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大倉陶園Vol.1  Vol.2     ノリタケ     ウェッジウッド     
ロイヤルコペンハーゲン    ジノリ      ミントン
ナルミ            ベルナルド    サンゴ チャイナ
マイセン

 自分用として最初に買ったティーカップは、というと、残念なことにハッキリとした記憶がありません。結婚してからもしばらくはコーヒーを愛飲していた我が家の食器棚にあるもっとも古いものは、ノリタケのボーンチャイナですが、これはゲスト用の6客セットです。その時はティーカップもなくては不便かも、と言う程度の気分で購入したものですが、シルエットと白い肌は今でも気にいってます。

 ただ、紅茶を毎日飲むようになってからは、日常的に使い易いものから気分を買えたい時のものなど、我が家にもいつのまにかティーカップが増えました。
 ポピュラーなウエッジウッドや地方では品数の少ない大倉陶園のものなどを紹介させていただきたくなりました。マイカップを新調の時に、多少はお役に立つでしょうか?

                                         01/05/21 

     

 ウェッジウッド                    

ウェッジウッドで連想するのは、ボーン・チャイナ...。
「え? ジャスパーでしょ!」という御意見も、もちろんあるかと思いますが...。
 確かに、代表作、独自性という点では、ジャスパーに触れずしてウェッジウッドを語れようかというところですが、ここは我が家で使っているティーカップの御紹介ということで、ジャスパーには目をつぶってボーンチャイナのカップの話におつき合いくださいませ。(ジャスパーに関しては、アクセサリーと小物入れ、小さいプレートしか使っていなくて...。使うほどに艶がでて、いい色合いになるので、関心させられていますが、紅茶を入れる勇気がありません。)

 我が家の初ウェッジウッドは、コーヒーカップでした。
 誕生日マイカップの第1号でもあるそれは、【キャン】という筒状のシェイプの、お馴染みのワイルドストロベリー柄です。(右下、イメージ)これを買った時、我が家は地方の、そのまた地方の、まわりの町や村と比べるからこそ“地方都市”と名乗れそうな所に住んでいたので、デパートの床面積も、一ケ所に立ってフロア全体を見渡せるくらいのものでした。そこの洋食器売り場で、ウェッジウッドは、世界の銘品という位置付けで、特別級の扱いを受けていた記憶があります。....唯一の輸入食器、だったのです。
 輸入もの、となれば運賃も関税分も日本国内での利益も上乗せされているわけで、同じお値段を出すなら、例えば国産の大倉陶園の物の方が値段に見合っているはず、と頭では思っていても、希少な“舶来品”に惑わされてしまったわけですね。 (大倉はありませんでしたし...。)
 なにしろ、わたしにとってウェッジウッドはボーン・チャイナの本家本元! ノリタケで、その存在を知った10代の頃から、憧れていたブランドに違いはありません。絵付けの柄や色合いは、その国ならではのもので、同じモチーフを扱っても醸し出す雰囲気は異なるものですしね。
 実際に自分の物にして、最初に感じたのは食器棚に並べた時の存在感でした。単価でいえば、特に高級品というわけではないのに....2世紀を超える歴史がカップにプライドを加味している感じ、とでも言いましょうか? そうした“時の積み重ね”は、今日、明日にできることではないわけで、まさにブランド、おそるべし、です。

 そもそも、ウェッジウッド(と、スポードもポピュラーですが...。)に代表されるボーン・チャイナは、フランスやイタリアなど、ヨ−ロッパ大陸の国のように“磁器に適した良い土”に恵まれてはいなかった英国で、美しさと強度を合わせ持つ磁器を生み出す為に、他国に劣る自国の土を補う手段として完成させられたもの(骨粉を配合)と言われていますが、紅茶に合わない(とされる)硬水を用いながら自他共に認める紅茶の国となってしまった英国の、柔軟な探究心と、妥協しないプライドには感心させられます。
 本家のボーン・チャイナは、国産ボーン・チャイナ第1号を誇るノリタケの現在のカップよりも、質感があるような気がします。もしかしたら、ノリタケの方が、どんどん、薄く繊細なものをめざしちゃったのかもしれませんが、ノリタケから入ったわたしには、ウェッジウッドの重厚さが印象的でした。

 いくつかあるシェイプの中で、よく目にするのが、コーヒーカップの【キャン】、紅茶用の浅いタイプ(名前は忘れました。)、それから、一応これはティーカップなのでしょうけど、コーヒーでもいいじゃないと思える、【リー】(左上、右下イメージ)の3種でしょうか?
 割れ物だからと思って、しばらく買い続けた【キャン】は、何度か手をすり抜けて落ちたものもありますけど、ヒビもはいらずなかなか丈夫で、3年経ったら6客になってました。
 我が家の日常に、コーヒーに代わって紅茶が入り込んでくるのは、もう少ししてからですが、曲線の美しい【リー】を購入した頃には、誕生日マイカップもいつの間にかなし崩しになって...目標はウェッジウッドの同シェイプで6客揃えることに...。ケーキ皿を兼用するつもりで、当初は【キャン】と同じ絵付けのものを買い足す予定でしたが、3客目にして、別の柄に誘惑されました。
 【リー】は、ボリュームがある分、少し華やかな絵付けにひかれます。

 ロンドンで見たウェッジウッドは、その立派な店構えにもかかわらず、多くのカップはリーズナブルなお値段で、(日本価格が基本になってますから、なおさらですね。)箱も日本で使われているものとは違っていました。
 日本で購入する場合の、本国との差額には、より高級感をあおる立派な箱代も組み込まれているのでしょうね。

 ついでに、記憶を手繰り寄せると、ロンドンの店にあった大半が【リー】の形で、紅茶用の浅いタイプは、見かけなかった気がします。
 ミルクティーが基本の英国では、カップのシェイプにも、需要の違いがみられるということでしょうか?
 香りや水色を楽しもうとすれば、浅い形が好まれるようですが、冷めにくさという点では、適度な深さもカップには必要なわけで...その点では【リー】はいい形だと思います。
 ここ数年、食器棚から出て来る機会かない【キャン】を横目に、【リー】の6客は我が家では大活躍しています。
 ウェッジウッドは絵付けが違うものを、シルエットで揃えるという感覚を呼び起こしてくれたブランドで、それができるのは、ひとつひとつの存在感と、形としても集合美のバランスがとれているからかもしれませんね。

                                       01/11/22