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JUNのトマムレポート・2008
                次への期待を育む為に
                   





 星野リゾートの単独運営下で,トマムは3年目のシーズンを迎えました。
 2006年(正確には2005年12月)からの変化に伴うショックはいやされないまでも、年毎にやわらいでいく感のあるなかで、新たな試みは評価されることが多くなってきたように思います。初めて訪れるゲストに対する配慮も目立ってきました。
 スタッフ不足は今なお最優先で解決されるべき課題かと感じますが、個々のスタッフには、トマムスピリッツがひきつがれて
行く期待を抱かされます。スタッフによってうみだされたトマムらしさが、これからの新たな『トマムのスタッフ』を育んでいくのかもしれませんね。次への不安が期待に変わる時はまもなく...でしょうか?
  総合 SEKKA リエアクゼーションプレイス ポーラヴィレッジ アイスヴィレッジ
 プラチナム 三角 

                             
07/02/25  



     

EJUNのトマムレポート・2008 総合

おことわり
  コメントの根拠となる実体験は,2008年、2月、6月、9月の滞在によるものです。

 

 2008年2月、久しぶりにゲレンデにデジカメを持参しました。
 容量の加減でコンパクトに、また中央部分だけ切り抜いてのUPとなりましたが、快晴のトマム、キャビン山頂からのイメージです。向かって左からガレリア(この角度は重なって一本しか見えません。) 2本のタワー、ど真ん中の木々の途切れた向こう側に閉鎖されたホテル、手前にリゾートセンター、右側手前にアビチ、ヴィズ、スポルト、森を背にして白い屋根を見せているのがオスカー。タワーの右手に広がるゴルフコースの奥に一般道が写っていますが、道路の向こう側に点在する建物は民家ではなくスタッフの宿舎です。
 地の利が活かされた“非日常”....ありのままだったら似たような場所は他にもたくさんあったのでしょうけど、人の手が入って生み出されたこの景観はトマム固有のもの。開発時から賛否がわかれたといわれる高層建築のたたずまいは、やはり美しいとわたしは感じます。広大なステージにあっては、安易な融合よりもこのくらいの偉容を放っていたほうが、安定感があるというものです。
 リニューアルされたタワーの外観は、繰り返してもせんないことなので言及は控えるとして....断熱化処理の結果として内部、居住空間の向上が期待できるとのこと。ゲストが客室の快適さを実感することで、『改修』はおのずと評価されるのだろうと思います。
 
 運営会社が替わって3年目、通年営業があたりまえだったヴィズや三角までが長期クローズ(グリーンシーズンは夏休み、週末、祝日等の限定運営)と知らされたときには、完成間近のジクソーパズルをいきなりひっくり返されたような不条理を見せられた気分でしたが、その三角が新たな魅力を見せてくれたもグリーンシーズンでした。(詳細は三角参照)冬期の様変わりに、ついに三角までもがここまで....(到達したとは反対語に続きます。)と言葉も無かった後だけに.....闇夜の月か砂漠のオアシスか、伝えきれない感動はさめることなく「スキーシーズンも、三角が楽しみ!」というリピーターの話に、わたしも強い共感を覚えています。和洋の柱がそろったことで、今年は夕食への満足度が一挙に高まり、それが今後も続くだろうとの期待も尽きません。

 とはいえ、1年を通じて利用したレストランはプラチナムと三角、タータンジャンクションだけという事実が、自分たちのトマムでの過ごし方が変わってきたことを実感させられます。実は今年はヴィズにも行かずに終わりました。....ヴィズ開業以来初めてのことです。
  3回ともが短期滞在でガレリア利用、ヴィズ自体がクローズの期間もあって、物理的に利用しにくくなったというのもありますが、つまりはヴィスの魅力が物理的な影響を受ける程度になったということなんですね。振り返ってみて、執着がずいぶん薄れてしまったことを自覚しました。
  今年急にというよりは、3年前...いえ、実際にはもっと前から少しずつ、ヴィズの魅力は下降気味だったと言わざるをえませんが、それが急降下したのが3年前でした。その時からヴィズはわたしの中で“過ごすのを楽しむ場所”から“目的を持って利用する場所”に位置づけが変わったのだと思います。
 浴場に行き交うゲストを眺めながらは、常夏リゾートの雰囲気には浸りにくい.... プールサイドで 過ごすことが快適ではなくなったからには、スパコテージで筋肉をほぐすか、お風呂でじっくり身体を洗うか....折り合いを付けるとはそういうことで、供給が変わったのだからこちらの需要も切り替えていかなくては....これは仕方がないですね。
 ただ、ありがたくも困ったことに“修正後の需要”は、代わりのものでも満たされるのでした。
 その一つが今季初登場したリラクゼーションプレイス で、こちらでの充足が心理的にヴィズとの距離を広げたかもしれません。今のところ女性限定のプログラムで、主人と一緒の時には利用しませんでしたが、『我が家』の場合は、昼寝をするのでね、それがかつてはヴィズのリラクゼーションコテージだったりプールサイドだったりしたわけで、リラクゼーションプレイス 云々以前に(今は)ヴィズ(にわざわざ出向くよりも)よりガレリアの客室(でのんびりと...)が優勢になりました。これも仕方がない。リラクゼーションコテージ閉鎖後のヴィズはスタッフとの接点がほとんどない施設で、わたしの感覚では市場ではなくスーパーマーケット....足しげく通った気に入りのスーパーでも、取扱い商品が変われば自然と足が遠のくのと同じことかと考えます。品揃えが変わったスーパーには、これまでと別のお客が行くわけで、それで利益があがれば見直してよかったということになるのでしょうしね。
 人が介在しない縁というのは、繋ぐも断つもたやすいものに思えます。
 
  一方、その『人』、新たなスタッフとの関わりが増えるにつれ、滞在の快適さは安定してきたように思います。
 エリア内でのわたしの行動範囲が狭まって(せっかくのスペースメリット、宿泊施設内だけでコトを済ませず、ひろ〜く動いていろんな施設を利用しましょうという提案は一時撤回。自分のニーズに合わせて利用を使い分けましょうね。)トマム全般のこととしては話せませんが、ガレリアフロントでは、スタッフ個人のトマム歴が気にならなくなりました。中には初対面のスタッフもいるでしょうし、もしかしたらほとんどが2005年以降のスタッフかもしれませんが、ごく普通に引継ぎされてきたかのように、お馴染みの場所の雰囲気です。3年経てば、運営会社の交替でリセットされたかもしれない顧客データもそれなりに蓄積されたことでしょうし、今後に期待できる柔軟かつ効率のいい対応が楽しみです。
 初めてのゲストにはじっくりと丁寧な案内を、利用履歴のあるゲストには変更点などの必要な部分をピックアップして
....無難なのはすべてのゲストに同じ案内を、なのでしょうけどね、それでは、ホスピタリティーのスキルアップは望めません。個々のゲストに“必要なこと”と“不必要なこと”は異なります。それを推せるか推せないか、わたしたちに好印象を刷り込みのは、言うまでもなく前者で、ガレリアにはそういうスタッフが多い。(他施設のフロントスタッフとは接点が無いので、言及できないだけ。ガレリア以外には少ないという含みはありません。)
 トマムに長く勤務しているとか、顔見知りだとかは、必要条件ではありません。
 今年6月、4ヶ月前とは調理スタッフも替わり、メニューも変わった三角でサービスを担当してくれたスタッフは勤務歴も浅く、わたしたちとも初対面でしたが、おいしい料理とともに楽しい時間を満喫させてもらいました。

 
「(料理の傾向や風味が)前とちがっていて、気になることがあるかもしれませんが...。」
 多分、前の三角にわたしたちほど詳しくはないだろうスタッフの、気配りのこの一言が最強でした。
 気になるどころか、実際には大歓迎に終始したのは、既にお話した通りですが、もしも好みとはすこし違う料理があったとしても、満足度は高いままだったと思います。“前とちがっている”という基本情報が一致していますからね、お互いが知っていること、相手は知らないだろうこと、何を話すにも違和感がないのです。『今』の案内は丁寧で、『前』のことには聞き上手、ゲストの状況を察したうえでの心配りは、経験や情報の不足をカバーしてあまりあるという、いい実例だったと感じます。このケースでは他のスタッフからわたしたちの情報を得ていたかとは思いますが、その後、同じスタッフのサービスを受けたリピーターから「名前を聞き損ねたのがくやまれる」とか「ずっといて頂きたい」とのコメントがあったくらいなので、わたしの好感度メーターもぶれてはいなかったと言えるでしょうね。
 
 でも、最強は平均値ではないわけでね、安心しきってると思わぬ所に落とし穴があったりもします。
 実は、今年、とある店内で食べたスナックがとってもおいしかったので、追加でテイクアウトをお願いしようとしたら、即座にできないと断られるということがありました。
  ...あ〜、できないのか。後で部屋でも食べたかったのに、まあね、今は食中毒とかうるさくなったからかな。残念だけど仕方ないか...。 
 と、思うのが一般的ですね。
 店のルールでテイクアウトは断ると取り決められていたなら(テイクアウトの要望は想定してなかったとしたら、即答での「できないんです。」は、わたしの価値観では最悪なので...考えないことにしましょう。)できないと応じたスタッフに非はありません。でもさぁ...とリピーターは思うわけです。去年はサンドイッチもテイクアウトできたよね〜。コース内へのデリバリーサービスなんてのもやってたし、第一「お昼は※※でテイクアウトして....」なんて案内もあったでしょう? なんで、できないの? へえ〜、ふうぅぅ〜〜ん。
 と...これが違和感です。

 結果は同じでも「今年からいろいろと規制があって...。」とか「(いい状態で食べていただきたいので)テイクアウトは今年からお断りしてるんですよ。」という類の言葉があれば、印象はずいぶん違ったのですけどね...。

 あああ〜、リピーターは面倒くさい。
 スタッフみんなが『前』のことまで知ってるわけないでしょうに...というご意見があるでしょうか?
 いえいえいえ、 知っていなくてはいけないと、わたしは思います。
 オールドファンやヘビーユーザーに限った話ではないので、別に10年、20年遡って把握するべきだと言うつもりはありません。
 1年、2年、あるいは大きな見直しや変化があった前後くらいはという話です。
 なぜって、昨年初めてトマムを訪れたゲストが、今年もやってくれば、それはリピーターです。リピーターの基本情報は前回の実体験ではありませんか。迎えるスタッフが前回を知らなければ、説明不足のまま前と違う状況に戸惑うゲストの違和感をどうして察することができるでしょう?
 違和感は蓄積すれば不快感に変わるものです。(蓄積させないために、わたしは2、3人の別のスタッフにテイクアウトを断られた話を聞いていただきました。)
 
 アドベンチャーマウンティンや冬山解放のプロジェクト、どのレベルにも配慮が行き届いて、数年前よりゲレンデは魅力を増しました。アクティビティも充実して、冬期の引力は強くなってきたと、わたしは感じます。(夏期は....あんまりがんばる気がないのかな...?これからなのでしょうか?)トマムが“リピーターお断り”の営業を基軸にするなら余計なお世話でしょうけど、そうじゃないなら、去年よりは今年、今年よりは来年、増えていくであろうリピーターの反応を軽んじてはいけません。
 過去、現在、そして今後、スタッフが様々なデーターを有してこそ、ゲストの思い出を尊重し,期待を抱かせる対応が可能になります。それがホスピタリティーです。サービスが行きどいていれば評価が得られる(一過性のお客相手の)観光地とは違うポイントでしょうね。
 そういう意味で、短いスパンでの見直しや 変更は、また、スタッフの頻繁な配置転換は、目新しさよりも不安定感が目立って、少なくないリスクがつきまとうと、わたしは考えています。
 もうリサーチ期間は終わっていい頃。一部の試験的な試みは例外として、今後は10年続ける気概で“変わらないもの”へのこだわりを見せてほしいと思います。

             
                                      
  08/12/04 

 ※  右上イメージはスノーマン作成に余念がないスタッフ。各施設近辺やリフト乗り場前などにスタッフによる『作品』が登場するのも、リピーターにはお馴染み事項。眺めているだけで嬉しくなる....わたしの好きな1枚です。