画面のレイアウトが乱れる方へ

JUNのトマムレポート・2008
                次への期待を育む為に
                    





 星野リゾートの単独運営下で,トマムは3年目のシーズンを迎えました。
 2006年(正確には2005年12月)からの変化に伴うショックはいやされないまでも、年毎にやわらいでいく感のあるなかで、新たな試みは評価されることが多くなってきたように思います。初めて訪れるゲストに対する配慮も目立ってきました。
 スタッフ不足は今なお最優先で解決されるべき課題かと感じますが、個々のスタッフには、トマムスピリッツがひきつがれて
行く期待を抱かされます。スタッフによってうみだされたトマムらしさが、これからの新たな『トマムのスタッフ』を育んでいくのかもしれませんね。次への不安が期待に変わる時はまもなく...でしょうか?
  総合 SEKKA リエアクゼーションプレイス ポーラヴィレッジ アイスヴィレッジ
 プラチナム 三角 

                             
07/02/25  

     

JUNのトマムレポート・2008 三角でまったり晩ご飯

 2008年グリーンシーズンより三角の調理スタッフが替わったようです。

ほぼ通年営業で20年以上の時を経たことを思えば、今回に限らず、スタッフの移動は以前にもあり得たことかと察しますが、ただ、今回は、作り手の違いがそのままストレートに料理に反映されていいるので、リピーターが知らずに利用すれば、ちょっとした違和感がついてくるかもしれません。

 これまでもメニューは、幾度か変わりました。
  半値近くなった鍋類は、セットに組み込まれていた突き出しや水菓子がなくなり、素材は価格に見合ったものに、コースの価格も食券対応レベルが中心になりましたし、迷うほどにあった単品メニューもこの数年で激減...今年はついに、アラカルトメニューはなくなった様子です。それはでも、時代に即したコストダウンの必要に迫られて...とでも理由付けられる変化でした。乱暴な言い方をすれば、以前と同様の金額を用意すれば、当時に等しい料理がいただけたわけで、そういう意味では三角は我が家にとっては開業以来“変わらない店”だったのです。。
 もう少し言うと、星野リゾートの運営になってから、わたしは定番のメニューをほとんど見ていません。毎回のように変わるメニューよりも、20年来、自分たちが口にして来た料理の方が魅力的だったからです。

 今回(2008年6月)も、利用予定の1ヶ月ほど前に、予算といくつかの食材のリクエストを伝えました。いえ、予算は...伝えてなかったかもしれません。食材は、確認程度(ジャガイモ食べたい、タラバガニ食べたいというレベル。)で、細部は“これまで” のデータを持つスタッフにお任せしたのですが....提案のコースメニューを見た時に、あららら?と。

 三角でジャガイモを食べるとなれば、通常はホイル焼きかバター煮か....ところが、提案メニューには、じゃがいもの蟹あんかけ(左上イメージ)となっているではありませんか。
 “あん”は...どうだろう?と、その時には思いました。
 同様に、お造りはタラバ蟹と旬魚.....このところ、三角ではいただく造りは、タラバ蟹かイカソーメンに偏っていたわたしは、 旬魚の2文字にも、これまでとは違う、我が身にも影響のある変化を感じたものでした。
 事実、いただいた料理はどれもが、既存の三角のイメージとは異なる品々でした。
 なるほど....調理スタッフが変わるというのはこういうことかと...知れば納得、知らなければ驚きの違いですね。
 
 結論から言うと、わたしにはうれしい違いでした。
 
 もちろん、手放しで喜ぶには、堪能してきた料理の記憶が邪魔をします。
 馴染んだ味への執着もある。
 
  それでも、出された料理一つ一つが、複雑な気分を収めて感動に切り替えるほどの魅力に溢れていたのです。
 彩りも美しい先付けの煮アワビとアスパラの黄身酢かけ(右上イメージ)、香り豊かな八角潮汁(右イメージ)等、京料理のエッセンスで仕上げられた道産素材は、美しくかつ繊細な変貌を楽しませてくれました。
 特に潮汁はクリアな汁の表面 に霧が立ったような(冬なら、粉雪か霧氷と言いたい。)風情をまとった一品で、インパクトも申し分なしでした。

 当然ながら、北海道らしさにあふれた従来の三角を推すリピーターも多いでしょうね。わたしも例外ではありません。
 従来の...つまりは、やま里が共に稼働していた時代の三角です。
 和食処・やま里が存在したからこそ、郷土料理の看板を掲げて、ストレートな“らしさ”にこだわっていられた頃の三角です。
 やま里の完全クローズを期に、ぶれてしまった“らしさ”への執着故に、わたしは現存のメニューを横に置いてリクエストをしてきたとも言えます。(かつては、テーブルについてからメニューを手にして、料理を選んだものでした。)

 ただ、期待を裏切らない料理のおかげで、“わたしが好きな三角”への思いを満たしながらも、一方で、本格的な和食への欲求が消え去らないのも事実でした。
 それは、京都か大阪でお食べなさいよという反論はなしですよ。
 日常の行動エリア内とトマムとは別の話です。

 新たな料理スタッフの手で生み出された、これまでと違う三角の料理は、わたしの内部でくすぶっていた和食への欲求に、見事なまでに応えてくれたと思います。 ああ.....こんな料理に飢えていたという自覚とともに、感動は高まるばかりでした。
 理想は、三角はそのまま、別の和食処の開業ですが、即座の実現が望めない以上、今はこの変化を素直に喜ぶべきかと判断します。
 右イメージは、しのぎとして出された 海水雲丹寿司。どんぶりではなく、貝をかたどった器は手のひらサイスの小振りなもので、抑えたボリュームもこちらの要求に完全にフィットしてくれました。
 ちなみに、餡かけの想像図がいま一歩だった、じゃがいも料理が一番上のイメージ。
 整形されたジャガイモはサヤクイーンという品種だそうで、じんわりと主張してくる甘みと黄色みが印象的な新素材です。撮影のためにじゃがいもを上にすくい上げましたが、登場時にはたっぷりの餡でいもは隠れていました。北海道創作料理と呼びたい、お勧めの一品です。


 念の為に付け加えますが、
紹介した料理は、リクエストに応じて提案されたお任せコースの内のいくつかで、定番のメニューではありません。
 
 メニューを見せてもらったところ、あらかじめ用意されているのは数コースのみで、単品は見当たりません。夕食券に対応していると思われる、北海かご膳は、冬期もあったもので、定番メニューにおいて、冬期との違いを実感できる内容になっているのかどうかは未確認です。
 

 郷土料理改め和食処となった三角の色を感じるには、グリーンシーズンより新たにメニューに加わった三角ご膳なるセットが適しているかもしれませんね。(メニューイメージ参照)

                             

                                         08/07/24 


 6月の感動さめやらぬままに、9月は料理の内容を全面的に料理長におまかせしました。全体的な量と金額は既に了解事項、こちらからは、(初めての利用となる)主人の嫌いな食材を念の為にと伝えただけでした。
 前回と全く同じ料理でも 、わたしは構わないくらいの気分でしたが、見覚えのある料理は食材の変化とアレンジで、繊細な風味のバリエーションを楽しませてくれましたし、そして、もちろん“異なる料理”もお目見えしました。

 その一つが右イメージ、炙り秋刀魚のサラダ仕立て。
 いい秋刀魚が入ったからということで登場となった料理長自信の一品です。香ばしさとレアな食感の組み合わせも絶妙なら、三杯酢の甘さかマリネの酸味か....いろんなエッセンスが混じり合って艶やかな変身を遂げたような、季節の料理です。
 良い素材と板さんの腕が出会って生まれた印象深い一品...初めてトマムを訪れたときの感動を思い出しました。

 いい秋刀魚なら焼いて大根おろしを添えるだけで充分じゃないのというご意見は、ここでは無用です。シンプルイズベストの見解は素材本来の風味を活かすという目的で....よく語られる話。わたしも幾度となく見聞きしましたが、“おかあさん”たちへのアドバイスとしてなら納得かもしれませんけど、プロの料理人に(解釈の幅はあるとしても)理念のごとくに口に出しては欲しくないフレーズだと感じています。シンプルを越えて、ベストの上を見せて欲しい。
  そもそもは、食材に恵まれた北海道では見当違いとさえ言われるかもしれないその期待に応えて...いえ、丸ごとの蟹や、ご飯を覆い尽くす量のイクラにも醒めて、既に薄れていた食への期待をつなぎとめてくれたのがトマムの料理でした。自然の恵みは恵みとして、それ以上に人の手で生み出されたものがモノが魅力的かどうか....それは、道内の多くの観光地やリゾートとトマムを隔てるポイントの一つだったとわたしは思っています。
 我が家が、海鮮市場、番屋の朝市、 祭や等を評価できなかったのもそれ故で、北海道らしさってちょっと間違えば安易な手抜きになっちゃうわけでね...(おいしいかどうかは別の話。料理人のこだわりが見えないということです。)非日常の旅先では、サンマの塩焼きよりも板さん自慢のオリジナル料理がやはりうれしい。
 いつものおいしさとは別の、印象的おいしさ....2008年グリーンシーズンの三角にはそんな料理が増えました。

 でも、残念なことに、三角のコンセプトは未だ不安定です。
 グリーンシーズンも平日のクローズが目立ちましたが、冬期はまた予約制廃止が検討されている様子で、この夏、縁に恵まれて三角のオリジナル料理(非定番メニュー)を堪能したリピーターは、落差の大きすぎる環境に対応できるかどうかが大問題ですね。
 定番メニューがひと昔の三角のように充実するなら並んででも利用したいところですが、予約制廃止の意図を察すると、それも叶わぬ望みのように思えます。ようやく...トマムに在るべきクオリティが(ひとつまた)戻ってきたと喜んだだけに、それを活かすステージが定着しないのが惜しまれてなりません。本当は「※※がお薦め」とJUNの保証付きで紹介したい料理の数々も、もしかしたら一夏の夢。供給の環境が整わないうちは、運が良ければ...という条件つきのレアアイテムなのでした。混乱を避けるためには、今は安易な全面紹介は慎むべきかと判断します。

 ただ、誇るに足る和食は確かに在る...控えめに在るそれを表舞台に上げるのはゲストのラブコールかもしれません。 効率よりもクオリティを期待する声が多くなれば、あるいは、この次は....ということです。
  オールドファンと一部のリピーターの
、いはば少数派の価値観に応えて在るものを、今またトマムの標準にするかしないか......ゲストの影響力は小さくない気がします。

                                         08/10/15 

重要補足事項 2008/12/09
 
 2009年スキーシズン(2008年12月〜)より、三角の料理スタッフが替わったという情報が入りました。 
 冬期のトマム公式HPでは、三角の紹介文、定番メニューの価格帯は夏期と同様ですが、作り手が替われば、料理に変化は表れるかと考えます。当ページの三角情報は2008年限定のものとなります。冬期に三角利用の際の参考資料として適切ではなくなりましたので、ご注意ください。
 なお、新スタッフは 、未確認ながら昨シーズンまで三角の厨房を担っていたベテラン調理スタッフの様子です。