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 2009年、久しぶりに訪れたルスツが期待以上だった為に、ついにスキーシーズンも誘惑にかられました。
 場所的に、雪質はおそらくトマムほど素晴らしくは...ない。
 晴天率も、トマムほど高くはない。道内最大級を誇るルスツのゲレンデを、20数年馴染んできたトマム以上に楽しめるとは、思えない。
それでもルスツを選択したのは、かつてトマムを選んできたのと同じ理由からです。
 スキーをするのではなくスキーも出来る滞在を....ゲレンデ以外で、どれだけ快適に過ごせるかを思った時、迷いはふっきれました。

 



     

レストランと食事

 2010年スキーシーズン、1月末の平日のルスツでは、夕食営業レストランは8店から10店。わたしたちが滞在中は9店からの選択が可能でした。おまけに、これは現地で判ったことですが、風花には鉄板焼きコーナーが、雪花亭では寿司カウンターが稼働中という、充実の食環境が整えられていました。公式HPに紹介されている料理の一例をみても、どこもおいしそうで、久方振りに、利用したいレストランが多すぎて悩むという、嬉しい問題に直面することになりました。
 前回利用した風花、ベルビューの料理をもう一度!と思う一方で、冬期限定営業の店からの誘惑も裁ち切れず......。結局朝食営業している(他に利用の機会がある)風花の夕食をあきらめ、わたしたちは、出発前に歓天とベルビューの利用を決めました。この時点で、鉄板焼きと寿司カウンターの情報が無かったことは、ある意味では幸いだっだと思いましょう。

 各レストランの営業の有無は、ルスツでもある程度の期間を区切って決定されるようで、確定の時期に規則性があるのかどうかはわかりません。たとえば、今回、3週間程前の時点で、風花やベルビューは営業予定のことでしたが、歓天の営業が決まったとの案内を受けたのは利用日の10日前でした。選択肢が多い上に予約システムも導入されていませんから、それでゲストが不自由を訴えることはないのかもしれませんね。
 わたしたちの場合も、北海道で中華料理を頂くのは久々なので、叶うならばとの執着はあるものの、営業しないなら、その時には風花を利用“できる”し...という気分でした。
 
 修学旅行と思われる大人数の団体客も目立つ時期で、ルスツはさすが...の賑わいでしたが、団体客には夕、朝食ともに、別会場が使われている様子で、一般ゲストの食環境への影響は無かったように思えます。
 朝食は8時過ぎで、風花は待ち時間なし、オクトーバーフェストは10分ほど並びましたが、夕食はベルビュー、歓天ともに、すぐに案内を受けることができました。オリジナルのメニューも日付入りで用意されていて、予約利用の感覚と殆どかわらず、レストランの(利用時間の)予約が出来ない為に自分たちの予定が狂うという類のデメリットは、今回もいっさいありませんでした。
 それでも、食後の予定は立てにくいのは否めませんし...団体客では無く一般客だけで混雑する時期には、それなりにストレスが生じるのかもしれませんね。18時前に入店すればお得なメニューがある店もあって、ルスツ側でもレストラン利用時間の分散を試みてはいるようです。(公式HPでは18時からの営業と紹介されている店も、チェックイン時にもらった案内では全て17時からとなっていました。)
 
 ただし、居酒屋かかし以外の各店は、クローズが20時30分、または21時。
 コース料理の場合、19時過ぎにテーブルについて、店を出る時には22時をまわってしまって...ということが多かった我家には、ルスツのレストランの閉店時間は幾分早いのですが、閉店時間の事実に気がついたのも今回の2夜目という有様で(居心地が悪くないとの証とお考えください)....今後は、少し早めの入店を心がけなくてはと思います。
  


歓天 (ノースウィング  4F)

 冬期のみ営業の中華料理店ということで、早い段階で、わたしたちの利用の第一候補に上がった店です。
 スキーツアーのパンフレットに、おそらく夕食券対応メニューと思われるものが紹介されていて、かなりいい感じでしたし、公式HPではイメージだけではなく、料理の内容が明記されていたので、初めての利用を促す助けになりました。

 とはいえ、紹介のコースには北京ダックもフカヒレの煮込みも組み込まれてはいません。
 今のルスツなら、風花やベルビューのメニューの充実ぶりから推して、歓天のコースがこれ一つということは無いだろうとの期待から、わたしは他のコースの内容を、具体的には北京ダックやフカヒレが組み込まれたコースがあるかどうかを問い合わせました。ちゃんと、ありました。北京ダックと、そして、フカヒレは姿煮ではなくステーキで、しかも、タラバ蟹の葱・生姜炒めまで付いている、わたしたちには王道ともいうべきコースです。もちろんフカヒレレはステーキではなく姿煮への変更も出来るという.....それで充分!ではありませんか。
 
 ところが、おどろくなかれ、そのコース価格が6825円(夕食券にプラス2100円)だったのです。悲しいことに、価格を聞いて、わたしたちの決断が鈍りました。お値段から料理がイメージできないんですね。ステーキというからにはフカヒレも一応固まりにはなってるんだろうか...タラバ蟹はピンからキリまであるしねぇ、北京ダックは一人1枚かもしれないよね...とあれこれ想像を巡らせた結果、せっかくなら、少し予算を上げて食べ応えのあるフカヒレとタラバ蟹を頂こうということになりました。
 既存のコースをベースに、こちらからのリクエストは、全体量は増やさずに北京ダックは一人2枚。フカヒレは姿煮が希望だけれど、ステーキがお勧めならステーキでも構わないこと、そして、今回は利用を諦めた風花のタラバ蟹の天婦羅に代わるラタバ蟹素材の料理を一品、ということでした。

 すると、出発3日前に送られてきたオリジナルのコースには、 特大フカヒレの姿煮の料理名がありました。“特大”の二文字にTomokoさんは大喜びでしたが.......現物の料理が上のイメージ(一皿二人分)。見た瞬間、驚愕のあまりに喜ぶことを忘れたほどの大きさで、ほんとに、表面の一部が黒っぽかったこともあってか、ちょっと怖いくらいに特大でした。中はおなじみの淡い金茶色で、味付けもしっかりしているけれど濃くはなく、もちろん恐れること無く完食しましたが、一挙にお腹は膨れました。
 特大フカヒレの前には、料理は二品。
 ジャスミン茶の香りの特製ソーズで仕上げる中華風刺身(右イメージ。綺麗に盛りつけられた料理にソースをかけて混ぜ合わせます。)は、さっぱりとしたソースと沢山の野菜の食感が食欲を増進する前菜で、続いての、豊浦産帆立貝柱と黄韮の塩味炒め(下イメージ)は、塩が素材の甘みを引き立てるかのように、口当りのいい仕上がりでした。
 振り返ってみれば、これもまた立派な帆立でして...自分たちにはボリュームがありすぎることは一目瞭然なのですけど、味わっている時には、なかなか....警戒心も鈍るものでして、わたしたちは、4品目の北京ダックあたりで食べ過ぎを自覚し、タラバ蟹のチリソースで、一挙に限界を悟るハメに陥りました。
 実は、正直に言うと北京ダックが、少々好みとはちがっていまして....味ではなく、主には食感なのですが....わたしはクレープのようにしっとりとした皮で巻かれたモノが好きなのですけど、歓天でつかわれていたのはトルティーヤに近い感じだったんですね。
  で、まあ、おいしさのあまりに暴走していた勢いが、ちょっと鈍ったとでもいいましょうか、北京ダックが満腹を意識する切っ掛けになったような気がします。
 そうなると、もう、「おししそう!」な料理を目の前にしながら、なかなか先に進めません。お腹が一杯という黄色信号が消えないわけです。事実一杯になって当然なほど食べてるので、黄色どころか、赤信号が付くべきなのでしょうけど、それは、見事なタラバ蟹を前に、黄色と赤の判別も付かなくなった状態を察してくださいね。
 わたしは最初、殻の方が上になった2本は、飾りだと思いましたが、実は身が詰まった4本の太い脚.....。もはや手放しでは喜んでいる場合ではありませんでした。
 5、6年前まで、桃里で幾度と無く繰り返してきたボリューム調整の失敗、をルスツで再び...というわけです。

 一皿の『量』が多い....。もっと早くに判るだろうことに、コースの半ばになって、わたしたちは向き合ったのでした。
 そもそもは、単品メニューでは特大フカヒレは定番のコースを越える価格が付いていたわけで、全く同じものではないかもしれないけれど、その特大と名乗るものがが出てきたからには、コースの他の料理はそれなりにコストダウンがはかられているはず....メニューを見る限り高価な素材が並んでいたので、質を重視の『少量』だろうとの思い込みもあったのです。
 数を指定した北京ダックはともかく、あとは...と油断していたところに、あまりに贅沢なタラバ蟹のチリソース....。 しばし、唖然....でしたが、いうまでもなく『大好物』なのです。満腹信号が、黄色だろうと、赤だろうが、進まずにいられようかという誘惑の一品でした。

 右のイメージだけで、説明も不要と思いますが、これはね、少しくらい(お腹に)無理を強いても、お薦めです。

 和食や洋食と違って、中華料理は、大きくハズレることが(あまり)無いかわりに、格別にインパクトを受ける一皿との出会いも少ないものです。タラバ蟹のチリソースは、その格別の一皿だと、わたしは思います。
 海老や蚫のように、中華料理で良く用いられる食材ではありませんから、出会う確率が低い上に、北京ダックのように定番化した料理と違って、リクエストもしにくいですしね。
 葱・生姜炒めや、フカヒレとの塩味煮など、ルスツではタラバ蟹素材の料理が他にも用意されていました。
 北海道ならではの中華といっていいのかな?

 タラバ蟹を堪能しつつ、メニューを確認すると、つづくは、地場野菜と鮑のクリーム煮、牛フィレ肉(細切り肉ではなかった....。)と自家製唐辛子のピクルス炒め物、上湯チャーハンお茶漬け仕立て.....。もはやこれまでと、わたしたちはスタッフに部屋への持ち帰りの相談を持ちかけました。
 クリーム煮も牛肉の炒め物も、冷めてしまってからも食指が動くかといえば難しく、結局無駄にしてしまうのが目に見えているわけで、持ち帰るに無難なのはチャーハンですが、コースのチャーハンはお茶漬け仕立て。
 .......持ち帰ることはできません。それで、お茶漬け仕立てのチャーハンを持ち帰り可能な別の料理に差し替えてもらうことになりました。
 
 料理を残すか、いっそパスすればいいだけの話ですが、でも、一口でも食べてみたいじゃありませんか。
 ひとくち食べれば、おいしいわけで、残すなど、もったいないではありませんか。

 クリーム煮はまろやかで、炒め物は唐辛子のパンチが活きたメリハリのある仕上がりでした。あいかわらず野菜の味が濃くて、主役の鮑や牛肉を脅かしかねないインパクトを放ってました。
わたしたちは、後半の料理を(バチあたりにも)“がんばって”いただききましたが、本来はもちろん、がんばるまでもなく食が進むおいしさでした。 

 でも、タラバ蟹のチリソースあたりで(持ち帰りの話が出た頃)シェフも厨房で、大丈夫かな(わたしたちのお腹の具合が...ですね。)と思われていたとのことですから、完食に感心していただきましょうか。

 お茶漬け仕立てのチャーハンに代えて、持ち帰ったのはXO醤 風味のチャーハンとのことでした。パラパラ、サラサラの食感は、時間が経っても維持されていて、ここでもタラバ蟹がたっぷり。できたてを味わうことはかないませんでしたけど、、自分たちのコンディションを思えば、時間を置いた結果、おいしく味わえたと思います。持ち帰りは正解でした。

 それに、チャーハンを後回しに出来たことで、杏仁豆腐を味わう“余裕” ができました。

 実は、コースに付いていたのは、右側、北海道一のマンゴープリン(オリジナルのメニューに記載の料理名)でして、一の根拠は....シェフがそう思ってらっしゃるということらしく、いはば自信のデザートですね。プリンというよりもババロアかパンナコッタ系の食感で、風味も濃厚。シェフの言葉に納得の贅沢なデザートでした。
 ただ、別のテーブルに運ばれて行った杏仁豆腐がとにかくおいしそうで.........「さ、後はデザートですから!」(「がんばれ!」と励まされている気分)というスタッフのお勧めも、やはり杏仁豆腐とマンゴープリンだと聞かされると、唐突に、わたしはマンゴープリンだけで帰っていいいいものか?という気分になってしまいました。
 普通は帰るんでしょうけどね、でも定番中の定番ながら、仕上がりは千差万別なのが杏仁豆腐。大当たりもあればそれ以上の確率でハズレもあります。当たりかもしれないものを見せられれば、やはり試しておかなくてはということで、杏仁豆腐を一つ、追加したのでした。
 随分前にオーダーストップの時間も過ぎていたという事実は綺麗さっぱり失念しての追加で、しかも、料理を持ち帰る段取りまでしながらの『追加』でしたが、スタッフは、戸惑いも見せず、良く対応してくれました。
 お陰で、大当たりの杏仁豆腐を逃さずに済みました。
 今はなき桃里の杏仁豆腐の風味とトゥーランドットのそれの舌触りを合わせ持ったような絶妙さは、まさに好みで、もう一つでもスルンとおいしく頂ける気がしたほどです。
 グリーンシーズンに出会えないのが残念です。

 もうひとつ、惜しまれるのが、店構えでしょうか。
 それなりの様相を整えてはいますけど、印象は、バンケットルームなのです。当たらずとも遠からずで、ホールのひとつを歓天用に設えたように感じます。営業期間だけではなく店事態の存在も限定で、臨時仕様の雰囲気が....。
。料理やサービスのレベルの高さを思うと、もったいないですね。それに見合ったステージを...と欲が出てきます。
 なお、冬季限定営業の厨房を担うのは期間契約の調理スタッフかもしれないと考えていましたが、シェフはルスツで10年あまりになるそうで....常はクレッセントホール等を担当なさっているとのことでした。
 つまり、ゴルフシーズンも作り手はいる......ラウンジかどこかで中華デザートフェアなどやってくれれば、日に何度か通いたい。(販売でも、いいよ。)

  イメージの料理はデザート以外は二人分
                                       10/02/02 

 

 

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