは、何モンじゃい?」
「それでね、春摘み茶とかあったよ。新茶だって。はっぱが、紅茶なのに 薄い緑色なの。なんか、日本茶みたい。」
「ひえぇぇ! その本、買おうぜ。」
「だって、お店のだもん。メニューにあるお茶の説明が書いてあって、本を見て、どのお茶にするか決めるんだもん。」
「..........。」
と、いうわけで、その週の週末から、主人とわたしはせっせと店に通って、紅茶にこうるさい人間に変わっていったのでした。
00/10/05
グレードの基本は葉っぱの位置 お茶の価格とグレード (補足レポート)
「スペシャル・ファイネスト・ティッピー・ゴールデン・フラワリー・オレンジ・ペコ」(SFTGFOP)というのが、100グラム10000円の(日本国内の)価格がついているキャッスルトン(マリアージュ、夏摘みのダージリン)のグレードです。
いわゆる最上級品です。グレードが下がるごとに左端のSからひとつづつアルファベットが取れていきますが、だからといって「なあんだ。オレンジ・ペコは下から2番目じゃん!」などと早まってはいけません。
この7つのアルファベットの内、紅茶の樹の中での葉っぱの位置を表すのが、右3文字のフラワリー・オレンジ・ペコ(FOP)なのです。樹の1番上のやわらかい若い葉の部分で綺麗にカールした新芽(チップス)をを多く含むFOP対して、枝先から2番目に若い葉っぱがオレンジ・ペコ(OP)と名付けられています。つまりは、オレンジ・ペコは上から2番目ということですね。良かった。
3番手にペコ、その次にペコ・スーションと続きますが、ややこしくなるので省きます。(3番手以降になると、グレードを主張する意味もあまりないでしょうし...。 )
それじゃ、FOPの前に大層に並んでいるSFTGはなんじゃい?ということになりますが...これは簡単にいうと形容詞です。
それが多いほどいいといわれる新芽をいっぱい含んでいる場合、フラワリー・オレンジ・ペコはゴールデン・フラワリー・オレンジ・ペコになって、も〜っといっぱい含んでいれば、ゴールデンの前にティッピーがつきます。
そして、その新芽の質が特に良ければ、ファイネストの一文字が追加されて、最高のできばえならば、すなわち、スペシャル・ファイネストのでき上がりです。
オレンジ・ペコは新芽をほとんど含まない若い葉っぱの部分ですから、基本的に新芽の状態を示すこれらの形容詞は付きません。
オレンジ色のパッケージがポピュラーなトワイニングをはじめ他のメーカーのものも、オレンジ・ペコという名称で販売されているのはセイロン茶が多いようです。セイロンと言えばいいものを、いきなり茶葉のグレードを名前にするから、長いことわたしは勘違いしてしまいました。
一般論として、グレードが下がればお値段も連動しますから、10000円なんてとんでもない! SとFはいらないから手頃なとこで手を打とうという考えは間違いではありません。
実際にTGFOPグレードになるとマリアージュでも1600円という価格のものがあります。でも、特別な日の為に、Fがもうひとつ付いたものを...と
思ったら、(知らなかった方は)素直に驚いて下さいね。
産地による価格差が激しく、同じダージリンの夏摘みというグループの中でさえ、100グラム6800円のものもあれば、2200円のものもあるのが、FTGFOPのグレードなのです。
参考図書 マリアージュのお茶の本

茶園は一種のブランド 安心を買うか、自分の舌で見極めるか... お茶の価格とグレード (補足レポート)
「ピュッタボン、入荷しました。」
「グームティー、限定販売。」
評判のいいティールームで、こんな表示を目にしたことがありませんか? 共にダージリンです。ダージリン地方に数多くある茶園の名前がそのままお茶の名前になってます。アッサムやセイロンにも多くの茶園がありますが、収拾がつかなくなるので、焦点をダージリンに絞ります。
マリアージュのティーリストを見ると、茶園の名を持つダージリンが25種類前後あります。ダージリン地方にある茶園は100以上と言われてますから、茶園の名前で流通しているお茶は、名園で育てられたエリートということになりますね。ジュンパナ、マーガレットホープ、ピュッタボンといったところはひとつ上をいく、エリートの中のエリート、キャッスルトンやナムリンアッパーは、いわゆる由緒正しき、超エリート。...強気です。
これらのエリートたちの誰と付き合うか、あるいは付き合わないか、は個人の価値観です。一番良いものに価値を見い出すのは簡単ですが、無理な付き合いは不幸の始まりだと思っているので、我が家には現在、キャッスルトンもナムリナッパーもありません。パリのマリアージュでは買って来ましたけどね。(高いお茶ばかりを買い漁ってしまった...。)
正直な話、お値段ほどには味の差を感じることはできませんでした。
茶葉の立場を考えていうと、素材を十分に活かしきることができなかった、というべきでしょうか...。
ジュンパナやブルームフィールドが我が家のお気に入りですが、それでも、昼に夜にガブガブ飲むのは、苦しい..(家計が。)
でも、マりアージュで扱う夏摘みダージリンのFTGFOPのグレードのお茶を見た場合、大半は2500円前後で買うことができます。こちらはほぼ全ての種類をいただきました。
バラスン、オレンジバレー、スプリングサイドなど、気楽なおつき合いが可能なダージリンの、おいしいブランドはたくさんあります。もちろん それぞれに味は異なりますから、楽しみながら、悩んでみてはどうでしょう?
摘み取り時期による味の差を楽しむ
左.下イメージ
春摘みのジュンパナ。
わかりにくいかもしれませんが、薄い緑色の若い葉っぱが多く含まれています。
茶殻では緑色の特色がいっそうハッキリと分かって、緑茶のように見えることもあります。

春摘みと夏摘み(時に中間摘み、秋摘みがあります。)の違いは見た目も味もとっても分かりやすいものです。
新茶として出回る春摘みのお茶は、文字どおり若葉の色と香り!
薄い水色とまろやかな味を、物足りなく感じる方がいるかもしれませんが、なぜか、日本とドイツでは人気があるそうです。
成熟した夏摘みのお茶は、品質も安定していて豊かな味と香りの中に、それぞれの個性がハッキリと表れるといわれますが、春のお茶はデリケート! 名園のお茶だから..と油断してると、「お白湯」になりかねません。
1年に2、3度、味のない紅茶をわたしは作ってしまいます。
茶葉の量が少しくらい少なくても、抽出時間がちょっと短くても、夏のお茶はがんばれるのに春は...いけませんね。お茶の赤ちゃんですもの。
紅茶になるか、お湯になるか..責任はみんなこちらにあるという感じです。
でも、クリスタルのように輝く金色のお茶から薫りたつ若々しさは、完成された夏のお茶の芳香よりも、わたしは迫力を感じます。
茶園によっては得手不得手があるらしく、春に最上級品を出荷して、夏はお休みするところ、あるいはひとつグレードの低いお茶を出すところもあれば、夏摘みに品質を絞っているところもあるようです。(両方とも最高品質のお茶を出荷する茶園、お手頃のお茶を出荷するところも..)
多く出回る夏摘みのお茶と違って、春の新茶はやはり限りのあるものです。お気に入りのお茶が見つかれば、季節を待つ楽しみも付いてきます。
次の春が、待ち遠しいでしょ?
00/10/20
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