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JUNのトマムレポート・2006
           トマムらしさの行方は...
                        

2006年2月、今季のスキーシーズンから星野リゾートの単独運営となったトマムを見て参りました。結果としては、初年度から具体的な変化が後を絶たず、開業以来なんとか維持され続けて来たコンセプトの継承はもはや期待できないトマムと向き合うことになりました。
 それでもトマムらしさは残されるのか、新たな色の中に埋もれてしまうのか、新たな色と折り合いが付けられるのかどうか....まだ失いたくない遊び場なので,自分にとっての安心材料を探しつつ、是非の判断は先送りにするのが精一杯というのが正直なところです。 新生トマム誕生前夜のレポートと会わせてご覧頂き,JUNの気分
の変化も汲み取っていただければ幸いです。(総合 木林の湯 桃里 三角 ラ・ルミエール  北海グリルトマム亭
                              06/02/26  




     

JUNのトマムレポート 2006 “ラ・ルミエール”でごはんを食べよう!(2006)

 アルファコーポレーションからリゾートマネージメント(加森観光)へ、星野リゾートの参入、分割運営を経て加森観光の撤退と、トマムの運営に変化が訪れる度に、いちばんに危惧される対象だったのが、ラ・ルミエールでした。

 でも結論から言うと、バブル期に計画竣工されたトマムが誇るフレンチレストランは、いい意味で、わたしたちの予想を裏切り、今シーズンも健在と言っていい実態を見せてはくれました。
 アラカルトがなくなり、 3つのコースのみのメニューには、不自由を感じる声も聞かれましたが、エリア内の他の部分の変貌と比較すれば、ルミエールは、踏みとどまってくれたというのが、わたしの正直な印象です。幸い、厨房(ヒヨシシェフ)、フロアともに、主な担当は星野リゾート参入以前からのスタッフで、わたしを含めて、リピーターにとっては,2006年の冬のトマムで、違和感を抱くこと無く利用できた、数少ないスポットだったのではないかと考えます。

 2月下旬の利用に際して、こちらからの事前のリクエストは、温前菜にフォアグラのソテ、 魚料理にオマールエビ、スープは植物素材のクリームスープをという3点でした。
 事前にファクスでいただいたコースメニューを見た上のことで、フォアグラ,とオマールエビは、コースがちがうものの、メニューにありましたから、特別リクエストはスープだけですね。かわいらしいものです。

 左上が冷前菜の知床サーモンのマリネ、右がフォアグラのソテ、リンゴのクランブル添え。
 実はこの後のスープまで、カメラの操作ミス(らしい)で、イメージが黒ずんでしまいました。せっかくのフォアグラが...炭の固まりみたいになってしまったのが悔やまれますが、アーモンドオイル・バルサミコソースとリンゴの酸味で味わうフォアグラは、それ自体は非常にシンプルに仕上げられていました。塩と胡椒の刺激がアクセント。

 
  蜂蜜の甘みと香ばしさが特徴とも言えた、いままでのルミエールのフォアグラのソテとは、ちょっと異なります。どちらが好みか...とは、悩むところです。馴染んできた味が懐かしくもあれば、スッキリとした今回の風味が新鮮でもありました。
 そういえば、と思いついたのが数年前の同シェフの和風(?)フォアグラのソテ。 ヒヨシシェフは最初から,蜂蜜使いはされていなかったようですね。もしかしたら,これからフォアグラのソテの風味にバリエーションが広がるのかもしれません。

 これと合わせて,もう一品、やはり違いを感じたのがスープです。 (イメージはなし)
 リクエストに応えてのスープは,ごぼうのクリームスープで、素材としてはルミエールでも過去に何度か使われたものでした。強い香りと、
サラリと軽い口当たりは,評判も良かったと記憶しています。
 今回のものは、少し食感の重みが加わっていました。
 舌の上にわずかなざらつき....素材を、香りよりも食感で味わう仕上がりと言えば、分かり易いでしょうか。わたしの好みに限っていえば、量を半分から3分の2程度でああれば、最後までおいしくいただけて、かつ、次の料理のための余裕も保てると感じた仕上がりでした。(結構スープって,お腹にこたえるんですよね。)

 魚料理は、生ハムを巻いたオマールエビのグリエ(上イメージ)
甘みのあるバター風味で、歯ごたえもよく、おいしかったです。鮮やかな色合いに(スープで膨れたお腹をよそに)食指も動きました。
(この辺りから、カメラが正しく作動。)
 
 口直しの氷菓(左)に続いてのメインが黒毛和種牛フィレ肉のロースト、ボルドーソース。(左アップ)
 
 あれこれ語るよりも、黙って見ていただいた方がおいしさが伝わりそう...と思える素材でした。柔らかさと、サシがかもしだす歯ごたえのバランスが絶妙で、堪能しました。
 付け合わせも控えめだったのは、肉質で勝負のこだわり故でしょうか....? (野菜はもっとあってもうれしいけど...)おいしかった。素材の断面を美しく見せるキューブカットの盛りつけに、2003年を思い出しました。


 デザートは,最近のスタイルが変えられることなく、アイスクリーム付き!
 最近の...と言いましたが,ルミエールのデザートにアイスが添えられたのは、ヒヨシシェフの時だったかもしれません。(その時のパティシェというべきかも...。)
 オープン当初の、デザートが数種続く時代のあとは、アイスの登場はありそうで、なかなかなかったんですよね。

 2006年2月のパティシェ特製デザートは苺のミルフィーユ、ミルクアイスクリーム添えでした。 
 バニラアイスと言う説明を受けたかもしれませんが、風味はミルク! スタッフに確認したところ素材は『普通の牛乳』というお話でしたが『ノンホモミルク』と言ってもごまかせるかもと思える、サラリとした口当たりでした。

 心浮き立つ盛りつけのデザートはボリュームがあるように見えますが、パリパリの極薄のパイ生地(1枚仕立て)の他は、潤いたっぷりのフルーツやクリームの組み合わせで、ペロリの一品でした。

 
 ところで、右のイメージでお分かりいただけるかと考えますが、今回の食器はアルファの“a”文字がデザインされたアビランド社製のものでほぼ統一されていました。初期に揃えられたシリーズで、パリの名門、ブリストルと同じホテル使用のデザインです。
(ブリストルはもちろん “β”のマーク)ルミエールが開業時に設定したグレードを偲ばせる備品のひとつですね。
 ただ,数年前に、アビランド社ではこのデザインを廃止、補充がきかないアイテムとなっていて、ルミエールでも使われたり使われなかったり....現存するものが欠けた時点で(消耗品ですから)何を補充するかが、雰囲気を維持する上でポイントになって来そうです。

 このシリーズに変わるアビランド社のデザインは、ブルーの色がグレーに変えられたものの淵飾りとロゴのデザインは同じ。ただし、シェイプにうねりが加わって同時使用には難があるものです。(ブリストルでは新シリーズにすべて切り替えられていましたけど...わたしは旧デザインの方が好き。...と言っても,意味の無い感想ですね。)
 遠からず、ルミエールの食器類にも変化が生じるのでしょうけど(バックナンバーで使用されていた食器はリゾートマネージメントの備品。現トマムにはありません。)朝食時にテーブルにあった醤油差しが中華仕様のもので違和感があったという感想が、既に(当掲示板に)寄せられています。

 料理とサービスの質が維持されても、設えに手を抜けば、グレードは語れなくなります。
 せっかくのスタッフの踏ん張りに応えて、星野氏にはルミエールというステージの整備を重視していただきたいとわたしは望みます。今季は、幸いにも...のルミエールでしたが、安心するにはまだ時期が早いかもしれませんね。
 

                                        06/03/28