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 おまけのページ、“EXTRA”の第2回目のテーマとして展開した紅茶の話は、2002年4月、晴れて独立することになりました。
 今後はCONTENTSか
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                           2004年05月14日
おことわり
 紅茶関連のコメントと情報はJUNの個人体験と経験によって知り得たことをベースにしています。
 影響を受けたもの、疑問の解消に役立った物は「参考図書」として明記していますが、専門的な知識の提供を目的とはしていませんので、いはば「紅茶の本」の類いに書かれているようなデータは、当サイトには転載していません。
 実体験に個人の好みと、思い込みと、幾ばくかの偏見 が混ざり合った結果の産物であることをご理解のうえ、お茶請け話として、ご覧ください。

     
ミルクティーを楽しむ.....幸せのキャラメル色

 
最高気温がひと桁になり始める頃から、我が家ではミルクティーの登場回数が急増します。不透明なキャラメル色と甘い香りは、優しさと暖かさを放っていて、口に含むよりも早く、幸せな気分にしてくれますよね。

 ところが、お茶といえばミルクティーの代名詞といわれる英国とは、ほら、水質が違うわけですから、キャラメル色もなかなか本場と同じにとはいきません。そもそも、多くの紅茶専門家が「紅茶に硬水は不適」とする理由のひとつに、(硬水の)ミネラルと(茶葉の)タンニンが反応して
お茶の色が黒ずんでしまうことを指摘しているくらいで、英国のお茶は大胆な色をしているようです。ストーンヘンジに行く途中の村で、わたしが一瞬コーヒーと見紛った、あの色ですね。 (前ページ、「コーヒー色のお茶」)そういえば、お茶が入れられていたヤカンは、ポットとして使ってはいけないと言われている金属製のものでしたっけ。どうりで、黒いお茶だったわけです。
 あの、おばちゃんに、「いけないのよ。」と教えてあげたら、なんと言うでしょう? 日本では、こうなのよ。と説明したら....。
「あら!それは違うわね。あたしたちはずーと、ずーと、曾おばあちゃんの代より、もっと前から、こうやってお茶をいれてるのよ。これで、おいしいお茶がちゃ〜んとできるのよ。ほらね、おいしいでしょ。そりゃ、だって、イギリスのお茶は世界一おいしいんだもの。」と言って、ドンッと胸をはられるような気がするのは、わたしだけでしょうか。
 春摘みのダージリンの透き通る黄金色と、若い香りや、渋みと甘味のデリケートなバランスなど、おばちゃんにはよそ様のことで、風土と環境に適して生まれたお茶の味に、誇りと愛情のスパイスをふりかけて仕上げたキャラメル色のミルクティーが、一番のおもてなしなのだろうと想像してしまいます。
 ただ、その時のわたしにとっては、イギリスで飲む紅茶と言うのは、雑誌などで「本格的な」とか「あこがれの」とかの形容詞が付けられて紹介されていた例のアフタヌーンティーだったわけですね。3時を過ぎたら、だれもかれもがおしゃれをして、優雅なティータイムを過ごしているわけではないことを頭では理解できても、イメージとして浮かぶのは3段重ねのトレーでした。正直、おヤカンには困惑したのです。さよならの時になっても戸惑いは残っていて、わたしは「とっても、おいしいお茶をありがとう。」という気持ちを、おばちゃんに十分に伝えきれなかったことを悔やんでいます。

 その時のお茶の、深くて、濃いキャラメル色は、まろやかだけどもコクのある味と対になって、わたしにミルクティーの定義付けをさせてしまいました。
 出し過ぎることなく、いかにして濃い色のお茶をつくるか....。英国ではお水が勝手にやってしまうことですが、ウチではわたしがサポートしなくてはなりません。 必要以上に茶葉の抽出時間を置かないというのは(わたしにとっては)固定化されたルールなので、濃い色の為に、少し、茶葉の量を多くしています。いつもは入れないポットの為の一杯....ですが、ミルクティーの時は例外。渋くならないか、心配ですか? 置き過ぎなければ大丈夫!
 よく、ミルクティー向きといわれるアッサムセイロンは繊細なダージリンと比べると、味に逞しさがあります。ブラックで試すと「ホっと一息、リラックス」というより「しっかりせんかい!目ぇ覚ませ!」という感じですね。お茶にケンカを売られているような気分で、わたしはあまり好みません。ミルクの優しさと出会うことで初めて、強さのうしろに隠れていた柔らかさが引き出される気がします。

 数年前から、我が家ではアッサム種のダンゴ茶(我が家専用名称。お茶をより濃く出す為に工夫された、CTC製法によるもの。Crush,Tear and Curl....砕いて、裂いて、丸めて...イメージできますよね。)をミルクティー用に購入しています。また、マリアージュグラン ボワ シェリ、(レピシエではモーリシャス島バニラティーナチュラルティー)非常に細かなブロークンタイプで、しかも茶葉の持つバニラの香りが独特で、幸せなキャラメル色とまろやかな味が楽しめます。


左はCTC製法のアッサム種。シロニバリ。
おだんご状に丸められた茶葉がお分かりになるでしょうか?






 


右イメージ 
粉のように細かい茶葉とバニラの香りが特徴の、グラン ボワ シェリ。
  

 とはいえ、味の仕上がりは、ミルクの優しさ次第です。主役は、お茶でななくて、ミルクかも....。と、なると、テレビの番組だったら、こんなふうに紹介されるところでしょうか?
「本日の特選素材! ミルクティーの為のミルク!」
                                        00/11/22 
                           



ミルクティーを楽しむ.....ミルクで決まる味まずは、低温殺菌牛乳)

 低脂肪乳、加工乳、成分無調整牛乳、低温殺菌牛乳、などなど、スーパーには様々な牛乳が並んでいます。付加価値をうたったものや自然に近い味を強調したものまで、一見、選択範囲は広く、好みの味にも苦労なく出会える気がしませんか?
 でも、残念なことに、わたしの中に刷り込まれているミルクのイメージは、小学校の給食に出てきたビン入りの牛乳なのです。おいしいとは思えなかったですね。給食のメニューはそれなりに変わるのに、牛乳だけは毎日1本....。10日続けば、大好物のショートケーキだって、あきるものでしょ? それが、6年間ですもの。しかも、10時とかではなく、お昼ゴハンと一緒に、です。いい加減一杯になったおなかに、牛乳1本の量は多かったし、それよりなにより、わたしはあの臭いと、飲んだ後にいつまでも残ベタついた感じがイヤで、うがいをしたくなったものです。
 冬になると、ストーブの熱で牛乳を温める同級生もいて、その臭いが教室内に充満していました。今から思えば、最悪のミルク体験ですね。もちろん、そのミルクをおいしく飲んでいた級友もいたわけですが、いずれにしても、多くの日本人にとっては、小学校で飲まされ続けた牛乳の味と臭いがミルクの基準になっていることには違いありません。
 おいしいと感じて飲んでいた人は、今もそれと同じ味のミルクを飲んでいるでしょうし、そうではなかった人は、もうあまり、ミルクを飲まなくなっているかもしれませんね。
 ふたつ半年上の主人は、味も臭いもイヤだったのにもかかわらず、残したら怒られたとかで、ミルクに対しては強い拒否反応を持っています。
暫くの間、わたしは彼がミルクを飲めないのだと思っていて、(牛乳を飲むと、おなかがグルグルいうおとうさんへ、というコマーシャルがありましたよね。)我が家ではミルクは料理やお菓子に使うもので、 飲むものではありませんでした。

 「低温殺菌牛乳」というものがあって、通常のものと比べて臭みが少なく、 飲み易いということを、テレビか雑誌かで紹介されたことがありました。わたしたちは、この時初めて、自分達が苦手にしていたミルクの臭いは、実は一般的な高温の殺菌過程でタンパク質が焦げたせいで生じてるということを、知りました。主人などは、6年間にも及ぶ強要にも屈することなく、まずいものをまずいと言い続けた自分の味覚に自信を持ってしまって、以来、我が家にあるのは「低温殺菌牛乳」です。
 自宅で頻繁にミルクティーを飲むようになったのは、ロンドンへの旅行の後のことでしたから、我が家のミルクティーは比較的高い確率で「低温殺菌牛乳」で作られていることになります。言うまでもなく、それ以前から、ミルクティー用のミルクを温めたことは一度もありません。

                                       00/11/27 
                           


ミルクティーを楽しむ.....ミルクで決まる味(ミルクを温めるのは心遣い?)

 わたしが、結婚の時に取りあえず揃えて持ってきた「西洋料理全集」の末巻がパーティーのセッテングやマナーに関することで、そこにはゲストの目の前での紅茶の入れ方や、アフターヌーンティーの定番メニューなどと共に、ミルクティーについての説明もあります。
「.......略、ミルクティーには、温めたミルクを添えてすすめます。
温かいものは、温かい状態で、というのはおもてなしの原則ですし、しかも、それなりの人のアドヴァイスとなれば、温めたミルクを紅茶に入れた方も多いと思います。お隣のおばちゃんから、聞いたのとは、また重みが違うものです。
 ただ、幸いにも、というか残念なことに、我が家ではこの巻が必要な生活にはならなかったので、わたしは長いこと、ページを開くことがありませんでした。(もっと、若く、素直な時代に見ていたら、おそらくウチにミルクティーは根付かなかったでしょう。)
 関西人の主人にとっては、温かいミルクの臭いは天敵ともいえる納豆に匹敵するようなもので、出来上がってしまえば、グラタンのホワイトソースも、シュークリームもプリンもペロリ、なのですが、製作過程では近寄りません。そういう事情で、ミルクティーの時は薄くて浅いティーカップではなく、深めのマグカップを温めるかわりにミルクはそのままで...という自己流が出来上がってしまいました。
 これが、まあ、店で飲むものよりおいしかったのですね。自分たちの味覚はマトモだと信じてましたから、「な〜んで、温めたミルクを出すのかな〜?」と気になったのがきっかけで、漸く、自分の持っている本を見てみて「あ〜、温めろって言ってるぅ。」と騒いだことがあります。
「全く、この人は、こんなこと書いて〜。」という気分でした。もちろん全集の著者は、海外生活の長い料理研究家で、こっちは単なるミルク嫌い?ですから、抗議の手紙なぞは出しませんでしたけどね。
 納得はしませんでしたが、これは自分たちの嗜好の問題で、ミルクの臭いが好きな人たちは温かいミルクを歓迎するのかも...と理解する謙虚さは持ち合わせていましたから、外では、事前に「ミルクは温めないで」とリクエストするよう心掛けました。
  もっとも店でミルクをオーダーするのはミルクティーを飲みたいからではなく、お湯で薄めてもどうにもならない出過ぎた紅茶(時間の経過と共に、お茶は濃くなるのではなく出過ぎるのですよ。濃いお茶は薄めて調整できますが、出過ぎたお茶にはもうひと工夫必要です。)をなんとかする為です。時間が経つということは、お茶の温度もそこそこになってしまっているので、いずれにしても、おいしいミルクティーは自宅で、ということですね。

 ところが、ロンドンのミルクティーはおいしかった...。
 そして、ホテルのラウンジでも、博物館の中のカフェでも、郊外の小さな店でも、ミルクが温められて出されたことは1度もありませんでした。
通算しても、2週間あまりのロンドンでの経験が、わたしの謙虚さ?を少し切り崩しました。名のある料理研究家のアドヴァイスより、実体験の方が信用できます。
 しかも、帰国後初めて手にした、林望氏の著作の数々が力強いサポートとなって、わたしは多少のずうずうしさを身に付けました。
「牛乳を熱しては絶対にいけない。」と氏は力説されていますものね。

 細やかな心配りを象徴するような「温かいミルク」...。

 でも、わたしは今は初めての店で、事前のリクエストはあまりしなくなりました。温かいミルクが出されたら、遠慮なく取り替えてもらって、次はまた、自分の嗜好に合った別の店を探します。
熱い紅茶につめたいままのミルク! そしてそのミルクが
ディリーミルクなら、理想的ですね。

                                       00/12/01
 
                            


ミルクティーを楽しむ.....ミルクで決まる味
(ディリーミルクを探そう!)
 
 ブロークンタイプやCTC製法の茶葉で、ロンドンのお茶の色に近付いたら、 香り優しいミルクを温めるという手間を省いて使うことで、イギリス風のおいしいミルクティーの出来上がり! 大抵の店のよりはわたしのミルクティーの方がおいしいはずよ、などと自己満足に浸っていたら、ミルクに大きな落とし穴があることを知らされました。

 イギリスをはじめ、ヨーロッパで飲まれているミルクは、通常、日本で流通しているものとは殺菌方法も脂肪の処理の仕方も違うというではありませんか!
「え? 低温殺菌ってだけじゃダメなの?」という気分でした。
そりゃね、世の中には自分が知らないことなど星の数ほどあるのは承知していますけど、ミルクほど日常的なものに対して、今時分に新たな事実を知らされるとは思ってもいませんでした。
デイリーミルク、むーみんさんのお話を御覧下さい。

 もっとも、日常的とはいってもおばあちゃんの頃に遡ると、もう非日常の飲み物になってしまうミルク事情を、欧米と同じ土俵で比べるのは無理があるかもしれません。でも、そもそもは欧米化に伴って、ミルクは一層わたしたちの生活に浸透して来たものですよね?
 なぜ、日本は欧米に倣うことなく、超高温瞬間殺菌の方法を選んで、御丁寧にも脂肪球を壊してまで均一化処理をすることになったのでしょう?
(もしかしたら、ヨーロッパとアメリカでは違っていて、日本はアメリカを真似た...とか?)高い安全性とスピードアップの利点が風味へのこだわりに打ち勝ったということなのでしょうね。もう一言いえば、かわいそうなわたしたちは、ミルク本来の風味を知らされることなく、タンパク質の焦げた臭いを牛乳の臭いとして初期設定してしまったのですね。
 不幸なことは、ホントのミルクの味や香りを話してくれる人がいなかったことです。
 むかしのトマトはもっと味が濃くて、きゅうりはもっと歯ごたえがあっったし、お豆腐は何もつけずに食べても甘味があってね...。というような話は、直接、間接によく耳にしますよね? そして、昔の、あるいは本来の味にこだわった栽培方法や製造過程が、今ではセールスポイントになって、多少割高でも「懐かしい味」「本来の味」が売れている時代です。

 ところが、むかしの牛乳はね..という話は聞こえてこなかった...。
 芳しいほのかな香りとサラリとした口当たりのミルクの、穏やかな甘味を懐かしむ声はどこにもありませんでした。念の為に母に「むかしの牛乳は 今と比べてどうだった?」と尋ねてはみましたが、同じという答えでした。
あまり、あてにならない証言ですが、母は、いわば粉ミルクから牛乳への切り替わり時期の世代です。思えば、日本人が牛乳とおつき合いを始めたのは、ついこの間なのですね。
 かつては栄養補給が重点だったといわれる学校給食に、大きな顔をして登場したことからも推察されるように、牛乳は嗜好品としてより必要な食品としてわたしたちの生活に根付いてしまったようです。スーパーに様々な種類の牛乳が並んで選択範囲が増えた今でも、わたしたちが牛乳を選ぶ基準は、その成分であって味でななかったような気がしませんか? だって、初期設定に問題があったのですものね。

 ロンドンのミルクティー、パリのカフェ・オレが忘れがたいほどにおいしいのは、旅先での雰囲気に酔ったからではなくて、ミルクの賜物だと知らされた時、主人とわたしはミルクに対する認識を再び変更しました。
(最初の変更は、低温殺菌牛乳と出会った数年前。)
 ありがたいことに、手に入れるにはもっと苦労するかと思っていたデイリーミルクは、身近なところで慎ましやかに流通していました。その風味は昔飲んだミルクの、ではなく今まで知らされなかったミルクの味です。それが、ミルク本来の風味だといわれると、いままでの人生、随分損をした気分ですが、余生はまだしばらくありそうですから、この時に出会えたことに感謝しようと思います。

 これから、数十年の後に、「むかしのミルクはね..。」と話をするのは
わたしたちの世代なのですね。
 その時、思い起こすのは、学校給食のミルクでしょうか?
 それとも、
 「ほんの一時期だったけど、デイリーミルクというおいしいミルクがあってね、濃いめの紅茶にデイリーミルクを入れると、ミルクのほのかな甘味が紅茶をまろやかにしてね、くどくはないけど、コクはあった、.ああ、もうあんなミルクティーはロンドンに行かなきゃ飲めないんだね...。」
 なんて、ヤダヤダ。足腰弱ってから、そんな思い出を語りたくはありません。
 みなさん、(強制的に)刷り込まれたミルクの設定をこのあたりで変更して、デイリーミルクを探しましょうね。

                                        00/12/12
 
                          

 
 

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