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JUNのトマムレポート・2006
                 トマムらしさの行方は...
                                     

 2006年2月、今季のスキーシーズンから星野リゾートの単独運営となったトマムを見て参りました。結果としては、初年度から具体的な変化が後を絶たず、開業以来なんとか維持され続けて来たコンセプトの継承はもはや期待できないトマムと向き合うことになりました。
 それでもトマムらしさは残されるのか、新たな色の中に埋もれてしまうのか、新たな色と折り合いが付けられるのかどうか....まだ失いたくない遊び場なので,自分にとっての安心材料を探しつつ、是非の判断は先送りにするのが精一杯というのが正直なところです。 新生トマム誕生前夜のレポートと会わせてご覧頂き,JUNの気分の変化も汲み取っていただければ幸いです。(総合 木林の湯  桃里 三角  ラ・ルミエール 
北海グリルトマム亭
                              06/02/26  




     

JUNのトマムレポート2006 木林の湯

 2006年12月21日より営業を開始した新施設、洗い場併設の露天風呂が木林の湯です。

 待望の...と言っていいのでしょうか。チェックアウト後にスキーを楽しんだ後、身繕いできる入浴施設を望む声は少なくなかったのは確かなようで、トマムの運営に星野リゾートが参入後、割と早い時期に、浴場施設造築の計画案を、わたしも耳にしました。2、3年後、ホテルの大規模改装と伴って...というのが,当初の案だったと記憶しています。予定は未定とはよく言われることで、それがなんと、単独運営初年度にいきなりの登場です。
 驚いたのはその早さではなく(早いオープンだけなら、喜びました。)木林の湯が造られた場所でした。2005年11月、ロゴプール、サウナコテージ、サンテラスデッキ(旧リラクゼーションコテージ)が木林の湯に改装されると言う事実を知った時、(イヤな予感はあったものの)期待を見事に裏切られた怒りを実感しました。当サイトで展開するトマム情報の在り方について、少なくはない心境の変化を自覚したのも,木林の湯...というよりも、その為に消滅させられたロゴプールが切っ掛けだったと言えます。

  ただ、ロゴプールの記憶は、一端横に置いて、木林の湯そのもののレポートを先に...。
 有料の入浴施設です。利用受付カウンターはヴィズと同じ、木林の湯のみの利用の場合は、ロビーで靴を履き替えます。(入り口右手に下駄箱が設置)下駄箱の位置関係からか,エスカレーターの下りと上りが今季から逆転していました。
 入場は向かって左側から..木林の湯へのアプローチは右側です。入り口近く、リラクゼーションコテージ跡が『女湯』(左イメージ)、『男湯』はサウナコテージ跡なので,プールサイドを立てに突っ切ることになります。
(上イメージでは右側手前に女湯、 奥のカフェテラス前、右側に男湯へのアプローチ。)
 木林の湯に常時待機スタッフはいません。アポローチの先にバスタオル,タオルが平積みされていて、ゲストはこれを取って右手(女湯の場合)脱衣所へ...。ヴィス利用者(木林の湯の無料利用可)の為に、脱衣所の入り口前に水着用のビニール袋がぶら下がっていました。脱衣所のロッカーは、幅、高さ共に広くはありません。今回,わたしたちはヴィズのついでに木林の湯を利用したので、衣類は従来通りヴィズのロッカーに収め、濡れた水着もヴィズのロッカーで脱いで、バスローブ(HP、パンフレットから案内が消えたので、無くなったかと考えていましたが、レンタル有りでした、)のみを羽織った状態で木林の湯に向かいましたが、冬季,例えばスキーウェアやコートの類いを収めるには、この規模のロッカーではストレスが生じそうに思えました。ロッカーキーは手首にはめて,浴場に持ち込むタイプです。
 
 
 浴場内は,洗い場(右イメージ)とサウナ、水風呂、そしてなぜか,ウッドッデッキが並べられた休憩所(?)で構成されています。

 洗い場のシャンプー,リンス,ボディシャンプーはボトルタイプ。お湯の温度調整,勢いは良好でした。 昨今見かけることが多くなった、一定時間が経過すると勝手にお湯が止まるという鬱陶しいシステムが導入されていなかったのは、ありがたかったです。(髪を洗っている最中に何度となく栓を押さなくちゃならないのって...面倒だもんね。)シャワーヘッドにも開栓、止栓のボタンがあって、操作はしやすかったです。


 サウナの規模は、従来のサウナコテージの高温サウナよりもベンチ一つ分奥行きが無いかな...というところでしょうか。覗いた時点では,利用者はいませんでした。このサウナと水風呂と...そして休憩スペースの稼働率に関しては、現行システムでは、わたしは疑問を感じます。
 浴場利用の目的は、身体を洗う、温まるという類いの、いたって実用的なものです。もちろん、その場所が広くて清潔で快適であれば、リラックス効果も期待できますが...ただ、一糸まとわぬ我が身をパブリックスペースで晒したままでくつろげないわというのは、わたしだけの感覚ではないでしょう? まあ、自分が意識するほど他人は見ていないという意見に耳を傾けたとしても、素肌でウッドデッキ(左下イメージ)に横たわるのは...痛くありませんか? もともと、サウナコテージのウッドデッキもバスローブ付きだからこそ利用されていたという印象で、ローブが有料レンタルになってからウッドデッキで寝そべるゲストを見かけることがほとんどなくなりましたもの。水着着用だって,ハードなのよ。
 それに、外出先でのトイレにも、便座シートか除菌剤が備わっていることに当たり前になった今日、サウナにしろウッドデッキにしろ、やはり自分専用の布1枚は...必需品のような気がします。バスタオルを使えば? とお思いになるかもしれませんが、貸し出しのバスタオルは一人1枚という『ご案内』があるんですね。その1枚を洗い場の中には持ち込見たくはないですね。
 本当に利用しようと考えれば,結局素肌を保護するボディタオルなりを持参するのがベターと言えそうですが.....本来自然の景観に囲まれているはずの休憩所は、窓もすべて刷りガラスに変えられていて(見えちゃ困るもんね。)無機質な四角い箱にしか見えません。
 ヴィズの利用者は時を過ごすならプールサイドの方を選ぶでしょうし、浴場のみの利用を目的としたゲストは....洗い場の中の閉ざされた空間で、裸のままのんびりしたい欲求を持つとは考えにくい。つまり、(サウナはともかく,休憩所は)意味があるスペースとは、わたしには思えません。どうして、ここに内湯を造らなかったのか、不思議です。いろんな面で、余裕がなかったのでしょうか?


 
  にしても、入場料もお安くなったヴィズの中に洗い場ができたという見方をすれば、カーテンで仕切られた(ヴィズのロッカールームの)シャワーブースで、立ったままで髪を洗うよりも楽になって良かったとも言えますが、木林の湯単体で考えた場合、内湯の無い有料の浴場(宿泊者の大浴場利用は、無料が原則ですよね。温泉旅館はいうまでもなく、近場で引用すれば、サホロもルスツも大浴場は無料です。)が、いつまでゲストの指示を得られるのかと、首をひねりたくなりました。
 例え有料であっても、チェックアウト後ににスキーやゴルフでひと遊びしして、出発前の見繕いに利用できるなら便利には違いありませんが、現状、ヴィズと同じ営業時間(15時よりオープン)では、心底必要と感じる時には使えない...。

 大浴場計画を聞いたとき、西エリアのヴィズに対してホテルエリアに造られた浴場が、ヴィズのクローズ時間に(も、といいたいところでしたが...)稼働してくれれば、最終日の過ごし方の幅が広がると期待しただけに、ヴィズの一部としての浴場は、どうにも中途半端で、残念です。なんだか、お手軽なところで、手を打たれちゃったという印象が否めません。
 左イメージは、アプローチから撮った、露天風呂。
 外気は流れて来ますが、屋根と壁のある部分から直接露天風呂へと足を入れられるので、そこそこの気合いで利用できます。(内湯が無いのですから、ここで温まらなくては....。)
 イメージ左手、壁側にベンチが設置、半身浴が可能です。実は、お一人いらしたので、このアングルでしか撮れませんでした。屋根は、半分くらいまで,湯船前方に出れば、降る雪を直接身体に受けることができそうです。
 先に利用された方からは、湯船からの景観を評価する書き込みもいくつかいただきました(最新情報2006参照)が、残念ながら、わたしが評価できたのは、座って入ることができる楽チンさ、だけでした。
 ロゴプールの記憶が仇となって、 雪の平地と林だけの景観への感動は、ありませんでした。
 あったものに心を残すよりも、あるものと折り合いをつけて少しでも楽しく遊ぶ...という基本姿勢にも、そろそろ例外が生じてくる予感を否定できません。木林の湯は,まぎれもなく、例外の産物のような気がします。


 

おことわり
 この先は、批判的な内容を多く含みます。私個人の見解で、他のご意見もあることを承知していますが、発言内容を変えるつもりはありません。
 木林の湯を楽しまれた方、満足された方にとっては、不要の見解ですので、ご覧にならない判断をお勧めします。


 去るものは日々に疎し...木林の湯と引き換えに失われたロゴプールの記憶を持つゲストが、この先増えることはありません。限られた記憶も、目の前の現実をかえる力はありませんね。

 水面に現れるハマナスの美しさを、過去のものとして忘れるか、 内に抱きながら折り合いをつけるか、 あるいは別の決断をするか...それは人それぞれだと思います。
  星野リゾートは,今後もトマムを『変える』方向で動いている様子で、いづれ新たな感動が生まれるのかもしれません。その可能性に期待して、供給されるものに素直に向かい合うために、過ぎたことにいつまでも執着するのはよしましょうねと、今までなら言うところです。本音と建前が半々....無いものねだりは自分もしんどいし、そうでなくても、採算データを持たないゲストの立場からの物言いは、一方的になりがちで、フェアではない部分も少なくないとわたしは思っているので、こういう場所で、どうしようもないことに言及するのは慎むべきという自覚もあります。

 でも、ロゴプールは、やはり例外です。(ちょっと、ついでに言えば,今後は例外が増えそう...。)
 木林の湯が是か否か....いい面もあれば、そうでない部分もありますが、それ自体は問題ではありません。ただ、この場所にあるべき施設ではないと、わたしは感じています。
 浴場と言う実用的な施設は、水の楽園の異名を持つヴィズとは反する性質のもの! 水繋がりの安易な改築で、失われたものの価値は,言葉を尽くしても語り尽くせないほどです。

 特筆すべき、ヴィズのすばらしさは、視界の広がりから来る解放感でした。70%ともいわれるガラスの多用、冬季、数10度の温度差にも曇らない工夫が施されたガラスの向こうに広がるのは、設計者が『一体感』にこだわったトマムの自然と、そしてエリアの中で最も美しい人工物、青色をバックに浮かんで見えるハマナスの花でした。
 ヴィズの中、外、どちらからでも視界が不自然に遮られることなく、目に映るのは、大自然をステージにしても遜色のない、コーディネイトされた施設の美しさでした。
 ハマナスを揺らす風、空気を幻想的にする湯気...例えその中に身をおかなくても、ガラス越しに、目は印象深い美を捉えることができました。在ることだけで充分な価値がある、ロゴプールはそういう位置づけで感じ取るべき施設だったと、わたしは信じています。

  その美しさに心を打たれることなく、惜しむ思いをも察知せず、実用施設を優先した結果、曇らないことが自慢だったヴィズのガラスの一部は刷りガラスに置き換えられ....スケールメリットを台無しにしてしまった現経営者に、これから、どれほどの期待が抱けるでしょう?(スタッフには頑張っていただきたいのですけどね。)
 過去の価値に、せめてわたしたちが執着しなければ、同じ間違いが繰り返されそうで怖いです。

 トマムとまだ縁を繋ぎ、今少し遊びたいオールドファンは、木林の湯を(利用はしても)認めてはいけないような気がします。

 ロゴプールの在るヴィズのイメージはこちらでも紹介しています。
 なお、当ページの3枚の素材は、the HOTEL(1992-3  株 オオタパブリケーションズ 発行)よりお借りしています。

                                          06/02/28